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クジラがあだ名 アルファ・ロメオ 8C 2900B「バレーナ」(1) スタイリングは巨匠コロンボ

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クジラがあだ名 アルファ・ロメオ 8C 2900B「バレーナ」(1) スタイリングは巨匠コロンボ

アルゼンチンで与えられたあだ名はクジラ

フェラーリで名を馳せた技術者が描き出した、流線型ボディが印象的なアルファ・ロメオ 8C 2900B コルサ・スペリメンターレ。第二次大戦中のイタリアで密かに誕生すると、殆ど往来のない高速道路、アウトストラーダで最高速テストに挑んだ。

【画像】スタイリングはコロンボ 8C 2900B「バレーナ」 戦前の8Cと6C 21世紀の8Cと4Cも 全117枚

そこでは、若き王様もステアリングホイールを握ったらしい。戦火が厳しくなると、シャシー番号412043を背負ったこのクルマは、秘密の倉庫へ匿われた。

終戦後は、南アメリカ大陸へ輸出。アルゼンチンへ辿り着くと、サーキット・デビューを果たし、ファンからは「バレーナ」という愛称が与えられた。これは、現地の言葉でクジラを意味していた。丸くカーブを描いたボディが、そう感じさせたのだろう。

一時はボロボロの状態へ追い込まれたが、21世紀に本格レストア。オリジナルのボディは復元され、2024年のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでは、英国人にもお披露目されている。その会場では、「スパイダー」と呼ばれていた。

現在は、オランダ(ネザーランド)のラウマン自動車博物館に収蔵されている。目玉の1台として。

戦前のF1マシンへ携わった巨匠コロンボ

このモデルの起源は、1941年2月へ遡る。巨匠、ジョアッキーノ・コロンボ氏のサインが記されたボディ図面が、その時に描かれている。

コロンボは、アルファ・ロメオの技術者だったヴィットリオ・ヤーノ氏を師に、21歳で自動車開発のキャリアをスタート。アルフェッタやティーポ308、312、316といった戦前のF1マシンへ携わりつつ、副業でフェラーリのV12エンジンも設計している。

当時のアルファ・ロメオは、航空機エンジンやトラックの開発へ注力していた。だが独裁政権を確立したベニート・ムッソリーニ氏は、モータースポーツでの覇権維持も、同社へ指示したのかもしれない。

8C 2900B コルサ・スペリメンターレのフォルムは、1937年のル・マン24時間レースを制した、ブガッティ・タイプ57 G「タンク」へ影響を受けたものだと考えられる。折りたたみ可能なフロントスクリーンや、スペアタイヤの搭載方法などで共通している。

エンジンとスーパーチャージャーに挟まれた、ウェーバー・キャブレターへのアクセス性を高めるため、脱着可能なサイドパネルも備わる。一方コロンボは、エンジン次第でマフラーパイプの本数を選べるよう、2種類のリア周りを描いている。

アウトストラーダで219.5km/hに到達

予備に保管されていた、8C-2900のロングシャシーをベースに製作はスタート。ボディが架装され、ミラノから北のコモへ続いていた、アウトストラーダで走行テストにかけられた。車重1130kgのアルファ・ロメオは、5300rpmで219.5km/hに届いたようだ。

この1941年のテスト現場には、たまたまイタリアを訪れていたルーマニアのミヒャエル国王も姿を表した。主任技術者だったウィフレド・リカルト氏のドライブで高速走行を楽しんだだけでなく、自らステアリングホイールを握ることも提案されたらしい。

記録によれば、まだ19歳だった国王は、新しいアルファ・ロメオの性能に感動。カロッツェリアのトゥーリング社製サルーンボディをまとった、8C 2900をその後に注文したという。シャシー番号は、41039だった。

ところが、航空工学に関心を寄せていた若き王は、サルーンの性能には落胆したらしい。軽くないボディが、動的能力に大きな影響を与えていたのだろう。コルサ・スペリメンターレのような、鋭い走りを期待していたに違いない。

アルゼンチンでレースへ グリルやライトを交換

第二次大戦に敗北したイタリアは、暗闇の時代へ。アルファ・ロメオは政府から業務を請ける一方、コルサ・スペリメンターレは連合軍の目につかないよう、倉庫へ隠され生き延びていた。同社の工場は爆撃され、社会は荒廃。近々の収入が必要な状態だった。

高価なスポーツカーが売れる市場として、注目が向けられたのは南アメリカのアルゼンチン。2台の8C 2900の輸出が決まり、密かに保管されていたシャシー番号412043のコルサ・スペリメンターレも、一路ブエノスアイレスへ運ばれた。

続いて、1947年のイタリア・ミッレ・ミリアで優勝を飾った、トゥーリング社製ボディのクーペも届けられている。シャシー番号は、412036だ。

コルサ・スペリメンターレは、走行テストを終えたまま保管されており、ほぼ新車状態にあった。購入したのは、アマチュアレーサーだった富裕層、カルロス・ペレス・デ・ヴィラ氏。レースに備え、ボディには細かな変更が加えられた。

縦長だったフロントグリルは、当時のF1マシン、アルフェッタ風の凸型へ。そこにスポットライトが内蔵された。ヘッドライトは一般的な円形へ交換され、これもフェンダーの前方へ埋め込まれた。

フロントガラスは、ドライバー側だけの小さな1枚モノへ置換。リアタイヤを覆ったスパッツは、交換作業を考え外されたようだ。

この続きは、アルファ・ロメオ 8C 2900B「バレーナ」(2)にて。

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