「マイ・ナンバーワン・ポルシェ」を選んで欲しいという原稿依頼を受けたとき、ちょっと困惑した。というのも、ポルシェというブランドに対して個人的にはそれほど賛同しているわけではなかったからだ。
スポーツカー好きであり、サーキットでレースもしている筆者ならば、きっとポルシェが大好きなはず……と、考えて原稿を依頼してきたかもしれないが、実際のところは違う。スポーツカーの最高峰として君臨している「911」でさえ、いつかは乗ってみたいという思いが多少あるものの、私財のすべてを投じて購入しようというような熱い想いはない。
その理由はハッキリしている。なぜなら、911の走りが自分の感覚にしっくりこないからだ。言わずと知れたリアエンジン・リアドライブのRRレイアウトは、トラクションもブレーキングも得意とするところであり、その魅力は十分に把握している。ハードな走りをすればするほど、ほかのレイアウトでは到底追いつくことのできないものがあると思う。サーキットのように、急加速や急減速が続く環境になれば、まさに水を得た魚状態になるはずだ。
けれども、僕らが普段走る一般的なステージではどうか? フルにトラクションもブレーキングも与えない環境下では、その魅力が薄くなるのでは? それが僕なりの推論であり、ハートを撃ち抜かれるようなことが無かったのだ。
しかし、たった1台のポルシェに乗った瞬間、一瞬にしてポルシェに対する思いが一変した。そのポルシェとは「987ボクスタースパイダー」である。
911のようにRRではなく、ミドシップレイアウトを採用したボクスター。987ボクスタースパイダーは、軽量化を徹底したモデルだ。ソフトトップは手動となるうえ、かなりの手間をかけて丁寧に折り畳み、エンジンフード前にしまい込まなければならない簡易な幌に換装されている。
くわえて、ソフトトップの骨格にはカーボンを奢るなど、細部にわたって軽量化を実施。さらには2脚のバケットシートもカーボン製だ。一方、ドアパネルと前後フードはアルミ製。このあと、2012年登場の981型ボクスターからドアも前後フードもアルミになったけれど、987ではそれはスパイダーだけの特別仕様で、こうしたもろもろの対策の結果として、987ボクスタースパイダーはベースモデルに対し約100kgの軽量化を果たした。
おかげで動き出しからとにかく軽やかだ。重たいものがグッと動き出す瞬間の応答遅れはなく、スッと前に出る感覚はダイエットの効果だ。クラッチをミートする瞬間からして手足のように自然な動きを見せる。
アクセルをわずかに踏み込んだり放したりするだけで、前後のピッチをコントロールことができる。ということは、思いのままに荷重をコントロールできるということで、そこが魅力だ。このボクスター・スパイダーには「PASM」(ポルシェ・アクティヴ・サスペンション・マネジメント)という電子制御のアクティブサスペンションは搭載されず、そのサスは約15mm低められたメカ・サスだ。いわば化学調味料を一切排したようなものだけれど、だからこそ、まさに思いのままの動きを街中から高速までで十分に味わうことができる。
とくに中~高速コーナーが連続する高速道路での一体感はすばらしい。前荷重とも後荷重ともいえないような状況での走りがとにかく心地いい。自らが“やじろべえ”の中心にいるようなバランス感覚といえばいいのか、いずれにせよ、それははたまらないほどの快感だ。
また、サーキット走行を前提にしたモデルと異なり、足まわりをガチガチにかためていないところも魅力である。荒れた路面からの入力を見事に吸収し、路面の不整をいなしながら姿勢をフラットい保つ。わだちの多い路面であったとしてもブレることなく突き進む直進安定性を有している。
「ケイマンS」とおなじ、最高出力320psを発揮する水平対向6気筒エンジンも爽快だ。低回転からリニアに吹け上がり、高回転まで突き抜けるような回転フィールを生み出すこのエンジンは、ボクスターS比わずか10psしか強化されていないとはいえ、ボディが軽量なので、発進時だけでなく、中間加速においてもトルクのツキが良く、いつでもどこでも臨戦態勢になれる。とはいえ、パワーがシャシーを打ち負かすほど強大というのでもないので、恐怖は覚えない。たんに快感を覚えるだけだ。
驚異的なタイムを叩き出すわけでもないボクスタースパイダーは、しかし、人間に寄り添ったオーガニックな仕上がりが魅力なのである。また、オープンエアで走れば、日常域から運転の楽しみを味わえる。そのうえ、ポルシェならではの骨太な質感がある。ステアリング・フィールからペダル・フィールまで一体感に溢れている。というわけで、長年の僕の「ポルシェ嫌い」を正してくれた初代ボクスタースパイダーこそ、僕にとってのマイ・ナンバーワン・ポルシェである。
<著者プロフィール>
橋本洋平(はしもとようへい):自動車雑誌の編集部を経て、2003年からフリーランスとして活動を開始。「GAZOO Racing 86/BRZ Race」をはじめ、さまざまなレースに現在も参戦し好成績を収める。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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