「ホルヘ・ロレンソが15時から特別な記者会見を行なう」
今週末、スペイン・バレンシアで2019年シーズン最終戦を行なうMotoGP。
現地時時刻15時=日本時間の23時。MotoGPの主催団体であるDORNAがロレンソの緊急発表を発表したのが現地時刻10時=18時。ロレンソがこの時期に行なう特別な記者会見となれば…まさか…。
「会見に来てくれてありがとう。来てくれてとてもうれしいです。僕はいつも、ライダー誰もが持つ『4つの記念日』のことをいつも考えているんだ。初めてのレース、初優勝、初めてのワールドタイトル…これはだれもが経験できるわけじゃないけどね…。そして引退の日。みんなもう気づいているだろう、僕がここにいるのは『その日』がついに来てしまったってこと。みんなに伝えます。このレースが、僕のMotoGPラストレースになります。このレースが終わったら、僕はプロフェッショナルレーシングから引退します」
ついに、恐れていたことが現実になってしまいました。ホルヘ・ロレンソ32歳、MotoGP引退--2002年に15歳でWGP125ccクラスにデビュー、05年に250ccクラスにステップアップして2度、そして08年にMotoGPクラスにステップアップして3度ワールドチャンピオンとなった偉大なライダーが、MotoGPの世界から身を退くのです。
「誰もが目標にするホンダのファクトリーライダーになれたんだけれど、残念なことに、今シーズンの準備を始めてすぐにケガをしてしまって、それからいい体調でライディングできなかった。それはバイクにちゃんと乗れないことを意味していて、難しいレースが続いてしまった。もちろん、それでも頑張っていたし、時間が経てばスタート地点に戻れると思っていたんだ」
ロレンソは、2018年シーズン終了と同時に、ドゥカティ・ファクトリーチームからホンダ・ファクトリーチームに移籍。ヤマハ、ドゥカティ、ホンダと、3メーカーのファクトリーチームを経験するという、歴史上数少ないライダーになっていました。
しかし、2019年初テストを前に、トレーニング中に左手首舟状骨を骨折。プレシーズンテストを1回パス、カタールテストだけを経て臨んだニューマシン、新チームでの初陣は、予選15位/決勝13位。まだまだケガの影響もあるけれど、ロレンソのことだ、けがが治るにしたがってどんどん上がってくるだろう、と思われていました。しかし、第2戦以降のロレンソの成績は12位→リタイヤ→12位→11位→13位→リタイヤ。そしてテストで負傷しての4戦欠場。
「開幕前、シーズン序盤のけがを治しながら、懸命にマシンを仕上げて、いい感じが見えてきたころにカタルニアテストで転倒、ケガをして、その後にアッセンでもまた転倒してケガをしてしまった。そこでね、グラベルに転がっている時『オレは一体なにをしてるんだ。もういいんじゃないのか』って思ったんだ。でも何日か経って、今までのキャリアや僕の人生を思い返して、決断を早まっちゃいけない、まだ頑張ってみよう、と思ったんだ」
カタルニアテストでの負傷から4戦ぶりに復帰しても、ロレンソの成績は14位→14位→20位→18位→17位→16位→14位。ランキングは19位で最終戦を迎えたわけです。
「あの転倒から、僕の壁はどんどん高くなっていった。そしてモチベーションを持つことが難しくなってしまったんだ。僕はレースが好きで、ライディングが好き、優勝することが大好きだった。けれど、壁に向かって挑戦できなくなった時、それはチャンピオンになること、優勝を目指すことができない時、モチベーションを持つことができない。ホンダでの僕の目標は、少なくとも短期間で目指すには現実的じゃない、と思ったんだ」
それからロレンソは、自らを見出してくれた、またはホンダの乗るチャンスを作ってくれたレプソルホンダの監督、アルベルト・プーチに、HRCの首脳陣に謝罪しました。
「失望させてしまって、申し訳なかった。これは僕にとっても、チームにとっても最高の決断だ。ホルヘ・ロレンソとホンダは、ただポイントを獲得するためにここにいるのではないんだからね」
DORNAの最高責任者、カルメロ・エスペレータを隣に従え、多くのジャーナリストたち、多くのライダー仲間を前に、目を潤ませながら話すその姿に、かつて「バッドボーイ(=悪ガキ)」と呼ばれたスーパースターの面影はありませんでした。
2002年から296戦、125ccで4勝、250ccで17勝、そしてMotoGPで47勝した5Timesワールドチャンピオン。度重なる転倒と負傷で体はボロボロでしょうが、まだまだやれる――そう思っている関係者、ファンばかりでしょう。
今年、あと1レース乗り切れば、またプレシーズンテストから仕切り直しして、2020年開幕と同時に「ハンマーロレンソ」が見られると思っていただけに、残念です。
これでレプソルホンダ、そしてLCRホンダのライダーラインアップも変更を強いられそうです。
けれど、その話はまた――。
写真/Honda motogp.com 文責/中村浩史
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