量産車最大排気量となる、最高出力167psの2458ccエンジンを積むモンスターマシン、ロケット3。どのジャンルにも属さない特別な存在、「究極の高性能ロードスター」を試した。
その排気量は量産車最大の2458cc
このマシンをジャンル分けすると、どこに属することになるのだろう? ドラッグスター? クルーザー? しかし、そんなジャンル分けなどぶっ飛ばすほどに、ロケット3Rの存在は別格である。
排気量は2458cc。量産車最大排気量であり、他に類を見ないトリプルエンジン。それを縦方向に搭載している。
それだけ聞くと奇をてらったかのようなマシンにも思われがちであるが、乗ってみれば、至極真面目に作られたマシンだということが分かるはずだ。
そもそも、ロケット3は多少なりとも歴史のあるマシンである。初代の登場は2004年。当時、何度かテストしたが、その排気量の大きさからくる怒涛のパワフルさだけでなく、サウンドやオリジナリティなどスペシャルなマシンであった。
2017年に生産終了となってしまったが、2019年にロケット3(IIIから3へロゴが変更された)はすべてが刷新され蘇り、しばらくの間明け渡していた“量産モデル最大排気量”という名誉を取り返すことに成功したのである。
特別な所作は不要。意外にもジェントルな走り
写真でみるよりも、このマシンは大柄で迫力に満ちている。オーラとも言い換えられるであろう、ただ大きいというだけではなく、ワイルドで凄みのあるスタイリングである。従来モデルがちょっと愛嬌のあるマスクをしていたのに対し、随分とイメージチェンジした印象だ。
跨ってみると、ドラッグマシン的な前傾度が高まっている。しかし、これは兄弟車のGTを選択することで、よりアップライトなライディングポジションを選択することも可能だ。低く身構えたフォルムではあるが、車格は大柄であるため、足つき性が見た目のイメージより良くない。
走り出すまでは多少の緊張感が必要である。しかし、走り出したロケットはモンスターマシンとは思えないほど穏やかな振る舞いで、意外にもジェントルである。アイドリング状態でも、普通にクラッチミート出来るトルクフルさ。矢継ぎ早にシフトアップしていこうとも、エンストしそうな心細さなどまったく感じさせることもない。トルクに負けてシフトが入りづらくなるようなこともなく、操作に特別な所作は不必要である。
通常の走行であれば2000rpmも回していれば、ほとんどの場面で事足りてしまう。しかも、その回転域を守りながらクルージングすれば、燃費も20km/Lを下回らないのだからたいしたものである。
さすがにストップ&ゴーの多い街中では、この車格が気になることもあるが、操作感は軽く、その本領を忘れてしまいそうになる。従来モデルから軽量化されて、40kgほど軽いということも効いているだろう。
ワインディングなど、コーナーリングは得意分野ではないとはいえ、このようなマシンにありがちなワイドなフロントタイヤからのキックバックもなく、車体に影響を受けにくい。スポーツバイクのように流れるような一連の操作は受け付けてはくれないが、しっかり減速しアクセルを当てながら緩やかにコーナーをクリアしていく方法なら、意外にスポーティに走れてしまう。従来モデルと比較して剛性感がハッキリと向上しており、ウネウネと車体がよじれるようなこともない。また、想像以上にバンク角があったのも驚きであった。
アクセルを開けたなら、その加速はまさに“ロケット”
しかし「意外と従順だなぁ…」などと感じられるのも、ライダーがしっかりと自制心をキープしていた瞬間までである。
ひとたびアクセルを大きく開けてしまったら…、その排気量からの加速力は圧倒的で、まさしくロケット。二次曲線的なパワーカーブではなく、瞬時に一直線に加速していくさまは、弓矢ではなく、ピストルから放たれた弾丸といった印象である。油断しているとハンドルから手が離れてしまいそうになるほどで、この時、やや前傾した上半身のポジションの意味がわかるのである。さらに、サスペンションストロークが短めであまり動かない設定であることで、よりダイレクトに空気を切り裂いて行くように加速していく感触が得られる。
そして、そのエキゾーストノートには感動すら覚える。低めのギアを使いながら、アクセルを開けすぎないようにしつつ、回転域による音色の違いを味わう。そんな、このマシンでしか味わえない贅沢な時間を過ごすことも出来るのだ。
ライディングモードは穏やかなレインから汎用性の高いロード、最もレスポンスの良いスポーツ、任意に設定変更出来るライダーモードと、4ポジションの選択が可能。ポジションによってエンジンキャラクターやトラクションコントロールの介入具合が最適化される。また、ツーリングシーンに威力を発揮するクルーズコントロールを装備するなど、従来モデルには装備されていなかった安全&快適装備にも力が入っている。
世界最大排気量という超絶スペックばかりに目が行きがちであるが、その凄みとともに平穏な日常も過ごすことが出来るキャラクターこそが、このマシンをより魅力的にしているのだ。
文・鈴木大五郎 写真・トライアンフモーターサイクルズジャパン 編集・iconic
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