■いざというときの悪路走破性を誇る「クロカン」
1980年代後半のバブル期から2000年前後には、多くの「クロスカントリー4WD(クロカン)」が登場しました。
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とくにスキーブームの頃は冬の高速道路での渋滞や、スキー場の駐車場でたくさんのクロカンを目にするなど、非常に人気があったのです。
そこで今回は、一世を風靡したタフなクロカンを5台ピックアップして紹介します。
●三菱「パジェロ」
クロカンのコンセプトを確立したのは、1940年代に開発された小型4WD車「ジープ」だといえます。
そのジープを戦後ライセンス契約で製造していた三菱でしたが、より乗用車に近い使い勝手の良さや、快適性を追求したクロカンの開発が進められていました。
それが、1982年に誕生したのが「パジェロ」です。ボディサイズは全長3930mm×全幅1680mm×全高1865mmで、まさにジープのコンセプトに忠実な小型4WDとして登場。「メタルトップ」と「キャンバストップ」の2種類のショートボディが用意されました。
搭載されたエンジンは、2リッターガソリン、2.3リッターディーゼル、2.3リッターディーゼルターボの3種類でしたが、当初は貨物(商用車)扱いとされていました。
翌年1983年には5ナンバーボディの乗用登録モデルと3列シート&ハイルーフ化されたロングボディが追加され、ここからパジェロはクロカンブームのけん引役となっていきます。また1985年にはATモデルも追加され、さらに扱いやすくなりました。
パジェロの名前を一躍スターダムに押し上げたのは、当時世界一過酷といわれた「パリ・ダカールラリー」での大活躍でしょう。
1983年には「市販車無改造クラス」でクラス優勝を飾り、1985年には総合優勝。その後も参戦を続け、計12回もの総合優勝を飾ったことで、乗用車の乗り心地と圧倒的な悪路走破性を兼ね備えるクロカンの代表格として人気を博します。
1999年になると、シャシはラダーフレーム・ビルトイン・モノコックボディへと変更され、さらに乗用車テイストを盛り込みましたが、時代はクロカンからミニバンやSUVへと主役が移行しており、人気は下降線を辿っていったのでした。
●トヨタ「ランドクルーザープラド」
1980年代からはじまったアウトドアブームに乗って、多目的4WD車の総称として「RV(レジャービークル)」という呼び名もありました。
レジャーな雰囲気を強調して一世を風靡したのが、1990年に誕生したトヨタ「ランドクルーザープラド」です。
ランドクルーザープラドは、ヘビーデューティモデル「70」の派生車種「ランドクルーザーワゴン」をさらに乗用車ライクなデザインを採用したライトデューティモデルとしてデビュー。
2.4リッターと2.7リッターのガソリン、2.4リッターディーゼルターボというエンジンが用意されました。
ボディは3ドアと5ドアがラインナップされ、2ドア車は全長3975mm×全幅1690mm×全高1885mmというボディサイズで存在感を保ちながら、都会的なデザインをいち早く導入したことで多くのドライバーから支持を集める人気モデルとなりました。
乗用車的な使い勝手の良さと本格的な悪路走破性を併せ持ち、それでいて日常の足としても十分活用できる快適性を備えたオールマイティさは、クロカンの入門モデルとして最適なモデルでした。
●いすゞ「ビッグホーン」
いまではトラックを主力としたメーカーとして認知されているいすゞですが、かつてはトヨタ、日産に次ぐ乗用車メーカーでした。
いすゞには名車が多いといわれていますが、「ビッグホーン」も熱狂的なファンを持つクロカンです。
1981年のデビュー時は全長4120mm×全幅1650mm×全高1815mmのショートボディと、ホイールベースを350mm延長したロングボディの2種類のボディと、ソフトトップかメタルトップという計4種類の形状を用意。
搭載されるエンジンは、2.2リッターディーゼルターボ、2.8リッターディーゼル、2リッターガソリンの3種類をラインナップしていました。
初代ビッグホーンは、当時「クロカンの王様」といわれていた初代「レンジローバー」によく似たルックスだったことは、良くも悪くも話題になりました。
また、7:3の分割式観音開きスタイルのリアゲートを持つことも特徴です。
そんなビッグホーンですが、いまいち主役になりきれなかったモデルだといえます。
飛び抜けてハイパワーでもなく、洗練されたとはいえ無難なデザインなど、「ビッグホーンだからこそ」というセールスポイントが少ないのが残念なところでした。
■日産やランドローバーのクロカンとは?
●日産「テラノ」
1982年のパジェロのヒットで、一気に人気に火がついたクロカン市場ですが、ライバルたちが次々と登場するなか、日産が送り出したのが「テラノ」です。
初代は1986年に「ダットサントラック」をベースに、全長4365mm×全幅1690mm×全高1680mmサイズの2ドアボディに、2.7リッターディーゼルエンジンを搭載していました。
トラックをベースとしながらも、各所の出っ張りを極力減らし、シンプルながら美しいデザインを採用。ライバルと比べて低めのスタイルを実現させています。
またインテリアも、ファブリックのルーフトリムを採用するなど、それまでの4WD車とは違う乗用車テイストを盛り込むことで、他車と差別化を図っていました。
1995年には、電子制御式フルタイム4WD機構「オールモード4×4」を採用した2代目へとフルモデルチェンジ。
運転席エアバッグやABSも標準装備化されるなど進化しましたが、時代はミニバンや乗用車ベースのSUVへと主役が移り、さらには「ムラーノ」が登場したことで、テラノは2002年に国内での販売が終了しました。
●ランドローバー「ディスカバリー」
「クロカンの王様」「英国王室ご用達」など絶対的なブランドであり続けたレンジローバーのノウハウをつぎ込み、コストダウンと販売力アップを目指したモデルが初代「ディスカバリー」です。
全長4539mm×全幅1793mm×全高1966mmというボディに、3.5リッターV型8気筒ガソリンと2.5リッターディーゼルターボエンジンを搭載。デビュー自体は1989年でしたが、日本に正規輸入が開始されたのは1991年でした。
新車価格は当時のレートで400万円を超えていましたが、1994年にランドローバーは、輸入車価格ではなく日本車と同程度まで価格を引き下げるキャンペーン「フェアプレー政策」を展開します。
なかでも「グレードS」という廉価グレードは、299万円という国産車と変わらない価格設定となったことで、一気に国内での知名度をアップさせることに成功しました。
なおディスカバリーは、ホンダ(ベルノ店)でOEMモデル「クロスロード」として販売されました。
※ ※ ※
クロカンが全盛だった時代は、まだ環境性能はそれほど重要視されておらず、オンロードとオフロードの走行性能を高い次元で融合させるかに考えをめぐらせていました。
いまではシティ派のSUVがブームになっており、クロカンはだいぶ数を減らしていますが、悪路を軽々こなすクロカンは、頼りになる存在だといえるでしょう。
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