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スバルが2030年に死亡交通事故ゼロを目指すための新技術「AACN」とは何か?

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スバルが2030年に死亡交通事故ゼロを目指すための新技術「AACN」とは何か?

日米で死亡交通事故率が低いスバル車。その総合安全思想はさらに高みを目指す

2020年1月20日、スバルはメディア向けに「SUBARU技術ミーティング」を開催した。パワートレイン、自動運転、先進安全など幅広い分野において、意欲的な目標が発表された。たとえば「2030年までに全世界販売台数の40%以上を、電気自動車(EV)+ハイブリッド車にする」という目標が公表され、新世代EVのデザインスタディも公開された。さらに「2050年に世界で販売される全てのSUBARU車の燃費(届出値)から算出するCO2排出量を、2010年比で90%以上削減」という非常に高い目標も掲げられた。なお、ここでいうCO2排出量は総量ベースであり、市場環境変化による販売台数の増減は加味するが、走行距離の多少は考慮しないものとなっている。

世界的な課題である環境性能も大事だが、スバルといえば安全性能にすぐれたブランドというイメージがある。そうした部分でもチャレンジングな目標が掲げられた。それは『2030年「死亡交通事故ゼロ」を目指す』というもの。もちろん他社のことはカバーできないのでスバル車に限った話ではあるが、死亡事故ゼロというのは大風呂敷を広げたという印象も受ける。

たしかに、スバル「アイサイト」が日本に広めるきっかけになったといっても過言ではないADAS(先進運転支援システム)・AEB(衝突被害軽減ブレーキ)によって交通事故の発生件数は減っているし、事故により死者、けが人も減っている。死者数でいえば、この10年で3割減という具合だ(2009年:4979人、2019年:3532人・警察庁発表データより)。技術によって事故も死者も減らすことはできることの証明ともいえる。

とはいえ「減らす」と「ゼロにする」ではハードルがまったく異なるのは自明。それでもスバルが死亡交通事故ゼロを目指す理由は、安全のトップランナーとしての矜持だ。この技術ミーティングで発表されたところによると、スバル車の死亡交通事故の発生率は日米ともに非常に低いレベルにあるという。それぞれ統計データの算出法が異なるので数字の絶対値では比較できないが、アメリカでの死亡交通事故発生率は全メーカー平均の108に対して、スバルは59となっている。また、日本では全メーカー平均62に対して、スバルは50となっているという(いずれも100万台あたりの死亡事故件数)。

こうした事故を起こさない、事故が起きても乗員を守るというスタンスはスバルのフィロソフィーである「総合安全思想」に基づいたクルマづくりによるものといえる。死角を減らしたパッケージ、危機回避能力の高さ、アイサイトによる予防安全、そして万が一の事故でも人を守るコンパチビリティ設計などスバルの安全思想は非常に高いレベルにある。コンパチビリティ思想でいえば、歩行者保護用エアバッグをインプレッサという量販モデルに標準装備しているという点も見逃せない。死亡交通事故を減らそうという強い意思がクルマづくりに込められているのは間違いない。

こうした総合安全思想を発展させることが死亡交通事故ゼロに向けた最初のステップとなる。具体的には、ドライバーモニタリングシステムによって乗員の状態を認識することで急病などでの意識喪失に対応できるようにすることが考えられているという。また、運動性能のさらなる向上は危機回避能力を高めることにもつながる。アイサイトの象徴的デバイスといえるステレオカメラの画像認識性能の向上も欠かせない。それにより歩行者やサイクリストなどの発見を早めることでAEB(衝突被害軽減ブレーキ)の性能アップが期待できる。

ただし、こうした従来技術の進化で死亡交通事故ゼロにできるとはスバル自身も考えてはいない。ADASの進化によって死亡交通事故を65%減らすことはできると考えているが、さらに35%の削減には新しい技術の採用が必要だと技術ミーティングで表明した。なにしろ自車のADAS機能をいくら進化させても他車に起因する事故を減らすのは難しいからだ。

その新しい技術とは「AACN(事故自動通報)」機能の採用と進化だ。わかりやすくいうと、コネクテッド機能を利用して、事故発生にあわせて場所や状況を警察や消防に連絡する仕組みである。ADASによって事故そのものの発生を減らす一方で、万が一起きてしまった場合には、救命活動を素早く適切に行なうことで死亡に至らないようにする。このように何段構えにも用意した安全装備により死亡交通事故ゼロを目指す。しかも、冒頭でも記したように2030年には死亡交通事故ゼロの実現を目指しているというから、夢の技術ではなく具体的に動いている話なのである。

クルマ選びのプライオリティは市場環境によって変わっている。故障が少ないことが優先された時代もあれば、運動性能が重視された時代もあった。最近のトレンドは燃費などの環境性能である。そして、ADASの普及は安全性能重視の時代が始まったことを示している。スバルだけでなく、多くの自動車メーカーが死亡交通事故ゼロを目指しているはずだ。そうして各社が切磋琢磨、さらに協力しあうことで、交通事故ゼロの社会が生まれることを大いに期待したい。

文:山本晋也(自動車コミュニケータ・コラムニスト)

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みんなのコメント

28件
  • 安全性能は他社を真似してでもそれが一つでも減るならok
    全員が無謀な運転している訳じゃないですし、子供や年寄りの急な飛び出し、ブレーキ操作の間違い、高齢などによる判断ミス、高速の逆走など防げるならもっともっと頑張って先進機能が発達すればいいですよね。
    あとグレードによる先進機能の差の区別はやめてほしいです。
  • メーカーは困るけど、年寄りや違反常連者から免許剥奪したら、事故は減るし
    渋滞緩和で、環境にもよい。それにプラス、オートマ禁止なら道路ガラガラだよ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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