13・18年目の車税と損益分岐点
「古いクルマは税金が高くなるから損」――と考える人は少なくない。確かに初度登録から一定の年数が過ぎると税負担は重くなる。しかし、その増税分だけで損得を割り切ることはできない。
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2026年度の税制改正では自動車取得時の税負担が見直されたものの、一定年数を経過した車両に対する重課制度はそのまま維持された。これだけを見ると古いクルマは不利に思える。だが、車両価格や今後の保有予定年数、修理費、そして燃費まで含めた総コストから総合的に判断しようとする見方が広がってきた。
新車価格の高騰や納期の長期化を背景に、中古車市場全体で価格の高止まりが続いている。そうしたなか、あえて低年式車を選ぶユーザーも珍しくない。購入時の初期費用と日々の維持費を合わせたトータル費用で価値を測る動きが定着し、低年式車が合理的な選択肢として存在感を増しているのだ。
13年・18年という制度上の節目を正しく理解しておけば、そのまま乗り続けるべきか、買い替えるべきか、自分のライフスタイルに合わせて見極められるはずだ。
2026年税制改正と13年ルール
2026年度の税制改正により、自動車の取得時や燃料にかかる税金が大きく動いた。消費税との二重課税が長年指摘されてきた環境性能割が廃止され、1974(昭和49)年から上乗せされてきたガソリンの暫定税率も完全になくなった。背景にはユーザーの強い不満がある。日本自動車連盟(JAF)が2025年に実施した調査によれば、自動車保有者の98.8%が税負担を重いと感じ、84.6%が暫定税率などの上乗せに反対していた。
こうした重い負担感を和らげる措置が取られた半面、環境性能に優れたクルマへの乗り換えを促す重課制度やグリーン化特例は維持された。つまり、ひとつの車両に長く乗り続ける人に対する課税の基本的な枠組みは変わっていないということだ。
ただ、制度が導入された当時と今とでは、クルマを取り巻く技術や社会環境が大きく異なる。自動車メーカーの防錆技術や構造の耐久性が上がり、初度登録から10年、15年を経過しても十分な品質と安全性を保つ車両が増えた。一台を長く大切に乗るスタイルはすでに定着しており、13年を超えたクルマが街を走るのはごく当たり前の光景である。
同時に、社会全体でサステナビリティ(持続可能性)への関心が高まり、しっかりメンテナンスを施して良質なものを長く使う考え方も根付いてきた。確かに重課制度は最新のエコカーへの乗り換えを促す役割を担っているが、古いクルマの本当の価値は税額という数字だけで測りきれない。実際のカーライフ全体を見渡して捉える視点が求められる。
13年・18年目の重課税率と対象車種
初度登録から一定の年数が過ぎたクルマには、自動車税(種別割)と自動車重量税の重課制度がのしかかる。
具体的に見てみよう。自動車税(種別割)は、ガソリン車とLPガス車なら13年超、ディーゼル車は11年超のタイミングでおおむね15%引き上げられる。軽自動車税も13年を超えると約20%の増税だ。また、車検のたびに納める自動車重量税は、13年超と18年超の2段階で重くなる。クルマの重さは変わっていないのに税金だけが跳ね上がる点に戸惑うかもしれないが、ここには環境負荷の少ない最新型へ乗り換えさせようという国の思惑が働いている。
気をつけたいのは、すべてのクルマが一律に増税されるわけではない点だ。電気自動車(EV)をはじめ、燃料電池車(FCV)や天然ガス車、それに多くのハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)などは、この重課措置から外されている。
動力源(パワートレイン)の違いによる税制上の扱いの差は、中古車市場での価値(残価)にも影響を及ぼす。税制優遇が続く電動車やハイブリッド車は維持コスト面で有利なため、価格の値落ちが緩やかになりやすい。どんな技術やエンジンを積んでいるかによって、将来の出費がはっきりと分かれるのが今のクルマ社会の現実だ。
古い中古車における損得の実態
重課制度によって税金が上がるのは紛れもない事実である。しかし、増税されるという一点だけで古い中古車に乗るのは損だと決めつけるのはいささか早計だ。
ひとつの例を挙げたい。2026年に車検を迎える2013(平成25)年登録のトヨタ・VOXY(非エコカー)を想定する。この場合、車検時に支払う自動車重量税は3万2800円から4万5600円に上がる。さらに18年を超えれば5万400円に達し、長く乗るほど財布へのダメージは増していく。
ところが、視点を車両価格に移すと別の顔が見えてくる。ユーカーパック(東京都江戸川区)の中古車相場情報によれば、同式のVOXYはおおむね48万4000円から67万円程度で取引されている。近年は情報プラットフォームが充実し、一台ごとの相場がガラス張りになったことで、一般のドライバーでもシビアに費用対効果を計算しやすくなった。
新しい高年式車と比べると、こうした低年式車はすでに価格の底値付近にあり、ここから先の資産価値の目減りは非常に緩やかだ。新車や高年式車を買う場合の数百万円、あるいは数十万円の差額を、年に数万円の増税分だけで使い果たすには、それこそ気が遠くなるような年月がかかる。クルマ自体の値落ちの少なさと増税額を天秤にかければ、古いクルマを持ち続けることの経済的な合理性がはっきりと見えてくるはずだ。
低年式車における損益分岐点の計算
繰り返しになるが、13年を超えたからといって税負担の重さだけで低年式車を敬遠するのは、あまりに実態からかけ離れている。最新モデルとの購入価格の差は数百万円に達することも珍しくなく、車検ごとの数万円の増税だけでこの巨額の差がひっくり返ることはまずない。
もちろん、古いクルマを維持するうえでは税金だけでなく、こまめなメンテナンスや燃費の悪化といった懸念材料もつきまとう。ただ、ここでも状況は変わりつつある。近年の自動車アフターマーケットでは、
・純正品以外のサードパーティ製パーツ
・中身を新品同様に直したリビルト部品(再生部品)
のサプライチェーンがしっかりと整備された。かつてのように、ディーラーで高額な部品を丸ごと交換しなくても修理費を安く抑えられる土壌が整っているのだ。
その結果、個人のドライバーであっても、まるで企業のフリート管理者(車両管理者)のようにコストを管理する層が増えてきた。最初の購入費用に日々のガソリン代、定期的な整備費、そして乗り続ける予定の年数を掛け合わせ、全体の損益分岐点を冷静に弾き出す。初期費用を抑えながら充実したアフター市場を活用する低年式車の乗り方は、いまや立派な経済戦略といえる。
愛車の売却・乗り換えのタイミング
すでに初度登録から10年以上同じクルマに乗っている人にとって、13年や18年という税制の節目は、買い替えるかどうかの
「絶好の判断材料」
になる。とくに増税のタイミングと車検の時期が重なる年は、これからの維持費を総点検する良い機会だ。
とはいえ、税金が上がるからといって慌てて手放す必要はない。新車に乗り換えるとなれば、数百万円の車両代に加え、登録諸費用や任意保険の見直しなど、一度に大きな出費を覚悟しなければならない。自動車ディーラー側も方針を転換しつつあり、単に新車を売るだけでなく、予防整備を通じて長く乗る顧客をサポートするビジネスモデルに力を入れ始めている。エンジンの調子などクルマのコンディションが良いなら、こまめに点検を受けながらそのまま乗り続けるのが、結果的に最も財布に優しい。
だが、車検のタイミングで数十万円単位の大規模な部品交換を告げられ、そこに重課のペナルティまで重なるようなら話は別である。この場合は素直に売却や乗り換えに踏み切るのが得策だ。幸いなことに、日本車の耐久性は海外で極めて高く評価されており、中古車輸出の引き合いは強い。年式が古くても、人気の車種ならしっかりとした買取価格がつくケースは多い。
もし乗り換えを決断した場合、エコカー減税の行方には注意を払いたい。制度自体は2028年4月末まで延長されたものの、対象となる燃費のハードルは段階的に上がっている。EVやPHVの免税は据え置かれるが、ガソリン車やHVに対する基準は2026年5月と2027年5月の2段階で厳しくなる。
純粋なガソリン車の大半は減税の網からこぼれ落ち、一部のHVすらも優遇の幅が小さくなる見込みだ。次のクルマを選ぶ際は、目当ての車種が本当に減税対象として残るのか、購入前の入念なチェックが欠かせないのだ。
将来の税制変化と賢い車種選択
これまで手厚い保護を受けてきた電動車も、これからは無傷ではいられないだろう。
2026年度の税制改正では、2028年度からEVやPHVの重量税に特例加算分を設ける方針が打ち出された。大容量のバッテリーを積んだ重い車両が道路インフラに与えるダメージを考慮し、
「道を使う者がインフラを負担する」
という受益者負担の原則を適用する狙いがある。さらに2027年度以降を見据え、国はクルマの税制そのものを根底から作り直そうとしている。排気量で決まる今の自動車税を廃止し、自動車重量税とまとめて車両重量ベースの新しい単一税に一本化する構想が議論の俎上に載っているのだ。
特定のエコカーだけを優遇するフェーズは終わりを告げ、クルマ社会全体のインフラ維持費を広く公平に分担してもらう政策へとかじが切られつつある。結果として、結局どのクルマを買えば得なのかという正解はますます複雑になっていく。
こうした大きなうねりを前にすると、単なる年式や目の前の税額だけで損得を測ることは難しくなる。
・どんなエンジンやモーターを積んでいるか
・燃費はどうか
・最初の購入価格はいくらか
・あと何年乗るつもりか
これらすべての要素をテーブルに並べて計算する姿勢が求められる。
悩んだときは、焦らずに順を追って整理したい。まずは重課税がいつ始まり、具体的にいくら負担が増えるのかを把握する。次に、あと何年そのクルマに乗りたいのかをイメージし、将来の車検費用や想定される修理代を含めてトータルコストを割り出してみる。こうして情報をひとつずつひも解いていけば、自分にとって一番納得のいく答えがおのずと見えてくるはずだ。
愛着のある古いクルマを丁寧に直しながら乗り続けるのも、安全で快適な最新モデルに買い替えるのも、どちらも合理的な選択である。めまぐるしく変わる税制や市場のルールを俯瞰し、自分のライフスタイルとお財布事情に最も合う一台を賢く選ぶ。そんな成熟した自動車との付き合い方が、これからのスタンダードになっていくだろう。(河野みゆき(モビリティライター))
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みんなのコメント
現行EVのバッテリーなんて5年も使えば性能ガタ落ちだろ
そんな事より良い加減13年乗ったら増税とかヤメロ!
ショーファーの後席でふんぞり返ってる奴らが机上で経団連の悪党から耳打ちされて決めたような悪税
世界中から指差されて笑われてるぞ!