ル・マン24時間レースのオーガナイザーであるACO(フランス西部自動車クラブ)が主要パートナーを務めるMissionH24グループが、H24EVOとして知られるシングルシーター水素燃料電池プロトタイプカーの実物大モデルを公開した。
ACOは2027年から水素燃料電池または水素燃焼エンジンのいずれかを使用したマシンのル・マン出場を認め、翌2028年には最初のマシンがグリッドに登場することを期待している。
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MissionH24プロジェクトは、モータースポーツにおける代替燃料としての水素を活用することを提案し、スポーツカーレースにおける水素利用の枠組みを構築することを目的としている。
MissionH24は、これまでにも燃料電池を搭載したプロトタイプカーによるレース出場を目指してマシンを開発してきており、2022年にはH24と呼ばれるマシンでミシュラン・ル・マン・カップ4戦に参戦した。
プロジェクト3台目となるH24EVOは先代マシンから大きく進化しており、最高出力は350kW(約476PS)から650kW(約884PS)に大幅アップ。さらに重量は1480kgから1300kgに軽量化されている。リヤアクスルに搭載されたパワートレインの出力密度は50%も向上しているという。
H24EVOはこのプロジェクトのテクニカルディレクターであるバセル・アスランがゼロから設計。モノコックは先代マシンのベースとなったLMP3シャシーを提供したドイツのコンストラクター、ADESSが再び供給する。
7.8kgの水素が入る燃料タンクは、FIAとの協議の結果、ドライバーとパワートレインの間のモノコック内に設置されることになった。水素は液体ではなく気体で貯蔵されるが、これは今年2月にFIAが望ましいとした手法だ。
参考までに、トヨタがスーパー耐久で走らせている水素エンジンカローラの水素搭載量は、気体水素を使っていた2022年で7.3kg。70MPaもの高圧で圧縮されタンク容量は180L、航続距離は約54kmだった。その後、トヨタは水素を気体から液体に変え、2024年にはタンク容量220Lで水素搭載量15kg、航続距離を約135kmまで伸ばしている。
アスランは、FIAが水素をモータースポーツに取り入れるためのビジョンを示したとき、すでにマシンはデザインされていたと説明した。
アスラン曰く、MissionH24がシングルシーターを選んだ理由は複数あるという。
「統合性とパッケージングが重要だった」
「シングルシーターはサイドポッドにスペースが生まれ、ラジエーターはここに統合することにした」
「ACOともディスカッションし、プロトタイプカーのクラシカルな外観から少し離れ、この技術に新しい見た目を合わせることにした」
計画では、H24EVOは来年早々に走行し、その年のル・マン期間中にコース上でデモンストレーションを行なうことになっている。
アスランによれば、このクルマは”最速のGT3カーと同等の速さ”で周回を重ねることが目標だが、どこでレースに参戦するかはまだ決まっていないという。
アスランはこのマシンが将来的に、実験的マシンがル・マン24時間レースを走るためのグリッド枠である”ガレージ56”を活用してル・マン24時間レースを走る可能性も否定しなかった。
「それ(ガレージ56)が計画されているとは言わないが、我々の視野はかなり広い」とアスランは説明した。
「いろんな条件に適応させるために改造することも考えられる。パフォーマンスと安全性の目標を達成してから、どこでレースをするか考えよう」
現時点でMissionH24の公式テストドライバーは、ノーマン・ナトーやステファン・リシェルミ、エイドリアン・タンベイが務めている。
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