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会心のレースで選手権6位に復帰。ニューヨークでの映画『F1』PRの驚きと角田との撮影【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第7回】

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会心のレースで選手権6位に復帰。ニューヨークでの映画『F1』PRの驚きと角田との撮影【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第7回】

 2025年シーズンで10年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄代表。第10戦カナダGPで節目となる200戦目のグランプリを迎えたハースは、エステバン・オコンが1ストップ戦略を完遂して入賞を果たし、再びコンストラクターズ選手権で6位に上がった。グランプリ後にはニューヨークのタイムズ・スクエアで映画『F1/エフワン』のワールドプレミアが行われ、非常に大きな規模のイベントに小松代表も驚いたという。カナダGPとイベントの模様を小松代表が振り返ります。

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オコン、戦略でリスクを取り9位入賞「ハース200戦目の記念すべきレースで結果を出すことができてうれしい」

■2025年F1第10戦カナダGPNo.31 エステバン・オコン 予選15番手/決勝9位No.87 オリバー・ベアマン 予選14番手/決勝11位

 カナダGPはハースF1チームの200戦目のレースになりました。今年はチーム創設10年の節目でもあるので、1年目の2016年に関連する特別なカラーリングを用意しようと思い、2016年の『VF-16』のグレーを採用しました。

 正直な話をすると、グレーはあまりインパクトのある色ではないと思っていたのですが、ハースのクリエイティブディレクターの人がうまく取り入れてかっこいいデザインにしてくれました! 彼は日本GPの時に桜を取り入れた特別カラーリングもデザインしてくれた人なのですが、今回はほとんど注文をつけずにすみました。僕が思った以上にチーム内外で評判がよくて、うちのメカニックのなかには、残りのレースも全部このカラーリングで戦いたいと言う人もいたくらいです。

 さてカナダGPでは、ソフトタイヤとしてC6タイヤが投入されました。C6の使用は今季3回目ですが、エミリア・ロマーニャ、モナコ、そしてこのカナダという3回のグランプリの予選において、C6よりC5(ミディアムタイヤ)の方が速いという場面がありました。この理由については、各チームのクルマの特性やコースのコンディションなどのちょっとした違いによって、C6とC5のパフォーマンスが逆転するからだと考えています。カナダGPではC6とC5の差がコンマ1秒ほどしかなかったのですが(通常はソフトとミディアムの間で少なくともコンマ2~3秒ほどの差があります)、ハースの場合は新品タイヤなら間違いなくソフトのほうが速かったです。もちろんコースのレイアウト、路面の荒さなどに影響されることもあるので、今後僕たちのC6とC5のパフォーマンスが逆転する可能性はあると思います。

 だからこそQ1ではソフトタイヤを2セット使う予定だったのですが、僕たちにとってはとても悪いタイミングで赤旗が出てしまい、この段階でQ1を通過できるラップタイムを出せていなかったので、もう1セット投入せざるを得ませんでした。結果、無事にQ1を突破することはできたものの、Q2では新品のソフトタイヤが残っていませんでした。

 Q2では1回目のランをユーズドのソフトで走り、2回目のランをユーズドのソフトか新品のミディアムのどちらで走るか悩み、この時点では決勝レースが2ストップか1ストップの狭間であること、そしてふたつのコンパウンドのタイム差を考慮して、新品のミディアムをレースに温存することにしました。

 結果としてオリー(編注:オリバー・ベアマン)は14番手に終わりましたけど、シケインでの大きなミスがあったので、もしそれがなかったら10、11番手あたりのけっこういいタイムを出せていたと思います。反対に、新品のミディアムに履き替えていたらどこまでいけたのかは未知数です。


■どんな展開でもポイントを獲れるような想定を

 先に書いた通り、予選の時点で決勝は1ストップレースがギリギリできるかできないかの狭間と考えていたので、唯一の新品のミディアムタイヤを予選で使用せず、決勝に残しました。重要だったのはミディアムがどれくらいグレイニング(編注:コーナーなどでタイヤが滑ることで表面がささくれ状態になる現象)するのかいまいち確信を持てなかったので、様々な状況を想定し、レース展開をシミュレーションすることです。

 その結果、リスクを分散するために2台のスタートタイヤを分けることにしました。これにはチーム内で反対の声もありましたし、なんといってもエステバンが一番反対しました。しかし、もし正攻法のミディアムスタートで戦えば、オリーはうまくいけば入賞できるかもしれませんが、後ろのエステバンは入賞には届かないでしょう。仮に想定と違う状況になった場合は2台とも入賞できません。ですから1台は戦略を変えて、ハードタイヤで第1スティントを引っ張って、レース後半にトラックコンディションがよくなり燃料も軽い状態でミディアムを履いて走り切るという戦略にしました。どんな展開になったとしても、1台はポイントを獲れるようにするということです。

 しかしエステバンは、このような戦略が機能するところなんて見たことないし、ハードで引っ張っている間にトラフィックのなかでタイヤがダメになる、と強く反対していました。でも、もしハードがダメになる状況ならそれよりも早い段階で先にミディアムが限界を迎えますし、彼のタイヤマネージメント能力の高さがあれば第1スティントを走り切ることができ、ミディアム勢がピットストップをした後にチャンスがあると考え実行しました。

 最終的に状況はエステバンの方に傾いて、ミディアム勢がスタックしている間にとにかくなるべく多くのクルマをクリアできるように引っ張りました。56周目には8番手まで順位を上げて、すでにピットストップをすませて20秒ほど後ろを走っていたフランコ・コラピント(アルピーヌ)をなんとかクリアしようとしていました。コラピントに青旗が出されるタイミングで彼はタイムロスするので、これを見計らって57周目にピットイン、ミディアムに交換しました。エステバンのすぐ後ろを走っていたカルロス・サインツ(ウイリアムズ)も同じことを考えていて同じタイミングでピットインしました。その後はサインツを抑えきり、最後はランド・ノリス(マクラーレン)のアクシデントでセーフティカー(SC)が出て、そのまま9位でレースを終えました。

 レースの前にはいろいろな状況をみんなで話し合って、シミュレーションして、計算上ではハードスタートの方が絶対に遅いというのはわかりきっていました。でも僕が思うのは、「ポイントを獲るために何をしないといけないのか」を考えるためには数字だけを見るのではなく、何がわからないのか、ある状況の時はどう対応するのか、と様々な展開を想定することが重要です。今回の件も、エステバンがハードタイヤでスタートしても入賞のチャンスは少なくとも五分五分だと考えていました。彼もやると決めてからは腹をくくって素晴らしいレースをしてくれました。またひとつお互いの信頼関係も深まり、タイヤマネージメントにより自信を持ってくれたと思います。第4戦バーレーンGP以来の会心のレースでした。


■ニューヨーク史上最大規模の『F1/エフワン』ワールドプレミア

 カナダGP終了後、ドライバーとチーム代表はF1が用意したチャーター機でニューヨークに向かい、タイムズ・スクエアで映画『F1/エフワン』のワールドプレミアに参加しました。個人的にはニューヨークに行くのが学生の時以来で26年ぶりだったので、あの当時と街がどう変わったのかも見たくて、グラウンドゼロまで走ったりもしてきました。

 ワールドプレミアに関しては、まずは用意されたチャーター機にびっくりしましたね。関係者は多くても60人くらいしかいなかったと思うのですが、あんなに大きな飛行機が準備されていて……。機内ではスペシャルパッケージのポップコーンも用意され(ちなみにモナコでの上映会の時はありませんでした)、映画のサウンドトラックのレコードが用意されていたりと、いろいろと特別感があり修学旅行のようでした。

 実際にタイムズ・スクエアを通行止めにして行われたイベントに参加した感想は、もうとにかくすごかったです! 今回のプレミアは、これまでニューヨークで開催されたもののなかで、トップクラスの規模だったみたいです。宿泊しているホテルから用意された車でタイムズ・スクエアに向かったのですが、昨年のコンストラクターズ選手権の10位のチームから順に着くようスケジュールが組まれていて、その大トリとして主演のブラッド・ピットが到着しました。タイムズ・スクエアに数多くある大スクリーンにはどれも予告動画が流されていて、特設スタンドまで用意された会場は観客で埋め尽くされていました。規模に圧倒されましたし、他に類をみない雰囲気のイベントに参加することができて素晴らしい経験になりました。

 映画を作って、タイムズ・スクエアを貸し切ってこういう大きなイベントをやるなんて、5年前でも想像できなかったですよね。会場でマーティン・ブランドル(編注:元F1ドライバーで、現在はSky Sports F1の解説を務めている)やデイビッド・クロフト(編注:Sky Sports F1の解説者)などと話をしていたのですが、マーティンは、「バーニー・エクレストンがアメリカ市場を開拓しようとずっといろんなことを試したけれど結局できなかった。それがF1の商業権保有者がリバティ・メディアに変わってこういうことになるなんて」と感慨深そうでした。クロフティーも「なんて恵まれた時代にF1で働けているのか」と。ホントにF1は変わりましたね。

 ちなみにソーシャルメディアで話題になっていましたが、現地で角田裕毅(レッドブル)選手と写真を撮ったのはたまたまです。タイムズ・スクエアのイベントの後、写真撮影のためにロックフェラーセンターに移動しました。そこで待機している時に彼といろいろな話をしていた流れで、たまたま屋上に一緒についたので、景色がいいから「じゃあ撮ろうか」という感じで撮ったんです。サーキットから離れてリラックスした環境で他チームのドライバーや代表たちとも軽いノリで話せる空間があって楽しかったです。

https://twitter.com/F1/status/1934718307988345141?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1934718307988345141%7Ctwgr%5E3933d53fec51206a31633fc795a6b06de7fd90c2%7Ctwcon%5Es1_&ref_url=https%3A%2F%2Fwww.as-web.jp%2Ff1%2F1223682

[オートスポーツweb 2025年06月26日]

文:AUTOSPORT web
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