このイタリア・バレルンガを皮切りに、今季2024年よりFIAステータス認証を取得した創設2年目のFIA TCRワールドツアーが始動。地元シリーズであるコパ・イタリア・ツーリスモとの併催で争われた開幕2ヒートは、新たにフェイスリフトを受けたアップデート版『ヒョンデ・エラントラN TCR』がレースを席巻。昨季の戴冠で初代ワールドツアー・チャンピオンに輝くノルベルト・ミケリスがポール・トゥ・ウインを決め、その僚友として新たにBRCヒョンデN スクアドラコルセに加入したネストール・ジロラミも勝利を手にしている。
昨季の9台に対し11台の登録を集めた新生TCR世界戦は、第2戦のモロッコ・マラケシュと第3戦アメリカ・ミドオハイオを除き、初年度同様シーズンを通じて各地のリージョン選手権や国内シリーズとの併催で争われるツアー形式を採用する。
TCR世界戦で3台体制を敷くヒョンデが『エラントラN TCR』を刷新。リンク&コーは4台体制を継続
そんな4月19~21日の開幕戦は、同じ週末にTCRヨーロッパ・シリーズが併催されているにもかかわらず、地元のTCRイタリア・シリーズではなく耐久カップ的な性格を持つコパ・イタリアのエントラントを受け入れるなど、やや変則的なオープニングとなった。
幕開けのFP1こそ“ノンカラーリング”のホワイトボディでトラックインしたエステバン・グエリエリ(ゴート・レーシングチーム/FL5型ホンダ・シビック・タイプR TCR)が最速の座を奪うものの、ここで速さを披露したのは地元イタリアに拠点を置くBRC勢。
新たにヒョンデ陣営加入のジロラミと、WTCR世界ツーリングカー・カップ“最後の王者”であるミケル・アズコナ(ヒョンデ・エラントラN TCR)がトップタイムを分け合い、エンジンや骨格を含む内部構造は不変ながら「空力性能が向上した」という新しいボディワーク設計を持つ最新モデルが実力を発揮する。
そのまま予選Q1でも編隊走行でタイムを削りに来たヒョンデ陣営は、続くQ2でもジロラミがアズコナとミケリスを牽引して最終アタックへ。世界タイトル奪還を狙うヤン・エルラシェール(リンク&コー・シアン・レーシング/リンク&コー03 TCR)や、FL5シビックRのグエリエリを撃破したミケリスが、エースの仕事を完遂するポールポジションを射止めた。
■移籍して即、初優勝
そのまま土曜17時過ぎに始まったレース距離60kmの週末オープニングヒートは、スタート直後こそ昨季にもフェイスリフトを受けた“世界戦専用機”とも言うべきリンク&コー03 TCRに先行されるものの、最終コーナーでのラインクロスでポジションを奪還した新型エラントラが、そのまま15周を走破してトップチェッカーを受けた。
「スタートは簡単じゃなかったし、日陰側でターンインへのアプローチが明確に掴めないでいたんだ」と明かしたFIA TCRワールドツアー最初のウイナーとなった王者ミケリス。
「グリッドでもホイールスピンを避けるためにより慎重なアプローチを採ったが、ヤン(・エルラシェール)の背後でドライブしながら『自分のクルマの方が速そうだ』ということに気づいた」
明けた日曜のレース2は予選トップ10のリバースグリッドが採用され、前日にチームの“露払い役”を務めたことで、自身は10番手に留まっていたジロラミが先頭発進の権利を得る。
これもある程度、戦略的な動きの一環と思われるBRCの判断も功を奏し、終盤2度のセーフティカー出動にも動じず、前日のチームメイトに続く“ライト・トゥ・フラッグ”での移籍後初勝利を飾る結果となった。
「新チーム移籍を勝利で始めるなんて、どんなに素晴らしいことだろう。ヒョンデ、BRC、そしてワークショップの全員が僕に最高のクルマを提供するべく驚くほど熱心に働いてくれたんだ」と喜びを語ったジロラミ。
「背後のサンティ(サンティアゴ・ウルティア/2位)も懸命にプッシュしていたし、セーフティカーの後、彼はもっとアタックしてくると読んでいた。最後はタイヤの管理もしなくてはならず厳しかったが、夢見ていたことが現実になったね!」
そして3位表彰台には、前日のグエリエリに続きイタリア出身のティーンエイジャー、マルコ・ブティ(ゴート・レーシングチーム/FL5型ホンダ・シビック・タイプR TCR)が入り、土曜にはアズコナとの接触アクシデントでペナルティ裁定を受けていたミスを挽回するとともに、自身世界戦での初ポディウムを獲得している。
続くFIA TCRワールドツアー第2戦は、前述のとおり5月2~4日にモロッコ・マラケシュのサーキット・モーレイ・エル・ハッサンで争われる。
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