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日本人は休みベタ? 5月病・6月病が急増中の今こそ、「攻めの休養」でストレスを回避せよ【GQ VOICE】

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日本人は休みベタ? 5月病・6月病が急増中の今こそ、「攻めの休養」でストレスを回避せよ【GQ VOICE】

疲れを訴える人は年々増える傾向にあるが、現代人の不調は「休めない社会」に原因があるのではないか。疲れても回復できない私たちに必要なのは、“攻めの休養”という新しいリテラシーだ。休養のプロ・片野秀樹が語るのは、“休む力”を自分で育てることの重要性。5月病・6月病が急増するこの時期こそ、休みかたを改めて学びたい。

日本人の8割が疲れている

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私たちの多くは「休みかた」を学ばずに大人になった。疲れたら寝ればいい、そんな子どもの頃の記憶を頼りに、多くの人が疲労を抱えながら走り続けている。しかし、それではもう間に合わない。そう主張するのは、疲労と休養の研究を20年以上続けてきた一般社団法人日本リカバリー協会代表理事の片野秀樹だ。

「最新の調査では日本人の8割が『疲れている』ということがわかっています。と同時に、疲れているのに休めない人も多くいます。リモートワークやスマホの普及で、私たちの働きかたは大きく変化し、脳や神経を酷使する生活へとシフトしました。その結果、これまでのように『寝れば治る』という昔ながらの休みかただけでは、もはや対応できなくなってきています。現代のストレスや疲労のありかたに、休養スタイルが追いついていないというのが現状です」

片野がこのテーマに取り組み始めたきっかけは、1999年に厚生労働省が行った疲労に関する調査だった。当時、就労者の約6割が「疲れている」と回答した事実に驚き、健康関連の仕事をしていた片野は、大学の研究員として休養のリテラシーを学び始めた。医学からスポーツ、脳科学まで多角的に“休養”について徹底的に追究し、専門家30名の知見を結集した「休養学」の教科書まで出版した。しかし、疲れている人は増え続けるばかり。運動や栄養は体育や家庭科で学ぶ機会があるが、休養については誰も教えてくれない。ゆえに、人々は幼少期の記憶に頼るしかない─寝れば元気になったあの頃の感覚。「けれど30代、40代になると体力は確実に落ちます。私たちは『疲労感』を見過ごし、疲れていることを使命感や責任感でマスキングしながら走り続けてしまう。疲労を押し殺しているうちに、身体のバランスが崩れ、病気の一歩手前にまで陥る人も多いのです」

5月病、6月病になる前に攻めの休養を片野は言う。疲労とは体からのアラートなのだと。「発熱や痛みには社会も理解がありますが、疲労感には『怠けているのでは?』という偏見があります。でも、本来は病気になる前の重要なシグナルなんです」

例えば、毎年5月に多く聞かれる「5月病」や、最近注目されている「6月病」。これらは新しい環境への適応に伴う強いストレスが引き金になる。入学、就職、異動などで生活が大きく変わる春先は、自律神経が乱れやすく、体や心に不調を感じやすい時期だ。

「疲労の原因はストレスです。正確に言うと『ストレッサー』という外的要因によって、交感神経が過度に高ぶり、副交感神経がうまく働かなくなる。これが続くと自律神経のバランスが崩れ、睡眠障害や慢性的なだるさ、さらには免疫力やホルモン分泌のバランスにも影響します。これを“ホメオスタシスの乱れ”と呼びます。自分では気づきにくいのですが、徐々に負荷をかけ、知らず知らずのうちに不調を引き起こすのです」

片野が提唱する7タイプの攻めの休養行動では、私たちはどう休めばいいのだろう。

「私は“攻めの休養”を提唱しています。これは、ただ休むのではなく、主体的に休養を取りにいくという姿勢です。攻めの休養行動には7つのタイプがあります。生理的休養の中には、休息タイプ(睡眠や休憩など。パッシブレストとも言われる)、運動タイプ(血行をよくするための軽い散歩やストレッチなど。アクティブレストとも言われる)、栄養タイプ(消化器官を休めるための、腹八分目の食事やファスティングなど)があります。また、心理的休養としては親交タイプ(人との何気ない会話やハグ、動物との触れ合い)、娯楽タイプ(音楽を聴く、映画を観るなど)、造形・想像タイプ(ものづくりや料理などのクリエイティブ活動や、瞑想、想像など)があり、社会的休養としては転換タイプ(模様替えや掃除、旅行など外部環境の変化)が挙げられます。

重要なのは、これらを自分の状態やライフスタイルに合わせて“複合的”に取り入れること。例えば、疲れたときに散歩をしながら自然の中で鳥の声を聞く行為は、運動・娯楽・転換タイプを同時に得ているとも言えます。休養とは単に“静”のみではなく、“動”の中にもあるのです」

土曜日始まりのオフ至上主義片野自身も、マイペースを取り戻すことを頻繁に意識するという。例えば日常では、慌ただしい街中のペースにのまれて早歩きしがちな帰宅時には、あえて自分の心地よい歩幅やペースを意識して歩く。また週末は、ぬるめの温泉にゆっくり浸かるなど、自分のルーティンを持っている。そんな小さな「余白」が、翌週の活力に繋がるのだそう。

「私は“土曜日始まりの1週間”を意識しています。多くの人は金曜まで全力で働き、土曜日は疲れを癒やすことで終わってしまう。でも、土曜日を休養の起点にしておけば、日曜にはリズムが整い、月曜日に活力をもって臨める。つまり、土曜にしっかりと休むことこそが、次の1週間を支える準備になるんです」

そして、片野が特に重要だと訴えるのが「オフ至上主義」という考えかただ。「これまでの私たちは、“オン”を優先して、その合間に“オフ”を取る、という発想でした。でも、これからは逆です。まず“オフ”を前提にして予定を組む。その上で、“このくらいの活力があれば、これだけの仕事ができる”と考える。すると、必要以上に無理をせずにすみ、結果的に効率も生産性も上がります」

この発想の転換は、タイムマネジメントにも変化をもたらす。EUが1993年に導入した「勤務間インターバル制度」もその一例だという。これは「仕事が終わってから次の仕事を始めるまでに11時間以上の休息時間をとらなければならない」というルールだ。

「この制度の素晴らしいところは、時間だけでなく“発想”を変える点にあります。11時間の間に、睡眠時間や移動時間、家族との時間、入浴時間など、自分の生活に必要な要素を組み込む。これが、休養の質を高めるという考えかたです。日本でも、『先にオフを設計する』という文化がもっと根づくべきだと思っています」

私たちは今、意識して休むリテラシーを磨く時にきているのだ。

片野秀樹/HIDEKI KATANO博士(医学)専門分野:休養・疲労・健康科学。東海大学健康科学部と医学部、日本体育大学、特定国立研究開発法人理化学研究所客員研究員を経て現在日本リカバリー協会代表理事。休養士養成講座講師。日本未病総合研究所未病公認講師(休養学)。著書に『休養学基礎』(メディカ出版)など多数。休養に関する社会の不理解解消やリテラシー向上を目指し活動する。

写真・GION  文・大庭美菜  編集・橋田真木(GQ)

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