フルモデルチェンジした新型ホンダ「N-BOX」に今尾直樹が試乗した。軽自動車とは思えぬ驚きのクオリティに迫る!
全体に先代よりもスッキリした印象
実用的なスーパースポーツ──新型メルセデスAMG GT試乗記
いま、ニッポンでいちばん売れている自動車、それがホンダN-BOXである。軽自動車と軽くみてはいけない。ホンダによると、ここ数年、日本の自動車マーケットのおよそ4割が軽自動車だから、いまどき軽を鼻で笑う御仁もいらっしゃらないとは思うけれど、その軽市場拡大の立役者の1台がN-BOXだともいえる。ホンダはこれ1台、ファーストカーとして使える小型ミニバンをつくろうとしているのだ。その本気がマックスになったのが第3世代である。
好天に恵まれた10月下旬の某日、そのN-BOXの新型の試乗会が横浜みなとみらい地区で開かれた。参加して、代表的な2モデルに試乗し、その完成度の高さに感服した。もはや現行の軽自動車枠でやれることはやり尽くしているのではないか、とさえ思った。これほど利便性が高くて、経済的な超小型車を国内市場にとどめておくのはモッタイナイ。国際的に通用する新しい軽規格を検討すべきではないか。とすら筆者は思った。
まずもって新型N-BOXについておさらいしておこう。軽スーパーハイトワゴンとして2011年に発売された初代N-BOXは、ご存じのようにたちまち大ヒット作となった。ホンダはさらに、2017年の2代目でエンジンとプラットフォームを一新し、ファーストカーとして使えるほどの質感を実現する。今回の3代目は基本的に完成度の高い2代目のさらなる改良洗練版である。ライバルに選考されていた運転支援システムの充実を図ってもいる。
ラインアップはこれまで通り、単にN-BOXと呼ばれる標準型とN-BOX CUSTOM(カスタム)なる日本独自の高級仕様のふたつがある。高性能版のターボはカスタムのみの設定で、試乗したのはN-BOXファッションスタイルという標準型のオシャレな仕様と、カスタムターボの2台だ。駆動方式はFWDと、いわゆる生活4駆の4WDもあるけれど、今回の試乗会はFWDのみだった。
ファッションスタイルにはシックなボディ色が3色あって、どの色であってもドアミラーとドアハンドル、ホイールキャップの一部がオフホワイトに塗られている。われわれの試乗車は「フィヨルドミスト・パール」という北欧っぽい名称の、涼しげな薄いブルーのメタリック。
内装はフツウのN-BOXとおなじで、住宅のモデルルームのような雰囲気でまとめられている。明るいグレー基調のファブリックのシート生地とウッド調のトレーの組み合わせは、上品で質感も高い。
軽スーパーハイトワゴンゆえ、後席も含めて、室内はメチャクチャ広い。全長は3395mm、全幅は1475mmと、全長3.4m以下×全幅1.48m以下という軽自動車の規格ギリギリだけれど、全高は1790mmもある。軽規格の全高は2.0m以下だから、少々余裕があるものの、日本人の17歳男性の平均身長より8cm以上も高い。それゆえ、どの席に着座しても、天井ははるか遠くにある。ホイールベースは2520mmと、全長4.0mほどのホンダ「フィット」の2530mmに迫る。後席の広さときたら、小型車のミニバンと較べても見劣りしない。ホンダお得意のセンタータンク方式を採用するから荷室は後席の背もたれを倒すだけでフルフラットになり、自転車を余裕で積むことができる。
Aピラーの運転席側の骨格は先代N-BOXの流用で、キャビンの造形はほぼ変わっていない。変わったのは「ステップワゴン」同様、水平基調に改められたダッシュボード周辺のデザインで、これは小柄な女性ドライバーにもスッキリした視界を提供するためだとされる。もちろん、このようなメーカーの姿勢はすばらしいです。7インチの液晶スクリーンは、シビックやステップワゴン等と共通のパーツで、液晶ゆえタコメーターを出すこともできる。
パワー・ユニットは先代譲りのS07B型658cc3気筒DOHCは最高出力58ps/7300rpmと最大トルク65Nm /4800rpmを発揮する。ライバルのダイハツ「タント」とスズキ「スペーシア」はどちらも52psと60Nmで、スペーシアの場合はこれに3.1psと50Nmのモーターが助太刀するMHEV(マイルドハイブリッド)ゆえ直接の比較はできない。とはいえ、話を内燃機関に絞ると、S07B型がパワフルであることは間違いない。超ロングストロークで、VTEC(可変バルブ・タイミング&リフト機構)を備えており、感覚的にも低速から十分なトルクを発揮する。
CVTもドライバーのフィーリングとズレが生じないような制御に改良されている。具体的には、アクセルペダルをガバチョと踏み込んだときでも、エンジン回転を抑えめにして、回転の上昇とともに加速するセッティングにしている。だから、とてもナチュラルなフィーリングが得られる。乗り心地と静粛性、それにステアリングフィールにも改良がくわえられており、全体に先代よりもスッキリした印象が得られる。あえて申し上げておくと、先代の2代目だって、傑出した軽自動車だと私は評価しております。
なにが正解なのかわからないN-BOXカスタム・ターボはさらに洗練度は上がっている。他社のカスタムよりグリルが控えめで、フロントの車幅いっぱいにLEDのDRL(デイタイム・ラニング・ライト)が設けられているところが新しい。内装はブラック基調にクロームが光る。シート表皮は合皮で、ダークヒーローっぽい、ロールス・ロイスのブラックバッジ等と同種のムードを醸し出している。
カスタムの自然吸気モデルには試乗していないけれど、お値段が少々はる高級仕様、ということでカスタムにのみ、ルーフの内側にも防音材が使われている。標準型より静粛性が向上して差別化を図っているのだ。
ターボのエンジンはしかも過給機を装着することで、最高出力64ps/6000rpm、最大トルク106Nm/2600rpmを発揮する。つまり、リッターカー並みのトルクがある。車重は940kgと標準型と30kgしか違わない。他社に先駆けて、電動ウェイストゲートを採用してもいて、きめ細かい制御をおこなっており、VTECとあいまって、ほとんどターボエンジンであることを意識させない。CVTにはパドルシフトがついているけれど、市街地での試乗ゆえ使わなかった。というのが正直なところです。
ターボはタイヤが155/65R14から165/55R15に1インチ大きくなり、前後ダンパーの減衰力のみ変更されている。なので、走り出した途端、標準型より若干ファームに感じる。トルクがあるので、エンジンをまわす必要がない。自然吸気ユニットだと高速での加速で、ちょっとモタつくというか、ガマンを強いられることもあるけれど、カスタムターボだったらガマンいらずで、静かでもある。
私的には標準型の丸型LEDヘッドライトの顔のほうが好きだけれど、動力性能にはターボのほうが圧倒的に優れている。ここは悩みどころだ。価格は、標準型だったら170万円ほど。カスタムターボだと200万円を若干超える。その差、およそ30万円。一般道中心の仕様だったら、標準型でよい。というのが筆者の個人的見解だけれど、発売直後の現状の割合は、カスタムが7割で標準型が3割だそうだ。カスタムのなかではターボのほうが人気がある。受注は2万7000台と好調だという。
以下は個人の感想です。気になったのは冒頭に記したように軽自動車規格ゆえの限界で、それは横風に弱そうなことである。全高は1.8m近くもある。なのに全幅が1.48m以下に制限されている。トレッドは標準型で前後1305mmしかない。たとえば、フィアット「パンダ」は3サイズが3685×1670×1550mm、ホイールベース2300mmで、トレッドは前1410/後1405mm。全高1780mmもある軽スーパーハイトワゴンのトレッドが、200mm以上も低いパンダよりも100mmも狭いのである。
N-BOXは2代目でもオーナーの40%がファーストカーとして使用しているという。高速道路はいまや120km/h時代を迎えてもいる。N-BOXカスタムターボだったら、余裕で巡航できる。とはいえ、めいっぱいガンガン走るには、トレッドは広いほうがよい。う~む。むずかしい。
つまるところ、なにが正解なのか筆者にもわからない。だからこそ、識者に話し合ってほしい。軽自動車の比率はおそらくもっと増えるだろうからだ。だって、N-BOXみたいなのが出ているのだから……。
文・今尾直樹 写真・小塚大樹 編集・稲垣邦康(GQ)
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