根拠はないけど自信をもつ─奥平大兼の気概

『か「」く「」し「」ご「」と「』で主演を務め、ドラマや映画で存在感を増している俳優・奥平大兼。21歳の若き才能は、同世代からの刺激をふんだんに受け、進化し続けていた。

芝居が分からなくなった時期を経て

毒親に振り回される息子役で鮮烈なデビューを飾った『MOTHER マザー』から5年。話題を集めた松坂桃李主演の日曜劇場『御上先生』ではキーマンを託され、最新作となる映画『か「」く「」し「」ご「」と「』では出口夏希とW主演を務めるなど、奥平大兼は作品を重ねるごとに確かな成長を続けている。同作では重要なシーンのセリフをあえて空白にし、俳優の感性に委ねる中川駿監督のスタイルに適応。本人も「素が出ている」という等身大で繊細な演技を披露し、甘酸っぱくもリアルな心情を宿した青春恋愛劇に貢献した。

だが過去には「同世代の才能豊かな俳優との共演が続き、自分の芝居とは何かがわからなくなった」という苦悩の時期も経験。しかし、それで潰れる彼ではない。「根本的に今も自信はありません。でも、根拠はなくとも堂々としようと思えるようになりました」と率直に明かす姿は、実に柔和で頼もしい。

酸いも甘いもかみ分け「この仕事を通した出会いが自分を作ってくれた」と語る奥平が指針にしているのは『最高の教師  1年後、私は生徒に■された』のプロデューサー福井雄太の言葉。

「福井さんは“1人でも本気で心が動いてくれたら、自分たちの勝ち”と仰っていました。『御上先生』も熱量の高い現場でした。これからも本気でいいものを作って届けようとする人たちと関わり続けたいですし、自分からもそんな空間を作っていけるようになりたいです」

菅田将暉が一目置くほどのファッショニスタでもある奥平。昨年は「柄も独特で、着心地が面白い」と水着を日常使いしていたそう。既成概念にとらわれない大器は、この先も熱を求めて歩み続ける。

『か「」く「」し「」ご「」と「』『君の膵臓をたべたい』の住野よるの小説を『少女は卒業しない』の中川駿監督が映画化。意中の人気者・三木（出口夏希）を遠くから見つめるだけの日々を過ごす内気な高校生・京（奥平大兼）。卒業まで“友達の友達”として過ごすはずだったが─。共演に佐野晶哉（Aぇ! group）、菊池日菜子、早瀬憩ほか。
5月30日（金）全国公開

奥平大兼／DAIKEN OKUDAIRA2003年生まれ、東京都出身。2020年公開の映画『MOTHER マザー』で日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞。近作は、映画『Cloud クラウド』、TBS日曜劇場『御上先生』ほか。映画『雪風 YUKIKAZE』が8月15日公開予定。

写真・横山創大
スタイリング・伊藤省吾（sitor）
ヘアメイク・速水昭仁
文・SYO
編集・遠藤加奈（GQ）