基本骨格として現行モデルと同様のMQB(横置きモジュラープラットフオーム)を使い、サイズも全長が26mm伸びて全高が36mm低くなり全幅が1mm狭められただけで、ほぼキープされた新型ゴルフ。そのハンドルを握り、進化具合を実感した。(Motor Magazine 2020年2月号より)
先進のコネクティッド機能を搭載
低いノーズとちょっとワルそうな目つき、全高の低いフォルムなどが相まって、新型ゴルフの第一印象は正直、「らしさ」がスポイルされているように思えた。しかし実車を目の前にすれば、やはりそれは紛うかたなきゴルフ。太いCピラーなど伝統のディテールが今も大きな効果を発揮している。
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むしろ、激変ぶりにしばし言葉を失うのは、大胆にデジタル化が推し進められたインテリアだ。ドライバー正面には10インチサイズのディスプレイを用いたデジタルコクピット。オプションによりヘッドアップディスプレイも選択可能だ。その脇にあるライトや前後窓デフロスターの操作を行うデジタルパネルは、手を近づけると明るく光る凝った作りだ。
ダッシュボード中央の8.25インチサイズのタッチスクリーンでは、オーディオやナビゲーション、様々なアプリケーションなどを使用できる。eSIMも搭載されて、コネクティッドカーとして常時通信が可能となっている。
そのすぐ下には、指先でサッと撫でることで温度設定や音量調整が行えるスライダーが置かれ、さらにその下には、ADAS(先進運転支援システム)、空調、パーキングサポート、ドライブモードセレクトの各機能へのジャンプボタンが並ぶ。
デジタルネイティブ世代には簡単かもしれないが、誰もがすぐさま使いこなせるかと言えば、正直疑問の急激なデジタル化である。そのため「ハロー、フォルクスワーゲン」と呼びかけると起動するAI音声入力機能も備えている。
マイルドハイブリッドも用意。ADASの進化ぶりに感心
MQBの進化版ということで、フットワークはさらに熟成されていた。新設計のサブフレームを採用したシャシはブッシュ類、ジオメトリーやステアリング系などに手が入れられた。狙いはリアの安定感を引き上げながら操舵応答性を高めること。試乗車はオプションのDCC(ダイナミック シャシー コントロール)、バリアブルレシオのステアリング装備も相まって従来以上に安心して楽しめるフットワークに進化していた。
気になったのは、やや硬めの乗り心地である。サスペンションはよく動いているのだが、鋭い入力に対してはゴツゴツとした感触が返ってくる。転がり抵抗を低減させたタイヤのせいなのか、気になるところではあった。
エンジンは2種類を試した。1.5e TSIは、電気モーター内蔵の7速DCTを組み合わせた48V電装系を用いるマイルドハイブリッド。減速エネルギーを回生し、800~1500rpmの回転域で最長10秒間、最大50Nmの加速アシストを行なう。
その効果はドライバビリティの面では絶大というほどではないが、燃費が向上しているなら、まあ、アリだろうか。絶対的な動力性能は十分なレベルにあり、空力の良さもあってか高速域での速度の伸びの良さは印象的だった。
もう1台は2.0 TDI。中身はほぼ新開発というディーゼルエンジンは、デュアルアドブルー噴射によりNOx排出量を80%低減したとされる。豊かなトルク、心地良いパワーの伸びで、走りの満足感も非常に高かった。
走りの面ではADASの進化にも触れておきたい。ACC、LKSともに精度が格段に高まっており、さらにそれを連携させて210km/hまでハンドルに手を触れているだけでスムーズな巡航を可能にするトラベルアシストのギクシャク感皆無の制御には、大いに感心させられた。
幅広いユーザー層を誇るゴルフだけに、大胆なデジタル化がどのように受け止められるかは興味深いが、それも含めて実用車のベンチマークを打ち立てるという矜持は不変と感じさせた新型ゴルフ。日本導入は、2020年末を目指しているということである。(文:島下泰久)
■フォルクスワーゲン ゴルフ1.5e TSIボ主要諸元
●全長×全幅×全高=4284×1789×1456mm
●ホイールベース=2636mm
●エンジン= 直4DOHCターボ
●排気量=1498cc
●最高出力=150ps/5000-6000rpm
●最大トルク=250Nm/1500-3500rpm
●駆動方式=FF
●トランスミッション=7速DCT
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