フランクフルト・ショー2019(プレスデイ:2019年9月10日、11日)には、モータースポーツ関連の車両や部品も展示された。
しかし、いつもF1マシンを展示するフェラーリやルノーやWRC(世界ラリー選手権)マシンを展示するシトロエン、そしてWEC(世界耐久選手権)参戦マシンを展示するトヨタは今回、出展していない。そのため、2017年の前回は30点超のモータースポーツ関連マシンや部品をカメラに収めたが、今回はわずか15点である。半減だ。
どこもかしこも電気だらけ! フランクフルト・ショー2019レポート【第1弾:EV編】
2017年のフランクフルト・ショーのフェラーリ・ブースには、F1マシン(当時)が展示された。前回はエンジンだけを搭載したWRCマシンや、市販車をベースにしたGT3カーなどが散見されたものの、今回確認したマシンはほぼ100%電動モデルだった。駆動力をモーターだけに頼るマシン(つまり電気自動車)か、エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッド・マシンに限られた。
ちなみに、多くのブースが市販の電気自動車(EV)やEVのコンセプトカーを前面に押し出していたのも印象的だった。「市販車もEVなら、モータースポーツもEVで」というメッセージのようだ。
ポルシェもフォーミュラEに参戦!たとえばBMWは、2017年のフランクフルト・ショーでWECとアメリカのIMSA(ユナイテッド・スポーツカー選手権)に参戦する「M8 GTE」を初公開した(しかし、WECはわずか1シーズンで撤退)。M8はちょっと見せただけで引っ込め、「M4 GT4」(GT3よりも改造範囲が狭く、より市販車に近いカテゴリーのマシン)を常時展示していた。両者ともにガソリン・エンジン搭載のマシンである。
一転、今回のフランクフルト・ショーでは、2018/2019年のシーズン5から参戦したフォーミュラEのマシン、「iFE. 18.」のみを展示した。
BMWのフォーミュラE参戦マシン「iFE. 18.」。ポルシェ・ブースの主役は、2019年9月4日に発表したばかりのフル電動4シーター・スポーツカー「タイカン」だったが、あわせてフォーミュラE参戦マシンも展示した。ポルシェは12番目の参戦チームとして、2019年11月22日に開幕するシーズン6(2019/2020年)からフォーミュラEに参戦する。その参戦マシン「99Xエレクトリック」が展示された
BMW iFE. 18.とポルシェ99Xエレクトリックを見比べればわかるように、フォーミュラEマシンのエクステリアは共通である。F1のように、ウイングなどの空力パーツを独自開発出来ないルールだからだ。ゆえに、カラーリングで差別化を図るしかない。BMWは左右非対称のデザインにして個性を主張し、ポルシェは白/赤/黒の最新ワークス・カラーを身にまとう。
ポルシェのフォーミュラE参戦マシン「99Xエレクトリック」。スタイリングはBMW iFE. 18.とおなじ。カラーリングは異なる。ちなみにポルシェは、2017年限りでWECの最上位カテゴリーであるLMP1から撤退(「911 RSR」で参戦するLMGTEカテゴリーへの参戦は継続中)している。今後は、ワークス活動の軸足をLMP1からフォーミュラEに移すという。919ハイブリッドから99Xエレクトリックの開発に移った電動系のあるエンジニアは、今回のショーとは別の機会に、「技術的にはフォーミュラEのほうが格段にイージー」と、話して片目をつぶった。自信満々のようだ。11月の開幕戦が楽しみである。
ジャガーとアウディもEVへフォーミュラEの展示はまだある。ジャガーはシーズン5(2018/2019年)を戦った「I-Type III」を展示。フォーミュラEと併催するワンメイク・レースのマシン「I-PACE eTrophy」も横に並べていた。近くには、もとになる市販版「I-PACE」のシャシーが置いてあり、バッテリーやモーター、インバーターの配置がわかるようになっていた。ブース全体でEVを推していたのが印象的だった。
ジャガーのブースに展示されたフォーミュラE参戦マシン「I-Type III」(手前)と、「I-PACE eTrophy」(奥)。アウディはシーズン6を戦うフォーミュラEの最新マシン「e-tron FE06」をブースの壁に張り付けていた。ちなみに、前回のフランクフルト・ショーでは、ドイツのメガサプライヤー、シェフラーのブースにアウディのフォーミュラEマシンが展示されていた。
なぜなら、アウディとシェフラーは手を組んでいるからだ。ちなみにチーム名は「Audi Sport ABT Schaeffler Formula E Team」である。
アウディブースの壁に展示されたフォーミュラE参戦マシン「e-tron FE06」。シェフラーは、シーズン1(2014/2015年)からアウディと組んでフォーミュラEに参戦している。また、モーターとインバーター、ギアボックスの開発が認められるようになったシーズン2 (2015/2016年)から、シェフラーは専用システムの開発をおこなっている。ところが、シーズン5からアウディ色が強くなり、チーム名に名前は残るものの、シェフラー色は薄くなった。
フォーミュラーEは当初、サプライヤーやベンチャー系企業が参戦し注目を集めたが、シーズンを重ねるにつれ、自動車メーカーの代理戦争の様相を強め、サプライヤーやベンチャー系企業の陰が薄くなってしまった。シェフラーからアウディにフォーミュラEマシンの展示場所が移ったのは、自然な流れかもしれない。
リアウイングなどにシェフラーの名が刻まれる。メルセデス・ベンツもブレンボもフォーミュラE一色メルセデス・ベンツは、プレスデイ2日目の16時にプレスコンファレンスを実施し、シーズン6から新規参戦するフォーミュラEマシン、「EQシルバーアロー01」の正式カラーリングとドライバーを発表した。
メルセデス・ベンツは2018年限りでDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)から撤退し、フォーミュラEに注力している。シーズン5は、DTMで有力チームだった「HWA」を送り込み参戦したが(HWAはAMGのレース部門が独立して誕生したチーム)、シーズン6は、実質的にHWAをメルセデス・ベンツの看板に掛け替えての参戦だ。メルセデス・ベンツとしては初参戦になるが、実質的には参戦2年目である。
メルセデス・ベンツのフォーミュラE参戦マシン「EQシルバーアロー01」。EQシルバーアロー01を操るS・ヴァンドーン選手(写真右)と、N・デ・フリース選手(写真左)。ドライバーはF1参戦経験のあるS・ヴァンドーン選手と、現在、F1直下のF2でランキングトップを独走するN・デ・フリース選手の2名。F2で実力を示したものの、F1に上がらず、フォーミュラEを選択するあたり、新興EVレースの隆盛ぶりがうかがえる(それとも、メルセデスの庇護のもとに育てば、いずれF1への道が開けるとの打算か?)。
今回のフランクフルト・ショーは、モータースポーツ関連の展示こそ半減したものの、フォーミュラEの展示は前回の3台から5台に増えた。ブレーキシステムメーカーのブレンボは、前回のショーでF1向けブレーキシステムを展示していたが、今回のショーでは、シーズン5から共通部品に指定されているフォーミュラE用のブレーキシステムを展示していた。フォーミュラEの盛り上がりをひしひしと感じたフランクフルト・ショーだった。
文と写真・世良耕太
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