いまや高級ミニバンは、高級セダンに代わるショーファードリブンカーとして確固たる地位を築きました。その中心にいるのがトヨタ「アルファード」そしてレクサス「LM」ですが、実はこうした価値をいち早く提案していたのは日産。1998年に登場した初代エルグランド「ロイヤルライン」は、定員わずか4名という大胆なレイアウトを採用し、後席の快適性を極限まで追求した特別な一台でした。
いま振り返っても規格外だったロイヤルラインの魅力と、新型エルグランドVIPへと受け継がれる可能性について考えてみます。
【画像ギャラリー】いま見ても規格外!! 高級ミニバンの先駆け「ロイヤルライン」が設定されていた 日産初代「エルグランド」(15枚)
文:立花義人、エムスリープロダクション/写真:NISSAN、AUTECH
ミニバン概念を超えた「4人乗り」の衝撃
1997年に登場した初代エルグランド(E50)は、それまでキャラバンやハイエースといった商用車ベースのワゴンが中心だった多人数乗車市場に、乗用車感覚の走りと高級感を持ち込んだ先駆的な存在でした。
その翌年の1998年、日産とオーテックジャパンが共同で送り出したのがエルグランド「ロイヤルライン」です。
当時のカタログには、「普通のVIP車の後席では決して満足できない、トップエグゼクティブの方に、ぜひともお乗りいただきたい」と記されており、ロイヤルラインが意識していた相手は、当時のミニバンではなく、クラウンやシーマ、セルシオといったショーファードリブンの高級セダン(お抱え運転手付きのセダン)。ワンボックスならではの広大な室内空間を活かし、セダンでは実現が難しいレベルの足元スペースと頭上空間を確保。後席の快適性を極限まで高めることを目指しました。
この大胆な発想から生まれた定員わずか「4名」の空間は、当時の自動車界において、文字通り「規格外」の衝撃でした。
左右で役割が違う後席シートは、陸上の「ファーストクラス」
ロイヤルライン最大の特徴は、専用設計の後席VIPシートです。当時のカタログでは「まさに航空機のファーストクラスシート」と紹介されていましたが、その内容を見れば決して大げさな表現ではなかったことが分かります。
重厚な左右独立バケットシートには電動スライド機構とリクライニング機構を装備。最大220mmのスライド量を確保し、足を伸ばしても前席に届かないほどの広さを実現していました。
さらに特徴的なのが、左右で異なる役割が与えられていたことです。運転席後方の右席は、移動中も仕事を行うVIPのための「執務席」として設計され、細かな姿勢調整が可能な電動シートリフターを装備。
一方、助手席後方の左席は、移動中にくつろぐための「リラクゼーションシート」として設計されていました。新型エルグランドにも受け継がれている背もたれ上部だけを独立して調整できる電動シートバック中折れ機構を採用し、オプションでオットマンも設定されていました。1998年の時点で、ここまで後席乗員を中心に考えた設計をミニバンに取り入れていたとは驚きです。
シート表皮はダブルラッセルを標準設定しながら、本革と高級人工皮革「サプラーレ」を組み合わせた仕様も選択可能。まさに「走るファーストクラス」と呼びたくなる仕立てだったのです。
スマホもない時代に「移動しながら仕事をする」を目指した
ロイヤルラインが時代を先取りしていた理由は、後席の快適性だけではありません。いまでは当たり前になった「移動中の仕事」という概念を、約30年前に形にしていた点も特筆すべきポイントです。
後席中央には美しい木目調キャビネットを配置。その内部には100V電源付きのパソコン収納スペースやスライド式テーブルが組み込まれ、A4サイズの書類を収納できるスペースも用意されていました。「移動しながら情報を収集し、発信する執務室」というコンセプトを、まだインターネットが普及し始めたばかりの1998年当時に具現化していたのです。
さらに後席専用の7インチワイドTFT液晶モニターを装備。当時としては先進的なCDデッキやスペクトラムアナライザーに加え、再生専用VHSビデオデッキまで標準装備。間接照明やダウンライト、スポットライトなどを組み合わせたトータルコーディネート照明も採用し、用途や気分に応じて車内の雰囲気を変えることもできたほか、専用チューニングのサスペンションや追加された遮音材によって、静粛性と乗り心地も徹底的に追求。移動中にノートパソコンを使うことまで想定した快適性は、現在の高級ミニバンにも通じる考え方だったといえるでしょう。
新型エルグランドVIPにも受け継がれるのか!??
スマートフォンもなく、車内で仕事をするという発想すら一般的ではなかった1998年に、「走るファーストクラス」を目指したロイヤルライン。
その内容をあらためて振り返ると、現在のレクサスLMやアルファードのエグゼクティブ仕様にも通じる発想が数多く盛り込まれていたことに気づかされます。
まもなく登場する新型エルグランドにもVIPグレードの設定が予定されていますが、かつてロイヤルラインが示した「最高峰の移動空間」という思想がどのような形で受け継がれているのか、注目したいと思います。
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みんなのコメント
トヨタにはグランビアがあったけど、まるで歯が立たず、エルグランドの一人相撲状態でした。
新型がやっと出ましたが、初代程のインパクトも無く、価格的にも安いとは言えない設定ですね。
あくまでも個人的な意見になりますが、今E52前期に乗っています。特に不満も無く21万キロ越えました。背丈も低めですが走りにも居住性にも不満はありません。顔つきも気に入っているので、まだまだ買い換えるつもりもありません。周りはアルベルばかりなので、駐車場でも逆に探しやすいです。
日産復活してほしい。