スバルの新型「レヴォーグ レイバックPremium S_HEV EX」に都市部で乗った印象とは?『GQ JAPAN』ライフスタイルエディターのイナガキがリポートする。
穏やかな気持ちで運転できる──新型スバル レヴォーグ レイバックPremium S_HEV EX試乗記
新型スバル レヴォーグ レイバックPremium S:HEV EXの特徴
1.機械式AWDを継承
2.圧倒的航続距離
3.気になるインテリア
4.パッケージングの功罪
5.総評
1.機械式AWDと、自然なブレーキ
(前のページから続く)ハイブリッドカーでありながら、プロペラシャフトで前後輪をつなぐ「機械式AWD」を継承しているのは素直に嬉しい。〔※方式は要確認〕走行中の路面状況に応じて前後輪のトルクを制御することで、スバルらしい走行安定性が保たれているのも印象的だった。
悪路走破性を高める「X-MODE」も搭載されているため、都会的なルックスとは裏腹に、本格的なオフロードや深雪路でもドライバーに安心感を与えてくれる。
ブレーキフィールについても特筆しておきたい。回生ブレーキと油圧のメカニカルブレーキの協調制御は自然で、ハイブリッド車にありがちな、ペダルを踏み込んだ際の違和感やカックンブレーキの症状はなかった。
2.圧倒的航続距離
燃費性能と航続距離の向上は、このストロングハイブリッドモデルの最大の存在意義かもしれない。
WLTCモード燃費は19.0km/L(市街地モード15.8km/L、郊外モード20.6km/L、高速道路モード19.7km/L)。特筆すべきは、これほどの低燃費を実現しながら、PCUの配置の工夫などによってガソリンモデルと同等の63L燃料タンク(無鉛レギュラー)を維持している点だ。実用でも満タンから950km前後、条件が良ければ1000kmを超える。
無給油で長距離を走り切れるグランドツーリング性能に、高度な運転支援システム「アイサイトX」が組み合わさる。高速道路での長距離移動にかぎれば、ロングツーリングクルーザーとしてほとんど無敵だ。
3.気になるインテリア
運転席に座ると、スバル伝統の良好な視界設計が実感できる。細く配置されたAピラーと三角窓により死角が減らされており、入り組んだ市街地でも取り回しがしやすい。ダッシュボード中央に鎮座する縦型の大型インフォメーションディスプレイは、タブレット端末のような直感的なスワイプ操作に対応し、ナビゲーションから空調まで多彩な機能をスムーズにコントロールできる。
Premium S:HEV EXグレードには、タンとブラックのツートーンを組み合わせたストロングハイブリッド専用のナッパレザーシートが標準装備される。これ自体は、たっぷりとした厚みのある上質なものだ。加えて、レヴォーグ レイバックにふさわしい専用チューニングが施されたハーマンカードンサウンドシステムや、冬季に重宝するステアリングヒーターも標準装備。〔※全グレード標準かは要確認〕快適性や装備の充実度は、450万円クラスのクルマとして破格だ。
一方で、手放しで賞賛できない懸念点も存在している。その最たるものが、インテリアにおけるデザインコンセプトの散漫さだ。
このラグジュアリーなタンレザーが醸し出す豊かな空間に対し、ドライバーの足元にはスポーティなアルミペダルが配置され、ドアトリムやインパネの一部にはカーボン調の加飾パネルが使われている。さらに、物理スイッチ類の形状も丸型と四角形が無秩序に混在しており、視覚的な統一感に欠けている。
かつてのスポーツワゴンの名残であるアグレッシブなパーツと、新たな高級クロスオーバーへの志向を示す上質な素材が車内で衝突しており、結果としてせっかくの上質な革素材が活かしきれていない印象を受けた。
既存のガソリンモデルのパーツを流用したゆえの限界であることは想像に難くない。だが、エクステリアが端正な大人のデザインに仕上がっているのだからこそ、内装もそれに呼応する、引き算の美学を用いたシンプルでエレガントな空間であってほしかったというのが率直な感想である。
4.パッケージングの功罪
居住性とパッケージングに関しても、ハイブリッド化の影響による一長一短が見受けられる。
後席の居住空間自体は十分だ。身長170cmの乗員がドライビングポジションを合わせた状態で座っても、膝前にこぶし3つ分、頭上にこぶしひとつからふたつ分のスペースが確保されている。頭上空間はサンルーフ装着車であっても窮屈さを感じさせず、長距離のドライブでも閉塞感なく過ごすことができるはずだ。
しかし、ストロングハイブリッドシステム用の大型リチウムイオンバッテリーパックを荷室の床下に搭載した影響により、従来のレヴォーグに備わっていた後席バックレストのリクライニング機構が省かれてしまった。取り外したトノカバーを床下に格納するスペースも失われている。長距離ドライブにおいて後席乗員の快適性を左右する機能が失われたことは、ファミリーユースを想定するクロスオーバーワゴンとしては少なからず痛手だろう。
ただし荷室容量自体は、床上410Lと床下サブトランク19Lを合わせて合計429L(VDA法)を確保。荷室フロア長も1000mm以上と、ワゴンならではのゆとりある積載能力はしっかり維持されている。
さらに荷室には、最大1500Wまで使用可能なAC100Vアクセサリーコンセントがメーカーオプションとして設定されており、高電圧バッテリーの電力が少なくなると自動的にエンジンが始動して発電を行う。電源環境のないキャンプなどのアウトドアシーンで便利に使えるだけでなく、インフラによる電力供給が絶たれた災害時の非常用電源としても頼りになる装備であり、ハイブリッドモデルならではの大きな強みだ。
5.総評
総じて、新型レヴォーグ レイバック Premium S:HEV EXは、「無骨でアグレッシブな走り屋のクルマ」ではなく、成熟した大人のための「穏やかで上質な移動空間」へと変貌を遂げたモデルだった。
エクステリアの端正な顔立ちや、ターボの刺激を排したマイルドな走行フィールは、一部の熱狂的でスポーティな走りを求めるスバリストからは物足りなさを指摘されるかもしれない。しかし、日本の複雑な道路環境を静かに、快適に、そして安全に長距離移動する実用性を重視するファミリー層や、落ち着いたライフスタイルを好むユーザーにとっては、良き選択肢となるはずだ。
インテリアデザインにおけるスポーティパーツとラグジュアリー素材の混在による統一感の欠如や、バッテリー搭載に伴う後席リクライニング機能の廃止といった課題は残る。それでも、アイサイトX、質感の高いレザーシート、専用チューニングのハーマンカードンオーディオシステム、そして1000km近い航続距離を持つ最新のストロングハイブリッドシステムをすべて搭載して¥4,521,000という値付けは、装備から逆算すればかなり強い。
ミニバンでは決して得られない低重心による安定した走り、一般的なSUVにはない立体駐車場への柔軟な対応力、そしてセダンでは望めない広大な荷室空間……これらの要素に高い環境性能が加わった新型レイバック S:HEVは、スバルの新しい時代の入口に立つ1台だ。
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