敵意のない親しみやすい外観
「チャーミング」という言葉を定義するのは難しいが、一般的には、「人の心を惹きつける魅惑的なもの」と説明することができる。今回は、主にクルマの視覚的な魅力について語りたい。風変わりで、奇抜で、愛らしい外観のクルマをいくつか紹介する。
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もちろん、このリストはあくまでもAUTOCAR英国編集部の独断と偏見によるものだ。あのクルマも載せるべき、あるいはこのクルマは載せるべきではない、という意見もあるだろう。それはそれで構わない。編集部の人間がどのような見た目のクルマを偏愛しているか、少しでも共感していただければ幸甚の至りである。
オースチン・ヒーレー・スプライト/MGミジェット
まず、物議を醸すクルマから始めよう。オースチン・ヒーレー・スプライトMk1(初代)は、英国では「フロッグアイ」、北米では「バグアイ」として知られるが、今回はリストから除外したい。確かにMk1を愛する人は多いが、その醜さから魅力を感じない人もいる。
しかし、Mk2やMk3のスプライト、ほぼ同じ形状のMk1とMk2のMGミジェット(両車は総称して『スプリジェット』と呼ばれる)、そしてオースチン・ヒーレーブランド廃止後の第3世代のミジェットはそうではない。いくつかのスタイリングの違いはあるものの、基本的な形状は共通しており、どれも愛らしいクルマだ。
アウトビアンキA112
A112は、1968年にフィアットの完全子会社となったイタリアの自動車メーカー、アウトビアンキが生産した最も有名なクルマだ。子会社化から1年後に発売された3ドア・ハッチバックのA112は、ある意味でフィアット127のプロトタイプであった。
127もそれなりに魅力的なクルマだが、A112は小さな車体に美しさを湛えている。17年間に7回の改良が行われたにもかかわらず、発売当時のビジュアルの魅力を失うことはなかった。
シトロエン2CV
今日、外観が魅力的と評されるクルマの多くは、もともと純粋な機能性を追求して設計されたものだ。フィアット500、ミニ、フォルクスワーゲン・ビートルについては後で詳しく述べるが、シトロエン2CVも例外ではない。いずれも、外観よりも機能性と低価格を重視して形作られた。
2気筒エンジンを積んだ2CVは、1948年から1990年まで非常に長期間にわたって生産された。英国では、発売当時こそ奇抜なクルマとして捉えられていたものの、年月が経つにつれて人気を獲得していった。現在では、英仏海峡の両岸で愛されている。
シトロエン・メアリ
乗用車ベースでありながら、外観はまったく異なる、レジャー(および軍用)向けに設計された自動車がごく少数存在する。ミニ・モーク、ルノー・ロデオ、そしてドアのないプラスチックボディのシトロエン・メアリ(2CVの親戚)などだ。
わずかな差で、メアリが最もチャーミングだとAUTOCARは考えている。もちろん、ドライブのシチュエーションも重要だ。10月の雨の降る木曜日に英国の工場地帯を走るよりも、7月の太陽が降り注ぐサント・マキシムを走る方が、はるかに心地よい。
ダイハツ・コペン
軽自動車は、何十年にもわたって日本の自動車産業を支えてきたにもかかわらず、他の国ではどうしても風変わりで珍しいものと見なされている。
軽自動車が海外で販売された例はごくわずかだが、その中ではスポーツカーのコペンが最も楽しく魅力的だ。車内は見た目以上に広々としている。コペンが登場する4年前に生産終了した、可愛らしいスズキ・カプチーノも候補として挙げられるだろう。
フィアット126
1972年に登場した126は、前身のフィアット500の魅惑的なデザインと比べて、角張った箱型のクルマと捉えられていた。しかし、セルジオ・サルトレリ氏(1928-2009)がデザインした126は、年月を経て、今では子猫のように可愛らしいデザインとして評価されている。
前輪駆動が普及し始めた1972年当時、欧州の大手自動車メーカーが後輪駆動車を発売するのはやや時代遅れであった。それにもかかわらず、126は主に東欧諸国、中でもポーランドで高い人気を誇った。
フィアット・ヌオーヴァ500
戦前のトッポリーノや1990年代のチンクエチェントにどれほどの賛辞が寄せられたとしても、1957年から1975年まで生産された「ヌオーヴァ」(「新しい」の意)500の魅力には及ばない。
ダンテ・ジアコーサ氏(1905-1996)は、機能的でありながら、自動車史上最も魅力的なデザインの1つを生み出した。他の作品でも広く尊敬を集めるジアコーサ氏だが、500は間違いなく彼の最高傑作であり、イタリアを自動車大国へと押し上げた立役者と言えるだろう。コンパクトなサイズにもかかわらず、米国でも短期間販売され、約300台が売れた。
フィアット500
20世紀後半から21世紀初頭にかけて、複数のメーカーがさまざまなレトロモデルを発売した。シボレー・カマロ、クライスラーPTクルーザー、フォード・マスタング、ミニ、フォルクスワーゲン・ビートルなど、いずれも最新の技術を取り入れながら、過ぎ去った時代をモチーフにしている。
その中には、現代のフィアット500も含まれる。明らかにサイズアップしているにもかかわらず、オリジナルと驚くほど似た外観と魅力を備えている。その魅力を最大化するには、心地よい2気筒エンジン「マルチエア」を搭載したバージョンを試してみよう。
フォード・フィエスタMk1
フォードは1976年、初の前輪駆動の小型ハッチバックとしてフィエスタを投入した。それ以来、いくつものフィエスタが登場しているが、AUTOCAR英国編集部の見解ではMk1(初代)が最も可愛らしい。
やや丸みを帯びた四角形のヘッドライトが、まるで眉を上げているような印象を与える。円形ヘッドライトのXR2というホットハッチ版も素晴らしいが、控えめなバージョンと比べると親しみやすさは欠けている。
ゴッゴモビル
ドイツの自動車メーカー、グラース社は、1950年代半ばから1960年代後半にかけて、小型車ゴッゴモビルのセダン、クーペ、バンを生産していた。特にセダンは、漫画のような物悲しい外観と、400cc以上のエンジンが搭載されなかったこと(ただし、近年10.2Lの星形エンジンが搭載された例もある)もあって、とても愛らしいクルマだ。
編集部の知る限り、ジム・クラーク氏(1936-1968)は、ゴッゴモビルでレースに出場した唯一のF1世界チャンピオンだ。1963年と1965年のタイトルホルダーであるクラーク氏は、友人イアン・スコット=ワトソン氏(1930-2023)が所有するゴッゴモビルで、1950年代のオートテストに出場している。
イノチェンティ・ミニ
1960年代初頭からイタリアでBMCのモデルをライセンス生産していたイノチェンティは、1974年に自社版のミニを発売した。基本シャシーはミニと同じものだが、ヌッチオ・ベルトーネ氏(1914-1997)がデザインした3ドア・ハッチバックのボディを採用していた。
ベルトーネの手腕により、イノチェンティ・ミニは斬新で魅惑的、そして英国車よりもはるかにモダンな外観を誇った。生産は1993年まで続いたが、1982年に転換期を迎える。イノチェンティがミニの名称を廃止し、ダイハツ製のエンジンを搭載するようになったのだ。
ロータス・エリート
初代エリートは、モータースポーツでも優れた成績を残したスポーツカーだ。その美しさは、後継車のロータス・エラン、あるいはロータスがこれまでに生産したどのクルマよりも優れていると言えるだろう。
このデザインはピーター・カーワン=テイラー氏(1930-2014)が書き起こし、後にフランク・コスティン氏(1920-1995)が完成させたもので、1957年に初登場してから70年以上経った現在でも、驚くほど新鮮な印象を残している。
マツダMX-5
もちろんMX-5(日本名:ロードスター)はこのリストに欠かせないが、どのモデルを選ぶべきだろうか? Mk3は少し分厚い印象があり、Mk4は21世紀初頭の典型的な、ファッショナブルで複雑なスタイリングを採用している。嗜好の変化に伴い、これからシンプルなデザインに移行していくことは間違いないだろう。
初期のモデルにはこうした問題はないが、Mk1はほとんどの場合、目を閉じて走っているように見える(他のリトラクタブルヘッドライト搭載車と同様)。したがって、Mk2を選ぶしかないだろう。
ミニ
優れた実用性、巧妙なエンジニアリング、そして競技用車両としてのポテンシャルを秘めていたミニだが、その完璧な外観がなければ、1960年代の英国を象徴するクルマにはならなかっただろう。
1974年にイノチェンティ・ミニが登場した時点では、すでに時代遅れとなっていた。クラブマンと1275GTにはフラット形状のモダンなフロントエンドが採用されたが、1980年に廃止された。オリジナルのデザインは、その後20年間にわたってファンを魅了し続けた。
ナッシュ・メトロポリタン
メトロポリタンは、ハドソン社と合併してアメリカン・モーターズ・コーポレーション(AMC)となった会社が米国市場向けに開発したクルマだが、これまでで最も米国らしさに欠けるクルマの1つである。
そのデザインには、攻撃性や高級感はなく、作家ジャック・ネラッド氏が「時代を超越した、愛らしい質感」と表現した、まるで「子猫のように愛らしい」クルマだ。さらにややこしいことに、メトロポリタンは米国ではなく、英国のオースチンによって生産されていた。1954年から1962年まで、オースチン、ハドソン、ナッシュの各ブランドから世界中で販売された。
NSUスパイダー
NSUプリンツのややずんぐりしたセダンボディから、ベルトーネがデザインした美しいNSUスポーツプリンツというクーペが生まれ、さらに美しい小型コンバーチブル、スパイダーへと発展。1964年から1967年まで生産された。
スパイダーは、フェリックス・ヴァンケル氏(1902-1988)の設計によるロータリーエンジンを搭載した最初の量産車として知られている。ロータリーに最適なメガホン型エグゾーストを装備した競技仕様のスパイダーは、無邪気な子犬のような外観とは裏腹に、機関銃のような爆音を轟かせる。
プジョー205
1983年に205が発売された当時、プジョー車のイメージは、愛らしさとは少し距離かあった。そのため、シンプルでありながら非常にチャーミングな新しい小型ハッチバックは、大きな驚きとともに迎えられた。
GTiであろうと、3ドアであろうと5ドアであろうと、205の外観はとても良かった。プジョーをよほど嫌いでない限り、このクルマに恋をしないのは難しいだろう。
プジョーは205以来、これほど楽しいハッチバックは作っていないが、他のメーカーも同様だ。
ルノー・ドーフィン
フィアット500が1950年代の欧州で最も愛らしい小型リアエンジン車だとしたら、ドーフィンはそれに次ぐ2番手だろう。前身の4CV(英国では750として販売)よりスタイリッシュで、後継のルノー8ほど箱型ではなく、ルーフからフロア、バンパーからバンパーまで美しいデザインだ。これをベースにしたカブレルというカブリオレ仕様も間違いなく美しいが、チャーミングという点でいえばドーフィンに軍配が上がる。
ルノー・トゥインゴ
トゥインゴには3つの世代があり、そのすべてがそれぞれ独自の魅力を持っている。しかし、本当に恋に落ちるのは初代だ。
小型で安価、飾り気のないクルマ(一般的にフランスのメーカーが得意とするタイプ)で、とても幸せで笑顔に満ちた外観だ。右ハンドル仕様が構造的に設定できなかったため、英国では正規販売されなかったが、それでも輸入されることはあった。
サーブ92
92の風変わりで非常に特徴的な外観は、安全性、空力効率、構造的な剛性に真剣に取り組んだ結果生まれたものだ。今ではチャーミングで当たり障りのないものに見えるが、当時のサーブ車はラリーカーとしても大成功を収めていた。
サーブは1960年代後半に99を発売し、新たなデザインフェーズに突入したが、92の基本形状は後継車の96が1980年に生産終了するまで、31年間にわたって受け継がれた。
スマート・フォーツー
スウォッチの試作車から派生し、当初は単に『スマート』と呼ばれていたダイムラーの非常に短い2シーター車。巧みなエンジニアリング、あるいは愛らしい外観、あるいはその両方によって人気を博した。
スポーツカーモデルのロードスターや、量産化に至らなかったSUVのフォアモアなど、さまざまな分野への展開を試みたが、商業的には大失敗に終わった。その後、フォーツーとホイールベースを延長したフォーフォーの2車種を導入したが、いずれも1990年代のオリジナルのコンセプトを忠実に継承している。
タン・フア・ブック・オブ・ソングス
中国の自動車ブランド、タン・フア(Tang Hua)は、2008年のデトロイトモーターショーに3台の鮮やかなイエローのEVコンセプトカーを出展した。ピース・オブ・クラウド(Piece of Cloud)と水陸両用のデトロイト・フィッシュ(Detroit Fish)も興味深いクルマだったが、ブック・オブ・ソングス(Book of Songs)は、まるで子供向けアニメからそのままショー会場にやって来たかのような外観だった。
自動車史上最もチャーミングなクルマとは言い難いかもしれない(その評価は人それぞれだろう)が、最もチャーミングな車名の1つであるのは間違いない。
フォルクスワーゲン・ビートル
初代ビートルのデザインが販売実績に与えた影響は、極めて大きなものだ。1960年代のヒッピー世代の人々にとって、アドルフ・ヒトラーの命令によって設計されたクルマであることを忘れさせるほどだった。かの独裁者の価値観を共有する人は、その世代にはいなかっただろう。
フォルクスワーゲンは1997年と2011年にレトロなビートル(ニュービートルとザ・ビートル)を発売した。しかし、どちらのモデルも、新型フィアット500のようにオリジナルの本質を再現することはできなかった。
フォルクスワーゲン・カルマンギア
フォルクスワーゲン・ビートルのクーペおよびコンバーチブル仕様は、ボディを手作業で組み立てたカルマンと、スタイリングを担当したイタリアのデザイン会社ギアにちなんで名付けられた。ギアの設計によって、おそらくフォルクスワーゲン史上最も美しいモデルに仕上がったと言えるだろう。
後に、フォルクスワーゲンとブラジルの子会社によって、さらに2種類のカルマンギアが開発された。どちらも興味深いクルマだが、初期のような愛らしさはなかった。
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みんなのコメント
が、それも大人4人が座れて必要最低限の動力性能、副次的に荷物の搭載能力もある…と、今で言う軽ハイトワゴンのような使い勝手を突き詰めるとあの形になった。説得力があったのだ。