伝説のミューズ、小林麻美が“ジェントルマン”について考える連載。 Vol.9では小林麻美が、クルマとの関わり方や愛車、そしてイメージモデルを務めたスズキ「アルト」などについて語る。
初めて買ったクルマは紺色のBMW
小林麻美が一番好きなクルマはジャガーだと言う。彼女が初めて手に入れたジャガーはブリティッシュグリーン、マボガニーのウッドトリムの内装にレザーシートと英国のエスタブリッシュメントを存分に感じさせる一台だった。
クルマの原体験は“飛ばし屋”の父の助手席から、以来、クルマとは乗り手の人となりを醸成させるエッセンスのひとつと考える。そしてクルマ選びとはジェントルなスタイルの探求でもあると。
「初めて買ったクルマは紺色のBMW『318i』でした。かわいかったな。私、免許を取ったのがそもそも26歳くらいだったのです。10代の頃にも教習所に通ったんですけど、挫折しちゃって、それからまた意を決して。友人の家が高輪のBMWディーラーの前にあって、そこを通るたびに、いつも見ていたの。やっと免許が取れたんで、『これください』って感じで買いました。たしか300数十万円くらい。自分のお金と会社から借りて手に入れたんです。
そのBMWで、最初に行った場所ですか? たぶん家の近所をあてもなくって感じだったと思います。私、運転するのは好きだけど、スピードが苦手で、長い間、クルマに乗っていますが、100km/hオーバーで走ったのは数えるくらい。本当にスピードがダメなんですよ。高速道路でも首都高では怖くて100km/hなんて出さないし、東名高速に乗っても、80km/hじゃ迷惑かなとなんとか100km/hくらい出してみたんですが、全然無理で、それ以来乗ってません(笑)。
私は一台のクルマを長く乗るたちなんです。このBMWも独身時代から結婚するまでとか乗っていましたから、12、13年くらいかしら。特に乗り換える予定もなかったのですけど、ある時走っていたら、後ろでクラクションをガンガン鳴らされて、『大変だぞ、ガソリンが漏れている』って言われて、停めて見たら。ガソリンタンクに穴が開いていて、泣く泣く廃車。今乗っている黒のメルセデス・ベンツのEクラスクーペも11年。その前はジャガーを何台か乗り継ぎました。ジャガーは今も一番好きなクルマですね。最初のジャガーはブリティッシュグリーン、マボガニーのウッドトリムにレザーシートという、まさにイギリスのエスタブリシュメントという感じ。とにかくよく壊れて止まってしまったりでした。手放さないで、直しながら乗っていればよかったなと今でも後悔しています。その後のジャガーは黒、そしてシルバー。私の愛車遍歴に赤、白、黄色はないみたい」
ベレットGTに憧れたころ父の助手席が私のクルマの原体験ですね。彼はシルバーグレーの『スカイライン』(日産)に乗って首都高速の鈴ヶ森のインターからアクセル全開でインからアウトへといつも飛ばしていました。かっこよかったな。そのせいか、GT系が好きだったみたい。学生時代もいすゞの『ベレットGT』とかが好きでした。クルマのよさは自分だけのパーソナルな空間が獲得できることかな。気ままにどこへでも行けるし、気が変わって行くのをやめることだってできるでしょ。好きな音楽を流して、東京タワーや六本木の街並みだとかおなじみの景色が流れていく。昔は六本木あたりに来るとアン・ルイスの『六本木心中』が無性に聴きたくなったけど、近頃は浜崎あゆみさん。『M』とか『SEASONS』とかが入ったCDが出てきて、それを手入れのカーステレオで聴いています。サブスクじゃなくてね(笑)。懐かしいし、いい曲ですよね。ちなみに、その前のジャガーのオーディオはオートチェンジャーでした。
クルマはパーソナルな空間なので勝手放題ですけど、いまはドラレコがついているじゃないですか。私、運転しながら独り言だったり、怒ったりと人格が変わっちゃうみたい。事故でも起こしたら、そういう行儀の悪さが全部ドラレコの収められているから、きっと晒されちゃいますね。それがなにより心配で(笑)。
父に限らず男の人ってみんなクルマが好きですよね。知り合いが最近、アストンマーティンを買ったんですって。とても嬉しそうに報告してくれたんですけど、かわいですよね。ちょっと見てみたいです。なんといっても、アストンマーティンといえばジェイムズ・ボンドですから。クルマは洋服と同じで、その人に似合っているというのが肝心です。
昔、ムッシュ(故かまやつひろし)が乗っていた『ミニクーパー』は、彼らしかった。最近だと、『パーフェクト・デイズ』で役所広司さんが演じる平山さんの軽バン、あのシーンは軽バンだから味わいがあるのでしょうね。私はポルシェも好きですけど、自分には似合ってないような気がします。なんかスポーツカーというより、のんびり走っているほうが私らしい。事実、ジャガーとかに乗っている時は、どんなに運転がトロくても煽られたりしませんでしたから(笑)。
軽自動車といえば、以前スズキ『アルト』のCMの海外ロケがあったんです。ディレクターが普通に『麻美さん、ここを運転して走ってください』と、言われたんですけど、それがマニュアルで。私、オートマしか乗っていなかったから、ずっとローで引っ張って運転していました。ひどいものでしょう。そのアルト、『麻美スペシャル』という特別仕様車まであったのです。時代ですよね。 あっ! そのアルトは赤でした(笑)。
今、欲しいクルマねー、昔のクルマがいいかな。お金に糸目をつけずにくださるなら、アメリカの雑誌で見た昔のジャガーの2シーター。シルバーグレーできれいにレストアされて4,800万円でした。現実的にはやっぱり最後はポルシェかな。歳をとって、白髪で運転すれば私にも似合うかもしれません。色ですか? うーん、黒かグレーの車体に真っ赤なシートがいいかも。なにかいいクルマを見つけてくれたら教えてください」
小林麻美(こばやしあさみ)1953年生まれ、東京都出身。1972年「初恋のメロディー」で歌手デビュー後、資生堂、パルコなどのCMが話題に。1984年には松任谷由実がプロデュースした「雨音はショパンの調べ」が大ヒット。1991年、妊娠、結婚を機に引退。25年の時を経て、2016年ファッション誌『クウネル』(マガジンハウス)の表紙で復帰。
【連載バックナンバー】
Vol.1 坂東玉三郎と父
Vol.2 太宰治「斜陽」に登場する“お母さま”が、私にとってのジェントルウーマン像。
Vol.3 人生の名場面はいつもイヴ・サンローランとともに
Vol.4 昭和のカリスマたちから発する甘く危険な香り
Vol.5 今も色あせない、キラキラとしたTOKYOの記憶
Vol.6 「雨音はショパンの調べ」とピアノ
Vol.7 ユーミンとジェーン・バーキン
Vol.8 超一流のクリエイターの魔術
文・古谷昭弘 写真・藤田一浩 ヘア・松浦美穂(TWIGGY.) メイク・COCO 編集・稲垣邦康(GQ)
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