ホンダ シビックのトップグレードといえば、お馴染み「タイプR」。日本仕様のシビックは、セダン/ハッチバックの標準グレードとタイプRをラインナップしている。ところが、北米仕様のシビックには、なんと懐かしのグレード「Si」が今も設定されているのだ!
この北米仕様シビック Siセダンは、1.5Lターボエンジンで最高出力205馬力と、同173馬力の日本仕様に対して、その名にふさわしいパワーアップを遂げている。
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Si、SiRといえば、かつて日本仕様のシビックやCR-Xなどにラインナップされていたホットグレードだが、残念ながら日本ではこのグレードを持つホンダ車は現存していない。
タイプRやGTIなどは今も現役だが、「なくすなんてもったいない!」と言うべき消滅したホットグレードは、多くの車を“ひと味違う存在”に押し上げた、とっておきのバリエーションだった。
文:岡本幸一郎
写真:編集部、Honda、NISSAN
ホンダの“走りのグレード”「Si」、「SiR」
もともとスポーティなイメージがあったシビックの3代目が出てしばらくたった1984年に、高性能なZC型1.6L・DOHCエンジンを搭載した「Si」が追加されたのが最初となる。
全日本ツーリングカー選手権などでも活躍し、高性能イメージが一気に浸透。その後、シビックだけでなく、プレリュード、アコード、インテグラ、CR-Xなどにも設定された。
シビックやインテグラには、より走りに特化した「SiR」というグレードも設定された。タイプRとどう違うのかが気になるところだが、タイプRがレーシングカーを市販車にしたようなクルマであるのに対し、SiRはあくまで市販車を究極的にスポーティにしたものというニュアンスであった。
ところがのちに、タイプRが一世を風靡すると、存在感が薄れ、いつのまにか消滅した。しかし、北米向けのシビックには、今でも「Si」というグレードが存在する。
4WDターボの頂点グレード「GT-FOUR」
話題作の映画に登場して雪山を縦横無尽に駆け巡るさまを日本中に披露し、その後はWRCでも破竹の勢いを見せるなどして一世を風靡したGT-FOURは、FFへと変わり1985年登場の4代目ST165型、通称「流面形セリカ」に翌1986年に設定されたのが最初となる。
2L直4ターボエンジン(3S-GTE型)は最高出力185ps、最大トルク24.5kgmを発生。当時はまだ4WDの乗用車が少なく、各メーカーが有効なセンターデフの開発に苦慮するなか、トヨタはこのクルマに手動デフロック付きベベルギア式センターデフを初採用した。それが1987年のマイナーチェンジではビスカスカップリングに変更される。
続く1989年に5代目 ST185型にもGT-F0URはひき続き設定され、最高出力は225psに向上。リアデフに日本初のトルセンLSDを採用したのも特徴だ。
競技向けの「GT-FOURラリー」や、ブリスターフェンダーによりワイド化した「GT-FOUR A」、WRCホモロゲモデルの「GT-FOUR RC」などもラインアップされた。
続く1994年登場の6代目では、255psまで出力が向上。セリカにGT-FOURが設定されたのはそこまで。7代目はFFのみとなり、それを最後にセリカの名は途絶えた。
その後にGT-FOURを名乗ったのはカルディナだ。
1992年に初代が登場するや、当時人気の高かったレガシィ ツーリングワゴンを尻目に、代を重ねるごとにスポーツワゴンとしての性格を強め、2002年に登場した3代目では「ザ・ツーリングマシン」を標榜するほどに走りのイメージを訴求した。
「GT-FOUR」の初期モデルには、フロントサスペンションに倒立式ダンパー、コイルバネ付きパフォーマンスロッド、リアにはモノチューブショックアブソーバー、レカロスポーツシートや本革巻きステアリングホイールするなど、なかなか気合いが入っていた。
熟成された3S-GTE型2L直4ターボは260ps、33.0kgmを発生。当時のトヨタとしては珍しくニュルで開発したことも強調していたが、アテが外れてあまりヒットすることもなく、ひっそりと生涯を終えた。
その後、GT-FOURを名乗るモデルは現れていないが、個人的には今ならC-HRなどにGT-FOURを設定すると面白いと思っている。
ブルーバードに設定された伝説の「SSS」
日産にとって双璧といえる歴史のあるネーミングの一方である「GT-R」は今でも存在するので良いのだが、一方の「SSS」は消滅してしまったことが惜しいと思わずにいられない。
その「SSS」誕生のいきさつというと、1965年に登場した410ブルーバードにおいて、「スポーツ・セダン」を意味する「SS」というグレードを設定したのがことのはじまり。
これは当時、海外でセダンに強力なエンジンを積み足まわりを強化したセダンが流行っていたことを受けてのものだ。
ところがそれでも販売は伸び悩み、日産ではマイナーチェンジでさらなる強力な「スーパー・スポーツ・セダン」を送り込んだ。これが「SSS」だ。その次期モデルである510ブルーバードでは、サファリラリー三冠という快挙を成し遂げた。
その後、SSSはブルーバードの走りの代名詞として連綿と続き、U14型がモデルライフを終える2001年まで存在した。
ただし、SSSはスポーティモデルとして位置付けられていたものの、U13型では「Sophisticated Sporty Sedan」、そのひとつ前のU12型ではデザインのコンセプトを示す「Simple Slim Smoothed」という意味合いで用いられていた。
今のシルフィではSSSを名乗るわけにはいかないのはわかるが、実は海外にはスポーティなシルフィもあったりして……。
S2000やインテグラに設定された「タイプS」
タイプRまでいかないなかで、スポーティテイストを与えたモデルに設定されたのがタイプSで、位置づけとしては、SiやSiRの生まれ変わりといえる。これまで、NSX、S2000、インテグラ、プレリュード、アコードなどに設定されてきた。
エンジンには手が入れられていないが、スポーティな形状のエアロパーツが装着されるなど、標準モデルとの識別は一目瞭然。シャシーが専用にチューニングされていて、ドライブフィールもスポーティになっている。こういうグレードを好む人は少なくないと思われる。
ちなみに、北米でもアキュラブランドの主要モデルでタイプSが復活している。日本でも、設定するに相応しい車種があまりパッと思い浮かばないところだが、S660あたりにあると面白いのでは。
超刺激的! ストーリア、ブーンの「X4」
かつて日本車にはこうしたホットグレードがいくつかあった中でも、「X4」はかなり特殊な部類に属する。ダイハツのストーリアと後継のブーンに、どちらも日本でのラリー参戦を念頭に競技向けのベース車として設定されたもので、なによりもエンジンの排気量が特徴的だ。
ストーリア X4は1000cc以下クラスのラリー参戦を目的として、当時は1.4だった過給係数を鑑みて軽自動用エンジンを713ccまで排気量を拡大。
一方のブーン X4は、前身のストーリア X4があまりに強すぎたため過給係数が1.7に変更されたことを受けて、1600cc以下のクラスへの参戦を想定して936ccとされた。こちらはYRV用の1.3Lエンジンを縮小したものだ。
特筆すべきは最初のストーリア X4の初期モデル(平成10年排ガス規制車)で、一般的には1kg/cm2台前半にとどまる過給圧をタービンのアクチュエーターに備わる調整ナットをいじると簡単に2.55kg/cm2までブーストアップできた。いくら競技向けとはいえ市販車でそんな数字は前代未聞という狂気のエンジンだったのだ。
ちなみに「X4」はJAF登録車両につき日本国内の競技のみ参戦可能で、WRCのようなFIA主催の国際競技には参戦できない。また、OEM供給されたトヨタ版のデュエットやパッソにはX4に相当するグレードの設定はなく、ダイハツ版のみだった。
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