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灼熱のフロリダから雪の御殿場、そして東富士へ。超多忙な小林可夢偉に聞く、トラブルだらけのセブリング連戦

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灼熱のフロリダから雪の御殿場、そして東富士へ。超多忙な小林可夢偉に聞く、トラブルだらけのセブリング連戦

 3月22日、富士スピードウェイで行われたスーパーフォーミュラの第2回公式合同テスト初日。KCMGのピットには、小林可夢偉の姿があった。

 今季スーパーフォーミュラにエントリーしているのだから当然と言ってしまえばそれまでだが、可夢偉は3月18日金曜まで、アメリカ・フロリダ州のセブリング・インターナショナル・レースウェイで行われていたWEC世界耐久選手権第1戦セブリング1000マイルレースを、ドライバー兼チーム代表という立場で戦っていたばかり。

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 WECだけならcarenex TEAM IMPULの平川亮(こちらも帰国直後に富士テストに参加)と同じだが、可夢偉が平川と異なるのは、19日土曜にセブリングで行われたIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権第2戦のセブリング12時間レースにも参戦していたこと、そして帰国後には“チーム代表業”も抱えている点だ。

 気温30度のフロリダから一転、雪の降る富士へ。入国制限が緩和され特定の条件下では隔離がなくなったとはいえ、その移動もなかなか大変なものだったようだ。

■48時間ぶりのベッド。高速バスで富士入りの過酷な移動
「WECのレースが金曜に終わって、ホテルに戻ったのが夜の12時くらい。次の日、IMSAのサーキット集合が6時だったので、5時くらいに起きたんです」と可夢偉は多忙な日々を振り返る。

 WECを優先するため、IMSAでのアリー・キャデラック48号車キャデラックDPi-V.Rには決勝日朝の20分間のウォームアップが“初乗り”となったが、「問題なかったです。ウォームアップで4周しか乗ってないですけど、全然いいタイムでしたから」と可夢偉。

 IMSAのレースでは、さまざまなトラブルに見舞われた。まず、チームがピット作業中にドリンクボトルを手渡すのを忘れており、可夢偉は灼熱のコクピットで暑さと戦うことになったという。

 加えて、前走のホセ・マリア・ロペスが、定められた手順でマシンを停止しなかったことに端を発して、ピット作業違反とピットレーン速度違反、2回のドライブスルー・ペナルティを科せられてしまった。最終的に可夢偉ら48号車は、ブレーキのトラブルによって勝負権を失っている。

「WECのクルマ(GR010ハイブリッド)より全然暑い」とキャデラックDPi-V.Rについて、可夢偉は説明する。

「もう、キャデラック陣営のドライバーは、みんなヘバってました。ロイック(・デュバル。JDCミラー・モータースポーツのキャデラックをドライブし2位)が突然僕のところに来て、『おい、まだ行けるか?』って聞いてきたんですけど、『もうやばいよ』と」

「ふたりで『俺ら、トシ喰ったな』って言い合ってたんですけど、若いドライバーを見たら彼らもヘロヘロだったから、そういう問題でもなかった(笑)。もう、ヘロヘロでした」

 そんな過酷な12時間レースを終えた可夢偉は、土曜日の深夜11時半にセブリングを脱出。「夜ご飯を食べてなかったので、マクドナルドでドライブスルーして」向かった先は、マイアミの空港だった。

「夜中の3時くらいに着いたんですけど、飛行機は朝7時。ホテルに泊まるのも意味がないから、そのまま空港の椅子で寝ました。まだチェックインもできないから、盗まれないようにカバンを抱えながら」

 シカゴを経由し、月曜の夜に日本に帰国した可夢偉は、48時間ぶりにベッドで身体を休めることができたという。しかし、火曜日の朝からはスーパーフォーミュラのテストが始まる。

「もう自分で運転するのも嫌なので、今朝、高速バスで御殿場まで来ました。それで、チームに迎えにきてもらったんです」

 F1参戦時代にはもっと過酷な移動も経験している可夢偉は、移動自体は問題ない、という。

 だが、多忙なスケジュールはこれで終わりではない。雨と雪に見舞われた午前のテストセッションに出走しなかった可夢偉は、中止がアナウンスされた22日午後のセッションの時間を使い、トヨタの東富士研究所でWECのミーティングに臨むというのだ。

「もともとサーキットに来てもらってやる予定だったんですけど、キャンセルになったので、『じゃあ、そちらに行きます』と。チーム代表になったというのもありますし、WECのクルマをどうやって良くするか、というミーティングです」

 WECセブリング戦では、ロペスのクラッシュにより可夢偉の7号車はレースを終えている。クラッシュ後、ピットに戻ったロペスからはミスを認める発言があり、「それ以上、何も言えなかった」という可夢偉は、3連覇を狙うシーズンの初戦をノーポイントで終える結果となってしまったことにショックを受けているようだ。

 それと同時に、「クルマは全損です。ひっくり返ってしまったから、エンジンもダメ」と、修復・交換するパーツのやりくりや費用の面なども含め、チーム代表としても考えることが多く、頭が痛そうな様子だった。

■スーパーフォーミュラは“ベース”を改善する必要あり
 一方、そのセブリングへと出発する直前に行われたスーパーフォーミュラ鈴鹿公式合同テストでは、「ちょっと苦戦していた」と可夢偉は語る。

 過去2シーズン、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって移動が制限され、WECを優先してきた可夢偉はスーパーフォーミュラにフル参戦することができていない。その点について「ダメージはあるなって感じます」と可夢偉。

「いろいろ試行錯誤していくことが止まった部分はある。一方で他のチームはずっと同じドライバーでそれを続けているから、一歩先に行っているなっていう感じはあります。なんとか追いつきたいです」

 鈴鹿テストではデフやギヤボックスのトラブルに見舞われてもいたという。

「ヘアピンで止まってしまったのは、ギヤボックスがいきなり壊れたから。スピンしてしまって『ダサッ』と思ってギヤ入れて再スタートしようとしたら、ちょっとこれはおかしいぞと。それでクルマを停めたんですが、それが良かった。無理矢理発進してたら、ギヤボックスが爆発してましたよ」

 思うようなテストにならなかった鈴鹿を経て、富士テストも初日が雨と雪のため走行できず、開幕までに残されたのは23日の2セッションのみとなる。

「やっぱり、このクルマでどうやってタイムを出すかという理解が、まだ充分じゃないから、それをまずは理解しないといけない。いまもバランスがすごい悪いわけではないですが、タイムを見ればもっと上がいる。やっぱりあと1秒、上げないといけない。そうするにはどうすればいいかという“ベース”の部分で考えていかないと、ちょっとたどり着けないと思います」

 隔離がなくなったことで、WECと同時並行でスーパーフォーミュラにもフル参戦ができそうな2022年。多くの走行機会を得て、“1秒のギャップ”を埋めることはできるのか。可夢偉の“追い上げ”に注目したい。

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