ドライバー2020年3月号からスタートした新連載「(じつは)動物カメラマン 三好秀昌の『ニッポン探訪』」。日本全国をSUVで駆けまわり、かわいい動物や最高の絶景を撮影してしまおう!という企画です。第25回は長野・山梨で撮影にチャレンジした「フクロウ」。撮影テクニックやクルマのインプレッション、その地域のグルメやお土産情報など、取材ウラ話をいろいろと紹介します。
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マジックアワーの八ヶ岳の美しさ
中央高速道路を須玉ICで降り、国道141号を清里・野辺山方面へと走る。標高が上がるにつれ気温が下がり、路面には少しずつ雪が現れる。
空に夜明け前の明るさが出てくると、雪化粧した八ヶ岳が見え始める。山肌の青白さがオレンジに染まっていく様はマジックアワーと呼ぶにふさわしく、とてつもなく美しい変化を見ることができる。
この時間帯にクルマを運転していることはまれだが、冬の高原ではぜひとも体験してほしいシチュエーション。滑りやすい雪道をやや緊張しながら見る景色は、よりいっそうインパクトが強くなるのだ。
夜行性の常識を破る昼間の狩り
山梨県の清里、長野県の野辺山を目指している理由はフクロウ観察だ。このエリアにはたくさんのフクロウが生息しているらしい。増えすぎて天然記念物のヤマネが餌食になって減少している、という話まで出てくるほど。
今までにも山道の電線にフクロウの雛(ひな)が数羽止まっていたり、宿の窓を開けたら少し離れた木にフクロウがいたような体験もしているから、確かに生息数は高そうだ。
野辺山高原のフクロウは夜行性の常識を覆すような行動をとる。朝や夕方、日の光がある時間帯に森から草原に出てハンティングにいそしむのだ。
野生動物にとって生きる糧を得るためには、夜行性と言われる動物でさえその環境にもっとも順応した生態に変化していくのだろうか。さすが知恵の象徴とされるフクロウらしい行動だ。
確かに、明るい雪原の上をフクロウがヒラヒラと飛んできた。しかし、今朝は獲物にはありつけなかったようだ。
オイラにもゆかりのある清里と野辺山
清里・野辺山の変遷はものすごく興味深いものがある。日本のバブル景気に踊らされた開発ブームもあり、清里駅前の通りが派手な色に染まり原宿化したり、脱サラペンションブームも起きた。
オイラはそれ以前からこのあたりに遊びに来ていた。理由は蒸気機関車の撮影。
小海線はポニーの愛称を持つC56型蒸気機関車が八ヶ岳をバックに走っていて、まさに高原列車という名称にふさわしい場所だったのだ。
この写真は1973年に復活運転されたときのもので、八ヶ岳をバックに撮影できる清里・野辺山間の大門沢橋梁は沿線一の人気撮影場所だった。意外と八ヶ岳はきれいに見えないことが多いが、このときはその姿をしっかりと見せてくれた。49年(!)も前のことなのでそのときのことはほとんど覚えていないが、運だけはよかったようだ。
今この橋の横には国道141号のバイパスが通り、当時カメラを構えた旧道からは木が生い茂っていて橋はまったく見えない。なので、向きは真反対にはなるが、バイパスから橋を渡る列車をなんとか撮影できた。
そして野辺山駅も大変身している。
人々のファッションに時代を感じる。
小海線の野辺山駅の近くには標高1375mというJRの路線でもっとも標高が高い場所、鉄道最高地点がある。76年にオイラは仲間とバイクでそこを訪れていた。当時の表示は当然ながら「日本国有鉄道最高地点」という仰々しい名称だ。
今はJR鉄道最高地点という立派な石造りのモニュメントに変更されている。
レストランのトイレにエンジンパーツ!?
清里にはレストランやホテル、オルゴール博物館、ナチュラルガーデンなどが集まる「萌木の村(もえぎのむら)」がある。開拓で切り開かれた場所で入植第2世代がかつてのブームに踊らされることなく手堅く切り盛りしている施設群だ。なかでも「ROCK」は51年の歴史を誇るレストラン。
ド定番のオススメは看板メニューのビーフカレーだ。40年にわたって親しまれてきた味は今や年間15万食の人気メニュー。
ROCKの男性用トイレには不思議ものがディスプレイされている。便器の前にバラバラになったクルマのパーツが並んでいるのだ。多くはスバルのEJ20ボクサーターボエンジンのパーツだが、ロータリーエンジンのパーツやGTマシンのブレーキまでゴロゴロしている。そして女性用トイレ内には……残念ながら入ったことはないので知らない(笑)。誰か確認してきてくださいな。
ここROCKは、長年スバルでWRCに挑戦してきた舩木 良さんというラリードライバーの職場である。だからトイレのパーツ群だけでなく、そこかしこにラリー絡みの装飾があったり、ジョンディアというアメリカのヒストリックトラクターが前庭に鎮座しているのだ。
いろいろな施設がある萌木の村だが、オイラの一番のオススメは「ホール・オブ・ホールズ」というオルゴール館だ。
最初に舩木さんに「見ていって」と言われたときは、「オルゴールか~。なんかチリチリとした金属音聞くのか~」と乗り気ではなかったのだが、これがとてつもない代物!
自動演奏楽器と呼ばれる巨大なからくり箱が繰り出す緻密な演奏と、それらが生み出す迫力ある音に度肝を抜かれた。
これはメカ好きな人なら一度は見たほうがいい。また音楽好きなら一度は聞いたほうがいい。あまり物事に感動しないオイラもインドのタージマハールの美しさの次ぐらいに衝撃を受けた。オススメです!!
萌木の村
山梨県北杜市高根町清里3545
TEL:0551-48-3522
営業時間:10:00~18:00(冬季は~17:00)
定休日:無休
シャッタースピードはカメラブレ寸前に
夜明け前のスキー場が美しかった。舞い上がる雪が照明に反射して、雪山とのコントラストが幻想的だ。雰囲気を大切にするのに−1.7絞りアンダーめの露出でISO感度も上がらない1/30というカメラブレギリギリのシャッタースピードを設定したが、安全策でレンズの手振れ補正機構をONにしてシャッターを切った。
「今回の機材」
カメラボディ:SONY α9
レンズ:FE 24-105mm F4 G OSS
撮影モード:マニュアル
シャッタースピード:1/30秒
絞り:F4.0
ISO:320
露出補正:−1.7ステップ
「オススメのSUV……ランドローバー ディフェンダー」
■110 SE P300 主要諸元
(8速AT/4WD)
全長×全幅×全高:4945mm×1995mm×1970mm
ホイールベース:3020mm
最低地上高:218mm
最大渡河水深:900mm
車両重量:2420kg
最小回転半径:6.1m
エンジン:直4DOHCターボ
総排気量:1997cc
最高出力:221kW(300ps)/5500rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/1500~4500rpm
燃料/タンク容量:プレミアム/90L
WLTCモード燃費:8.3km/L
価格:759万円
世界最強SUV筆頭候補なのに快適
野山を駆けまわるイメージそのもののディフェンダー。先代のイメージを踏襲しながら、快適性と先進安全装備を盛り込んだ存在感ある一台だ。300馬力のガソリンエンジンはスポーティで軽快。燃費を考えるなら静かさで定評あるディーゼルエンジンもありだ。
エンジン特性や4WDをあらゆる路面でベストセッティングできるテレインレスポンスに、舗装路から雪や泥などの悪路に加えて渡河走行プログラムも加えられた。ついに水の中もディフェンダーのフィールドなのか!
標準でオフロードタイヤを装着しているので、泥道でも抜群のトラクションで走りまわれる安心感はこのクルマの大きな特徴だ。懸念されるタイヤノイズだが、とても低く抑えられている点はすばらしい。
そして、リヤゲートに装備されたスペアタイヤの存在は荒れた岩場やアドベンチャーチックな悪路に突入し、運悪くパンクしても帰還できるという安心を生み出している。だからこそ、オフロード走行も推奨できるのだ。
〈文と写真〉
三好秀昌 Hideaki Miyoshi
●東京都生まれ、日本大学芸術学部写真学科卒業。八重洲出版のカメラマンだったが、ラリーで頭角を現し、そのうち試乗記なども執筆することに。1995年、96年にはサファリラリー グループNで2年連続優勝。そのほか、国内外で数多くのラリーに参戦。写真家としては、ケニアでの豹の撮影など、動物をおもな題材としている
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