この記事をまとめると
■海外ではライドシェアが移動インフラとして定着している
「闇ライドシェアアプリ」まである始末! 東京都心の駅前で堂々と客を乗せるインバウンド向けの違法白バス
■利便性の裏には安全性や補償面の自己責任も存在する
■日本では制度より利用者意識の違いが壁になっている
海外ではすぐ来て便利なライドシェア
海外出張すると、出張先の移動で便利に使えるのがライドシェアだ。スタートアップ企業が自社アプリ上で、自家用車で移動したい人を乗せて稼ぎたいという人と、そのような自家用車で移動したいという人をマッチングさせるサービスである。
インドネシアでは、最大手タクシー事業者のスマホ配車サービスが充実しているので、おもな移動はタクシーにしているが、そのほかの地域ではライドシェアを使って移動している。タイやマレーシアなどでは“Grab(グラブ)”、インドやアメリカでは“Uber(ウーバー)”といったサービスを過去では利用した経験がある。
頻繁に訪れる台湾最大の都市、台北では、いままでは路線バスや地下鉄にて移動していたのだが、先日訪れた際にライドシェアを利用して移動することとなった。「台湾はどこがサービス展開しているのかなぁ」と調べると、筆者が過去利用したなかではUberがあった。ほかには日本でもお馴染みのLINEが“LINE GO”というサービスを展開していた。台北中心部でマッチングを試みると、2分以内にマッチングし車両が乗車地に迎えにきてくれた(台北市内では2分ほどでマッチングする)。
台北から70kmほど離れた山間部で人里晴れた場所でもマッチングを試みると、地元のタクシーがマッチングし6分以内に迎えにきてくれた。今回の台湾での使い勝手のよさはインドの首都デリー並みであった(料金ではデリーが圧倒的に安いが)。
アメリカのホテルでタクシーを呼んでほしいと頼んだことが過去数回あったのだが、「自分でライドシェア使って呼べ」といわれたり、タクシーを呼んでもらったはいいが、フロントスタッフが絡んでいたのか、やってきたタクシーに乗ったら法外な料金を請求されたりしたので、以後は自分でライドシェアサービスを利用するようにしている。そのアメリカでもたいてい2分以内でマッチングして迎えにきてくれた(料金は日本並みの高さなので驚いた)。
市街地ですぐ来るという利便性だけではなく、「ここじゃ無理だろう」といった郊外の寂しい場所であっても、多少時間がかかってもしっかりマッチングして迎えにきてもらえるという利便性の高さには、いつも感謝している。東南アジアでひどい暑い時期ではそのようなニーズが多いこともあるのか、暑いなか歩きたくないからと短距離移動で利用しても、「日本のタクシーあるある」ともいえる、ドライバーに舌打ちされるようなことも経験したことがない。
もともと女性ドライバー車両という選択肢もあったのだが、タイではそんな特別な指定をしなくても女性ドライバーの車両が迎えにくるケースも多くなったので、直接の金銭のやり取りが介在しないこともあって確実にタクシーよりは安全な移動手段となっているようである。
海外でこのような経験をすると、「なぜ日本にはないのだろう」と考えてしまうが、制度として日本に導入する困難もさることながら、利用者側にも日本ではなかなか制度に馴染まないのではないかと筆者は考えている。
便利さの裏にある責任とリスク
インドネシアでライドシェアを利用すると、シートベルト(後席)の装着が困難な車両が多い印象を受ける。バックル(差し込み口)がシートの奥に潜っていたり、バックル自体が壊れていて装着できないのである。最大手のタクシー会社では、年季の入った車両でもまずそのようなことはない。そのあたりも飲み込んで利用する。つまり、何があってもある程度自己責任というものが問われてくるのはサービスの制度上仕方のないことなのだが、日本ではいったん何かが起これば「犯人捜し」、つまり誰(どこ)に責任があるのかが大きく問われることとなる。
何ごとにも監督官庁が強い権限をもつのが日本、当然責任の矛先は当事者以外に監督官庁に向けられることも目立つ。このような利用者側の事情をみると、海外のライドシェアをそのまま採り入れるのはなかなか難しいし、監督官庁がそれを許さないのがいまの日本だと筆者は見ている。
ちなみに調べてみると、タイでは対人賠償の上限補償額は200万円ほど、死亡時でも300万円強しか支払われないとのこと。タイに限らず新興国での保険の相場はだいたいこの程度だと聞いている。この状況を「死に損」と表現した人もいる。こんな状況でもあるから、現地日本人駐在員の多くは、専用運転手を備え保険などもしっかりした社用車で移動している。
筆者も「何かあったら……」と考えながら常に利用している。過去にはタクシーに乗っていたら後続車から追突、高速道路上で車両故障で長時間立ち往生など、さまざまなシチュエーションに遭遇したことはあるが、追突されたときはドライバーに「ここから歩いて帰れ」といわれただけだし、立ち往生のときは故障車両の修理手配が優先され何時間も付き合わされることとなった。日本ではさすがにここまで乗客が放置されることはないし、もし筆者のような体験を乗客がしたら重大事案発生となってしまうだろう。
海外の制度をそのまま導入すれば、プラットフォーマーはマッチングサービスを行っているだけなので、事故などが発生すればその解決が面倒となるのは自ずと見えてくる話。日本型ライドシェアは、この面倒を回避するために、タクシー事業者の管理下におき、ドライバーはタクシー事業者が雇用することとなっている。
すでにアメリカあたりではライドシェアが安い移動手段ではなくなっているが、新興国でタクシーサービスが機能している国ではまだライドシェアのほうが安い移動手段となっている(繁忙時間帯はダイナミックプライシング採用により微妙)。同じような移動手段で料金に差がつくということは、どこかのリスクが増していると考えるのが自然の流れといえるだろう。
日本で海外のようなライドシェアサービス導入には法改正や規制緩和など、かなりの荒技を駆使する必要があるので、「天の声(政治介入)」でもない限りは、まず海外のライドシェアサービスがそのまま導入されることは夢物語である。
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みんなのコメント
ライドシェアを導入するなら既存の業者に対して各種の条件を緩和するか参入してきたライドシェア側にも一定の条件を飲ませるかしないとダメだと思う。あとライドシェアは事業用の自賠責保険ではなく一般の自賠責保険を使って仕事しています。この点はライドシェアをしていない一般のドライバーにとっても問題ある事なのでもっとたくさんの人が知っておくべき事実ですね。