A35と同じ306psの2.0L 4気筒ターボ
text:James Disdale(ジェームス・ディスデイル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
自動車メーカーのSUVには、高性能モデルを設定しなければラインナップが完成しない時代。それは最新のメルセデス・ベンツGLBでも例外ではない。
多くの顧客の心を、高効率なディーゼルエンジンや小排気量のガソリンエンジンで掴む一方で、AMGの手による「35」がGLBラインナップの頂点へと加わった。フォルクスワーゲンTロックRや間もなく登場するアウディRS Q8などと並ぶ、とりわけ運動神経の良いオフローダーの登場だ。
メルセデスAMGのAクラスという前例があることで、GLBにかなりのスパイスを効かせることは比較的簡単だっただろう。エンジンはハッチバックのA35にも搭載されている、306psの2.0L 4気筒ターボユニット。
トランスミッションは8速デュアルクラッチATで、4輪駆動システム4マティックも基本的にはA35と同じシステム。GLBの場合、100%の前輪駆動から前後均等の50:50まで、トルクを分配することができる。
フロントサスペンションへ与えられた変更はかなり大きい。ステアリング・ナックルとコントロールアームはGLB 35専用。サブフレームも強固な専用パーツとなっている。一方でリアサスペンションはマルチリンク式で、基本的には標準のGLBと同一のもの。コーナリング時の高荷重を踏まえて、ハブは強化品となっている。
往年のレーサーを彷彿させるフロントグリル
スプリングとダンパーは引き締められているが、アダプティブ・ダンパーはオプション設定。速度で可変する電動パワーステアリングに、フロントが350mm、リアが330mmの大径ディスクの構成によるAMGブレーキも搭載する。
エクステリアは他のAMGと共通。フロントスプリッターは大きくなり、マフラーは左右に別れた2本出し。リアバンパーの造形もスポーティなものになり、テールゲートの上部には大きなスポイラーが付く。
マルチスポークの19インチホイールが標準装備だが、オプションで20インチか21インチも履かせられる。フロントグリルは1950年代のメルセデス・ベンツ製レーシングカーを彷彿とさせる、「パンアメリカーナ」AMGグリルを装備。「35」シリーズでは初採用だという。
インテリアもAMGらしく手が加えられた。3スポークのマルチファンクション・ステアリングホイールに、サイドサポートの大きいフロントシート、メタル・フィニッシュのシフトパドルなどはお約束。
AMGダイナミック・セレクターも装備し、スロットルやトランスミッション、ドライブトレイン、ステアリング、スタビリティコントロールの設定の組み合わせを、多様なモードの中から選択可能。
ただ、筆者は少し操作に戸惑うのだけれど。サブメニューを掘り下げながら変更を加えていくと、自分を見失ってしまう。
車重が重くボディが大きいA35
それ以外の車内は基本的に標準のGLBと同一。少々窮屈とはいえ、実用性の高い7名分のシートが用意されている。もちろんインテリアの仕上りも高水準。プラスティックが用いられているのは、足元など傷が付きやすい部分のみで、プレミアムな雰囲気には水をささない。
GLB 35をスタートさせてみる。誤解を恐れず要約すると、車重が重く、ボディの大きいA35のような印象だ。
ストレートでの加速はかなり速いが、グリップ力も高く安定性にも優れている。スピードの出し過ぎには要注意。ただし、特に個性が強いとか、一体感を感じられるものではない。
たくましいエンジンと4輪駆動の優れたトラクション、高いドライビング・ポジションと比較的コンパクトなボディの組み合わせだから、道を選ばずハイペースで走らせられる。
エンジンのフィーリングは、A35と同様に興奮を誘うものではないが、効果的にパワフル。低回転域からトルクは潤沢で、レッドゾーンめがけて高まる盛り上がりは欠けるが、加速は容赦ない。
車重はA35より重たいものの、0-100km/h加速は5.2秒で遅くない。回転は滑らかだがマフラーからは迫力の唸り声を響かせ、時折混ざるぐずり音と合わせて、スポーツ・マインドを刺激してくれる。
デュアルクラッチATは鋭くクルマを発信させ、変速もスムーズ。ステアリングホイールにマウントされたシフトパドルの反応も小気味いい。トラクションの掛かりは印象的なまでに良く、乾燥路面ならホイールスピンする気配すらない。
ゆるいぎないパワーとトラクション
メルセデスAMG GLB 35をコーナーの連続する区間へ持ち込むと、標準のGBLよりもステアリングが重いことを実感する。コンフォートモードでも姿勢制御はタイトで、ピッチもロールも抑制が効いている。
グリップ力は強いうえに、トルクベクタリング機能がドライバーの狙ったライン通りに、GLBの鼻先を向け続けてくれる。確かにA35と比較すると、急な方向転換などでは少し反応が遅いこともあるが、GLBは意外なほどに俊敏に動く。
ブレーキの力強さも運転する自信を高めてくれる。制動力は漸進的に立ち上がり、強力にディスクを抑え込む。起伏の大きいルートやサーキットでは、車重を隠しきれない場面はあるだろう。
限界領域の80%位のところで、積極的な運転を楽しむのが適しているクルマだ。A35とは異なり、純粋にドライビングを楽しめるマシンではない。車高は高く、車重は重く、ボディは大きすぎる。クルマから伝わる情報量も少なく、操縦性の奥行きも深いわけではない。
だとしても、ひたすらハイスピードで道路を走らせることはできる。高い目線による開けた視界、ゆるいぎないパワーとトラクションで、客観的な意見など忘れさせてくれる。
乗り心地に関しては、引き締められたサスペンションのおかげでやや硬め。ホイールが大きいから鋭い衝撃は車内に届き、路面が荒れているとロードノイズも小さくない。
実用性と走行性能の高さはライバル不在
路面が滑らかなら充分に洗練された乗り心地が味わえる。風切り音も小さく、メカニカルノイズも小さ目。緩やかな起伏やうねりなら、しなやかにやり過ごしてくれる。
値が張るGLB 35ながら、このクラスの7シーターのSUVとしてみると、ライバルは極めて限定される。安価なディーゼル版スコダ・コディアックvRSは動力性能で及ばず、ミニ・カントリーマンJCWはパワーで拮抗していても定員や車内の広さで及ばない。ハンドリング性能や快適性でも大きな差がある。
コンパクトSUVで7シーターという構成を持ち、パフォーマンスも求めるのなら、メルセデスAMG GLB 35は外せない選択肢となる。3列目は子ども用だけれど。
反面、5名乗車でも良いのなら選択肢は広がってくる。GLBと同じ広さの荷室容量が必要で、高次元でのドライバーの満足感も得たいのなら、フォルクスワーゲン・ゴルフRエステートが最有力だと思う。値段も遥かに手頃だ。
メルセデスAMG GLB 35のスペック
価格:4万5000ポンド(630万円・推定)
全長:4634mm(標準GLB)
全幅:1834mm(標準GLB)
全高:1658mm(標準GLB)
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:5.2秒
燃費:13.3km/L
CO2排出量:171g/km
乾燥重量:1555kg
パワートレイン:直列4気筒1991ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:306ps/5800-6100rpm
最大トルク:40.7kg-m/3000-4000rpm
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック
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