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2020年の日本車は素晴らしかった! 小川フミオが選ぶ印象的な5台とは

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2020年の日本車は素晴らしかった! 小川フミオが選ぶ印象的な5台とは

2020年に試乗したクルマのなかから印象的だった5台の日本車を小川フミオがセレクトした。

2020年は、たいへんな年だった。おおざっぱにいえば、新型コロナウィルスの感染拡大で、悪い年だった。でも、クルマに関していうと、いい年だった。なぜなら注目すべき新型車がたくさん登場したからだ。

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日本車はとくにがんばったと思う。高級車から軽自動車まで、また、BEV(バッテリー駆動EV)からスポーツモデルまで、幅ひろく、「これは!」と、感心させられるモデルが多数あった。

たとえば、トヨタ自動車。2020年のトヨタ車といえば、今なお供給が追いつかない「RAV4 PHV」のパワフルな操縦感覚が印象的だったし、「GRヤリス」のはじけっぷりは、ほかに類のないものだった。また、水素で走る「MIRAI」の新型(試乗の時点ではプロトタイプ)も走らせて楽しいクルマとしてよく出来ていた。

最善の1台を決めていくとなると、なかなかむずかしい作業だ。そこで、編集部の担当者と相談しながら、ベストというより、印象に残ったクルマを5台、選び出してみた。

(1)トヨタ「ハイランダー」

H.Mochizuki2020年のトヨタ自動車の新車攻勢は、数はさほど多くなかったものの、狙いすましたような、各マーケットのニーズにどんぴしゃの珠玉のラインナップだった。

そこから編集部とともに選びだしたハイランダーは、ややマニアックな選択。RAV4 PHVと基本プラットフォームを共用する3列シートのSUVとして、北米市場で大きな人気を博しているものの、日本では未発売である。にもかかわらず、ハイランダーを選んだのは、試乗する機会を得られたからだ。トヨタが公道を舞台にした試乗会で、左ハンドルの海外モデルを試乗させる機会などほぼないに等しかったから、貴重な機会だった。

H.Mochizuki全長4950mmのボディは、日本ではサイズを持て余すかもしれないが、米国では3列シートのSUVとしては、比較的コンパクトである。しかもエンジンは3.5リッターV型6気筒ガソリンを搭載するから、走りには余裕がある。

ハイランダーを試乗したときは、あくまで新型RAV4 PHVと新型ハリアーの試乗がメインだった。トヨタが参考までに、「世のなかにはもう1台、姉妹車がありますよ」と、ハイランダーに乗れる機会を作ってくれたのだった。

用意されたのは、最高出力295psを発揮する3.5リッターV型6気筒ガソリン・エンジン車。横浜周辺で試乗したところ、トルクたっぷりのエンジンフィールに加え、20インチタイヤを履いているとは思えないほどしなやかな足まわりの設定で、快適に走ることができたのが、たいへん印象的だった。

軽くアクセルペダルを踏むと、たっぷりしたエンジントルクが出る。操舵感覚も、けっしてダルでなく、軽めの設定のステアリングホイールを切り込んだとき、やや大きめのロールとともに車体がゆっくりと動く。ようするに、気持ちいいのだ。

トヨタのエンブレムをつけているのに左ハンドル、ということで街中でじろじろ見られたのも、白状すると、どことなく嬉しかった。フェラーリとかマクラーレンとはちがう種類の、特別感があった。

もし将来、日本で売る際には、そういうわけで左ハンドルの北米仕様であることを強調したら、マーケティング的におもしろいなぁと、思った。

とはいいつつ、トヨタが1996年から2000年にかけて、日米間の貿易不均衡解消に寄与すべく「キャバリエ」を販売した歴史を振り返る必要がある。そのとき右ハンドル仕様を導入した史実にかんがみると、ハイランダーが日本市場に正規導入される際は、いうまでもなく、右ハンドルになるだろう。

左ハンドル車が導入される可能性はかなり低そうだ。

(2)日産「ノート」

2020年11月にフルモデルチェンジされた日産自動車の新型「ノート」。モーターと、駆動用バッテリー充電のための1198ccのエンジンを搭載する、メーカー名づけるところの「e-POWER」システムをグレードアップしたのが特徴だ。

ひとことでこのクルマのよさをいうと、スムーズさだ。新開発のプラットフォームと、剛性を向上したボディ、そしてパワーをあげるいっぽうコンパクトで軽量化をはかった電動ユニットを搭載……と、いったところがあたらしい。

減速してすぐ加速したときの反応は速いし、カーブを曲がっていくときの車体の傾きは抑えられていて、意外なほどスポーティ。200万円そこそこのクルマでありながら、EVのよいところがしっかり活かされている。

全長は4045mmとどちらかというとコンパクト。でも、室内スペースは余裕があり、後席におとなふたりが座っても大丈夫。6月に登場したe-POWER搭載の「キックス」もワンペダル走行が出来るなど、あたらしい走りを体験させてくれるクルマだけれど、しっかりした走りのノートは、キックスより245mmもコンパクトで、かつ価格も70万円ほど低く抑えられていながら……つまり、いわばワンランク下のグレードでありながら、その上をいくような出来のよさなのだ。

最近では、後輪をもう1基のモーターで駆動する4WDもラインナップにくわわった。日産の開発陣は、こちらもぜひ試してもらいたいという。走りの点でも自信作なのだそうだ。

内装の質感は、あいにく値段なり。そこが画竜点睛を欠く、ともいえる。シートの出来を含めて、ここの質感が少なくともフォルクスワーゲンとかルノーなみに上がれば、いろいろなクルマを経験してきたおとなが乗っても、不満は出ないだろう。今後の改良に期待したい。

(3)マツダ「MX-30」

Hiromitsu Yasui日本車のなかでも、ドイツ車なみのクオリティ感で抜きんでているのがマツダだ。2020年10月に登場したクロスオーバーの「MX-30」は、くわえて独自のメカニズムによって、唯一無二の存在感で光っている。

全長4395mmのボディに、1997cc直列4気筒ガソリンエンジンと、小型電気モーターを搭載。モーターは発進時、シフトアップ時、それに停止に向けての減速時などでのみ働く。

Hiromitsu YasuiHiromitsu Yasuiこのクルマの基本プラットフォームは、「マツダ3」や「CX-30」と共通。どちらも走りがいいし、かつスタイリングに個性がある。キャビンを小ぶりにして2プラス2のイメージをもたせた。個性を追求したデザインは、往々にして破綻を生じるものの、MX-30はきれいにまとまっている。

小さなグリルと薄いヘッドランプなど、あたらしいテーマでまとめられたフロントマスクとともに、凝縮感のあるスタイリングが、なかなかおとなっぽい。そして、走りが力強い。プラットフォームを共用する3モデルのなかで、もっともパワー感がある。

Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasui低い速度域で力強さを感じるのは、さきに触れたとおりモーターの恩恵だ。ぐんぐんと加速していく気持よさがあるし、ドライバビリティも高く、比較的コンパクトなくせに、上のクラスのクルマのような操縦安定性がある。お勧めは、後輪が力強くプッシュしてくれる4WDシステム搭載モデルである。

(4)ダイハツ「タフト」

小さいけれど、質感が高い。軽自動車ゆえの街中での使いやすさと、かつ、加速性のよさと、すばらしい乗り心地という特長をそなえているのが、おおいなる魅力だ。燃費は最良でリッターあたり25.7kmと、こちらも良好。

自然吸気型エンジンとターボエンジンと2つのパワープラントが用意されている。試乗したときは、市街地でなら自然吸気型でじゅうぶんなパワーがあると感じた。ターボは高速を使う機会が多いひとに。中間加速のパンチ力がある。

開発者が、サスペンションアームをシャシーに取り付けているゴムのブッシュの硬さと、ダンパーのセッティングに心をくだいた、と、言うとおり、足まわりのしなやかも特筆ものだった。

騒音もよく抑えられている。全体として高いクオリティを感じさせ、乗っているときの印象は、かなりよい。最良の軽自動車の1台、というか、最良のコンパクトカーの1台だと感じた。

内外装も、タフトのもうひとつの魅力である。おそらく競合と目しているスズキの「ハスラー」のいいとこを足したようなスタイル。ダッシュボードには一部に外装色を使うなど、ちょっとシャレっ気も。

標準装備の「スカイフィールトップ」というはめこみ型グラスルーフも、前席中心に設けられているのがよい。通常グラスルーフはドライバ-の頭上あたりからなので、前席乗員はあまり恩恵にあずかれない。タフトでは前席からちょっと視線を上に上げればガラスごしの空。オープン感覚がある。

スマートフォン連動で目的地設定が出来るナビゲーションシステムをはじめ、コネクティビティも充実している。全長は3395mmと、どんなところでも扱いやすい。都市生活者のために作られたクルマとして評価していいと思う。

(5)スバル「WRX EJ20 ファイナルエディション」

死んだ子の歳を数える。すぎたことをあれこれ悔やんでもしようがない、という意味のことわざがピッタリくるなあと思うのが、スバル「WRX STI」の生産中止。3月に乗った「EJ20ファイナルエディション」、印象ぶかいクルマだった。

2014年に登場して、2020年まで販売されてきたWRX STI。スポーティセダンというより、スポーツセダン。4ドアセダンのかたちをしたスポーツカーである。

最後に乗ったファイナルエディションは、「WRX STIタイプS」をベースに、エンジンのバランスどり(よりスムーズに高効率にまわるようにとファインチューニング)をほどこした超マニアックな特徴を持つ。こういうところが、ホント、いいのだ。

足まわりも、19インチのBBS鍛造軽合金ホイールに、18インチのブレンボ製ドリルドローターと対向6ポッドのキャリパーをそなえたブレーキをおさめ、速いと同時に、強力で正確なストッピングパワーを発揮。スペックを並べているだけでご飯三杯、というやつである。

かちっとした手応えのシフトレバーを握り、上のほうでつながるクラッチペダルを操作(私の場合、左の膝がステアリングホイールに触れたところがクラッチのミートポイント、と、わかりやすかった)。軽いフライホイールのおかげで、クラッチのミートともにアクセルペダルを踏み込むと、はじけたように飛び出していくクルマだった。

227kW(308ps)の最高出力は6400rpmで、と、設定もスポーティで、水平対向エンジンの持ち味をとことん、しゃぶりつくせた。3000rpm以下ではトルクが薄く感じるのも、スポーツセダンという、このクルマのキャラクターを明確にする。

WRX STIをカタログから落とした背景には、各国で強まる燃費規制への対応がある。高性能ガソリンエンジン車は、”罰金”を払うことを考えると、よほど高価格でないと割に合わなくなってきているのだ。ただしスバルでは、電動化されてもスポーティなクルマは作ることができる、と豪語している。それを楽しみにしよう。

文・小川フミオ 写真・安井宏充(MX-30、タフト、WRX)、エリック・ミコット(ノート)、望月浩彦(ハイランダー)

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