世の中には数多くのクルマが存在するが、完璧なクルマなんてほぼない。だったら、欠点を補って余りある魅力を持つ「一芸一能」なクルマだっていいじゃない。不器用だからこそ放っておけない存在。そんな相棒なら一生ものになるかもしれない。
文:木内一行/写真:トヨタ、ホンダ、CarsWp.com
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「エコとは無縁の大排気量マルチシリンダー」 レクサス・IS
昨今のクルマではエコやダウンサイジングが推し進められ、電動化にも拍車がかかっている。
しかしクルマ好きにとってエンジンは、ロマンや刺激を与えてくれるもの。排気量の大きさや「V型」という響き、ターボやスーパーチャージャーといった過給機など、我々をワクワクさせてくれるのだ。
そんななか、「5リッターV8」という強烈なワードでクルマ好きをその気にさせたのが、ISの最強グレードとしてラインナップされていたIS500だ。
2013年に登場した3代目(国内では2代目)にIS500 Fスポーツパフォーマンスが追加されたのは、2022年のこと。
専用デザインのバンパーやフェンダー、ボンネットが採用されたボディには、5リッターV8の2UR-GSEを搭載。そのパワー&トルクは481ps/54.6kgf・mと強烈なスペックだ。
ミッションも先代IS Fから継承した8速スポーツダイレクトシフトとなる。さらに、AVS(減衰力可変ダンパー)や電動パワーステアリングにチューニングを施し、大径ローターを採用してブレーキもアップデート。そして、大排気量マルチシリンダーらしい豊かなトルクと圧倒的な加速、気持ちの良い伸びを味わわせてくれるのだ。
ただ、当然ながら税金は高いし燃費だって9km/L(WLTCモード)と圧倒的に悪い。しかし、今後は出てこないであろう5リッターV8を楽しむことを考えたら、案外とリーズナブルに思えてくるかもしれない。
「実用性は二の次、走りが楽しければヨシ!」 ホンダ・S660
2015年にデビューしたS660は、「走る喜び」の実現を目指して開発したマイクロスポーツだ。スポーツカーの醍醐味であるコーナリングの楽しさを最大限に味わえるよう高い旋回性能にこだわり、はじき出された答えがミッドシップレイアウトだった。
重量物であるエンジンをキャビンの後方、クルマの重心位置近くに配置することで45対55という理想的な前後重量配分を実現。慣性モーメントの最小化やトラクション性能の向上といったメリットを生み出した。
ロール時の姿勢にもこだわり、重心高とロールセンター高を最適化。旋回時のロールを抑えることで、タイヤをしっかりと接地させて安定感の高い走りを実現したのである。
エンジンはNシリーズにも搭載される直3ターボだが、新設計のターボチャージャーでレスポンスアップ。6MTはクロスレシオ&ワイドレンジ化、CVTは7速パドルシフト付きとし、エンジンパワーを目一杯使った走りが楽しめる。
このように、スポーツカー然としたパッケージングと気持ちの良いエンジンで走りは痛快そのもの。
ただ、当然ながらドライバーの他には1名しか乗れないし、荷物だってボンネットの下に少し入る程度。しかも熱を持つからあまり温度にシビアなものは入れられず、ロールトップを収納するとそれだけでいっぱい。実用性はかなり低いのだ。
しかし、S660にはそういった不便さをカバーするだけの楽しさがある。これほど走りに特化した軽自動車、今では唯一無二の存在だ。
「小ささこそ正義を体現したコミューター」 トヨタ・iQ
多くの人が「小さいクルマ」と聞くと軽自動車を想像する。しかし残念なことに、軽自動車には質素だとかビンボーくさいといった印象を持っている人もいる。そんなネガなイメージを覆す小さなプレミアムカーがiQだ。
新規開発したプラットホームを使ったボディは、登録車ながら全長2985mm、全幅1680mm、全高1500mmというマイクロサイズ。
これをベースに、エンジンに対してタイヤを前に出してフロントオーバーハングを短縮したり、ステアリングギアボックスの上方配置によってエンジンルームをコンパクト化。
さらに、フラットな燃料タンクを床下に設置し、小型化したエアコンユニットをインパネ中央に収めるなどの工夫を施すことによって超高効率パッケージを実現。
ミニマムボディながら、独自のデザインでプレミアムカーらしい存在感や上質感も演出している。
エンジンは当初こそ1リッター直3のみだったが、デビュー翌年には1.3リッター直4エンジンを追加し、ゆとりの走りを手に入れた。
その一方、超高効率パッケージとはいえ室内空間は物理的に限りがある。4名定員ではあるものの(2シーターもあり)実質的には2シーターだし、軽自動車と比べると維持費も高い。そのため、新たなシティコミューターとして定着することはなかった。
しかし、3mという全長は軽自動車より40cm以上短いし、3.9mという最小回転半径も軽自動車より圧倒的に小さい(N-BOXで4.5m)。この取り回し性や扱いやすさはオンリーワンだ。
「速さよりも見た目で勝負するスーパーカー」 光岡自動車・オロチ
クルマを選ぶ基準は人それぞれ。なかでも「デザイン」や「ルックス」で選ぶ人は多く、欧州のスーパーカーに憧れを抱く人もいるだろう。そんな人たちのハートに刺さるのがオロチだ。
2001年の東京モーターショーで参考出品され、反響の高さから市販化されたオロチは、国内10番目の乗用車メーカーである光岡自動車が2006年に販売したスーパーカーだ。
見どころはなんといっても強烈なビジュアル。その名のとおり、ヤマタノオロチにちなんだエクステリアはとにかく独創的で、担当デザイナー曰く「クルマのデザインではなく蛇の彫刻を作ろうと思った」とのこと。ワイド&ローのプロポーションは欧州スーパーカーにも引けを取らないほどの存在感を放つ。
ただし、走りはその見た目と対照的。シャシーは自社設計のスペースフレームだが、ミッドシップに搭載されるエンジンは北米でSUVなどに搭載されるトヨタ製の3.3リッターV6で、ミッションは5ATのみ。
メーカー自ら「ファッションスーパーカー」と言い切ってしまうことからも分かるように、パワートレイン自体は至ってフツーで、見た目はそれっぽいがスーパーカー級の運動性能はまったく望めないのだ。
とはいえ、500psも600psもあるスーパーカーだって、公道でその実力を発揮することは不可能。それなら、見た目重視のオロチだって心を満たしてくれるはずだ。
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