MkVIIの裏で進んでいたスポーツカー
ジャガーを創業したウィリアム・ライオンズ氏の野心は高かった。同時に、現実的にビジネスを進めるうえでの優先順位にも敏感だった。
【画像】1948年のゲームチェンジャー ジャガーXK120とランドローバー ディフェンダーとMkVIIも 全110枚
1945年の最優先事項は、より高価なライバルに立ち向かえる、最高時速160km/h超の高級サルーンを提供すること。ウィリアム・ヘインズ氏やウォルター・ハッサン氏といった有能な技術者は、達成できるという自信を抱いていたはずだ。
ロンドンの南東に構えた工場内には、新しいダブルオーバーヘッドカム(DOHC)直列6気筒エンジンとモノコック構造ボディの、図面が溢れていたことだろう。後にブランドを象徴するベストセラー・サルーンとなる、MkVIIを誕生させるため。
一方で、戦後初となるモーターショーで確実な注目を集めるべく、別の計画も密かに進行していた。MkVのシャシーを短縮し、新しい6気筒エンジンをフロントに搭載した、アルミニウム製ボディの斬新なスポーツカーだ。
サスペンションは、フロントがトーションバー、リアにリーフスプリングを採用した、ウイッシュボーン式。ブレーキには、ロッキード社製のドラムが前後に組まれた。
有能な技術者、フレッド・ガードナー氏の尽力により、数週間でコンセプトは形になった。「スーパースポーツ」と呼ばれたそのクルマは、1948年10月のロンドン・モーターショーで発表される。ライオンズは、その巨大な影響を予想していなかったようだ。
最初期のアルミボディの提供数は200台
直後から多くの注文が寄せられたが、ジャガーの工場は需要に応える準備ができていなかった。XK120として量産化は決まっていたが、シャシーとボディが生産に適したスチール製へ変更され、実際に英国で納車が始まるまでに2年の時間を要した。
最高速度202km/hが主張されたロードスターには、1263ポンドという控えめな価格が設定された。しかし、当初のアルミボディの提供数は200台。充分な資金を持つだけでなく、幸運にも恵まれ、北米に住んでいることが入手できる理想的な条件だった。
スチール製ボディへ切り替わったXK120は、1954年までに1万1861台が生産されているが、それでも供給が充分とはいえなかった。特にデイブ・ナーシー氏が所有する、1951年式には羨望の眼差しが向けられたことだろう。
「オースチンヒーレー3000やデイムラーSP250、ジャガーXKといった、クラシックカーを探していたのが1975年。クラシックカーの著書を多く手掛けるフィリップ・ポーター氏と出会い、ジャガーを選ぶべきだと諭されたんです」
当時24歳だったデイブは、それ以来、XK120の雰囲気から想起される通りのクラシックカー・ライフを過ごしてきた。モータースポーツ・イベントにも数多く参加している。
「レストア前にも、1982年と1983年にフランスのル・マンへ長旅をしています。XK120へ主に乗るのは夏。冬でも、控えめですが乗りますよ。今まで、ルーフを使用したことはありません」。とデイブが笑顔で話す。
とても自然に馴染める嬉しい驚き
ヤレが進んだ1984年にレストアへ着手。2000年代前半に作業が終了すると、ジャガー・オーナーとして本格的に活動を再開した。最近はヒルクライム・イベントにも意欲的に参加しているという。今日はグッドウッド・サーキットへ自走でやって来た。
ペダルボックスがタイトで、ステアリングホイールは大きく、ドライビングポジションは窮屈。モス社製のトランスミッションは使いにくい、などと想像していたが、実際はまったく違う。とても自然に馴染めることが、うれしい驚きだった。
シートは柔らかく、車内は広々としている。エンジンは軽快に吹け上がり、苦労することなく2速へシフトアップできる。
流麗なボディラインからイメージする通り、XK120は流れるように走る。スチール製のスパッツで隠されたディスクタイプのホイールが、しっかりパワーを路面へ伝える。
DOHCの6気筒エンジンが右足の動きに合わせて唸りを放ち、ドライバーの気持ちを高ぶらせる。回転数を合わせながら、慎重に次のギアを選ぶ。
ステアリングホイールを繊細に操れば、グッドウッド・サーキットを爽快に回れる。ロンドン郊外の一般道や、カリフォルニアの海岸線でも、同様に満ち足りた気持ちになれるだろう。
戦後のスポーツカーをリードする完成度
XK120と親しくなれば、弧を描いたフェンダーラインとボンネット越しの景色や、初期型らしいエネルギッシュなエンジンが生む、気持ちの衝動を抑えきれない。1950年代の若者が乗り移ったかのように。
2基のSUキャブレターが豪快に息を吸い、サウンドが一気に高まる。弾けるような勢いで加速していく。パワーデリバリーは滑らかで、エグゾーストノートは心地良い。ただし、シフトアップは丁寧に。
「思わず本能的になりますよね」。デイブが認める。タイミングをマスターすれば、するりとスロットにレバーが収まる。高精細な感覚で。
コーナーが迫りXK120を意欲的に侵入させていく。身のこなしは、意識が引き締まるほど軽快。挙動を読んでステアリングホイールを戻すと、アクセルペダルで姿勢を調整できる、絶妙なバランスに落ち着く。スライドしつつ、安定している。
路面からの感触が、操縦系を通じて伝わってくる。往年のクラブレーサーのようだ。
XK120は、戦後のスポーツカーをリードする完成度にあった。新しいDOHCエンジンのショーケース以上の内容といえた。商業的な基盤を作ったサルーンのMkVIIに並ぶほど、強力な流れを英国の自動車界に与えた。それは、現行のFタイプへも受け継がれている。
ジャガーKX120は、どの角度から見ても美しい。走ってみれば、心が奪われるほど素晴らしい。ライオンズの野心の高さには、感服せざるを得ない。
ジャガーXK120(1948~1954年/英国仕様)のスペック
英国価格:1263ポンド(1948年時)/9万ポンド(約1449万円)以下(現在)
生産台数:1万2061台
全長:4270mm
全幅:1550mm
全高:1270mm
最高速度:202km/h
0-97km/h加速:10.0秒
燃費:5.7km/L
CO2排出量:−
車両重量:1295kg
パワートレイン:直列6気筒3442cc自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:162ps/5400rpm
最大トルク:26.9kg-m/2500rpm
ギアボックス:4速マニュアル
この続きは(4)にて。
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
ホンダ新型「プレリュード」まもなく登場? 22年ぶり復活で噂の「MT」搭載は? 「2ドアクーペ」に反響多数!海外では“テストカー”目撃も!? 予想価格はいくら?
不要or必要? やっちゃったらおじさん認定!? 「古い」「ダサい」といわれがちな [時代遅れ]な運転法
「ノーマルタイヤで立ち往生」に国交省ブチギレ!?「行政処分の対象です」2年連続で大量発生…「スタックの7割が夏用タイヤ」今年も緊急警告
「黄信号だ。止まろう」ドカーーーン!!! 追突されて「運転ヘタクソが!」と怒鳴られた…投稿に大反響!?「黄信号は止まるの当たり前だろ」の声も…実際の「黄信号の意味」ってどうなの?
オヤジむせび泣き案件!! ホンダの[デートカー]が帰ってくるぞ!! 新型[プレリュード]は究極のハイブリッドスポーツだ!!!!!!!!!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント
違うな。