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ロールス・ロイス・ファントムの100年を振り返るアートワークとエピソード

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ロールス・ロイス・ファントムの100年を振り返るアートワークとエピソード

ファントムの100年を8つのアートで表現

ロールス・ロイスは100周年を迎えたフラッグシップ・サルーン『ファントム』の世界的な威光を振り返り、同社の現役デザイナーたちによる8つのアートワークを公開した。

【画像】ロールス・ロイス・ファントムの100年を振り返る8つのアートワークと、歴代のファントム 全64枚

1925年の誕生以来、ファントムは成功の象徴として認識され、8世代にわたり王侯貴族、指導者、芸術家、産業界の重鎮たちを乗せ、近代史に刻まれる数々の重要な場面に立ち会ってきた。

時代を超えたエレガンスによりファントムは影響力、洗練された美意識そして個性を表現する究極の存在として、ラグジュアリーの世界において比類なき地位を確立している。

今回制作されたアートワークの着想の元となったのは、1910年に『スピリット・オブ・エクスタシー』を生み出したアーティスト、チャールズ・サイクスによる油彩画である。

顧客たちのライフスタイルを反映した風景の中にファントムを描いたサイクスの作品に倣い、新たに制作されたアートワークもまた、この100年の間にファントムが歩んできた多彩な人生を世界を映し出したものとなっている。

今回、公開された8つのアートワークのタイトルは、以下の通り。

『QUINTESSENTIALLY BRITISH』(ファントムI)

『THE GOLDEN ERA OF TRAVEL』(ファントムII)

『LIGHTS, CAMERA, ACTION』(ファントムIII)

『GRAND OCCASIONS』(ファントムIV)

『A MUSICIAN’S DREAM』(ファントムV)

『A STATELY PRESENCE』(ファントムVI)

『A SENSE OF ARRIVAL』(ファントムVII)

『THE PINNACLE OF LUXURY』(ファントムVIII)

スパルタ将軍の愛したファントムIII

第二次世界大戦における偉大な指揮官の1人、英国陸軍のバーナード・ロー・モントゴメリー元帥は、その質素な生活様式から『スパルタ将軍』の異名で知られていた。

そんな彼が唯一快適さを求めたのが自らの移動手段であり、2台のファントムIIIを愛用した。

1944年6月のノルマンディー上陸作戦の前夜、彼のファントムの1台がチャーチル首相、アイゼンハワー将軍、そして英国王のジョージ6世を、ハンプシャーの連合国遠征軍最高司令部での作戦会議へと送り届けた。

また、戦後に彼はもう1台のファントムを用いて、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの首相たちを送迎したという。

モントゴメリー元帥と彼のファントムは、現代史を形づくる様々な出来事に立ち会うとともに、その堅牢さで不変の信頼を示し、いかなる困難な局面においても自らが部隊とともにあり続けるという明確なメッセージを表現したのだ。

王室や外交官の公用車としてのファントム

ファントムはまた、王室の公用車としても誇り高く仕えてきた。中でも特筆すべきはロールス・ロイスの本拠地である英国王室との深い関わりである。

1948年、エディンバラ公爵はエリザベス王女殿下との結婚直後、夫婦での使用を目的としてロールス・ロイスに1台のファントムの製作を依頼した。『ナーバーのマハラジャ』のコードネームで呼ばれたこの個体は、最初のファントムIVとなった。

この1台は、ロールス・ロイスと英国王室の長年にわたる関係の重要な節目を示すものとなった。

英国王室はこの後、さらに英国王の移動手段として、ロールス・ロイスにファントムVI、そして2台のファントムV、さらには2台のファントムVIの製作を依頼した。

なかでも1977年にエリザベス2世陛下の即位25周年を祝して、英国の自動車業界から贈られた『シルバー・ジュビリー・ファントムVI』は最も長く仕えた車両の1つとして知られている。

また、大陸を超えた地では、ある国家の誕生に重要な役割を果たした1台のファントムVがある。

1966年にアラブ首長国連邦の建国の父と言われるザーイド・ビン・スルターン・アール・ナヒヤーン閣下に納車されたこのファントムVは、彼のアブダビ首長への就任式に参列した。

そして1971年にはアラブ首長国連邦の公式設立式にて、初代の駐アラブ首長国連邦英国大使である、ジェームズ・トレッドウェル大使を式典会場へと送り届けたエピソードを持つ。

ファントムはまた、世界各国で活躍する英国外交官たちにとっても、ソフトパワーを象徴する外交ツールとして積極的に用いられた。

パリ駐在英国大使を務めたジョン・フレットウェル卿は、かつてタイムズ紙に次のように語った。「エリゼ宮訪問の際、私のロールス・ロイスは大いに役立ちました。門に立つ警備員にも、私が英国大使であることに気が付いてもらえるはずですから。」

世界の舞台を渡り歩くときも、母国で静かにオーナーに仕えているときも、ファントムは常に堂々たる存在であり続けている。

1959年に登場したファントムVは全長5.8mにもおよぶ巨躯を誇り、一部の歴史学者は『英国の駐車メーターの間隔は、この車両の寸法に合わせて見直された』という見解を示している。

ミュージック・スターが愛したファントム

全てのファントムが王室や外交儀礼のための公用車としてつくられたわけではない。

1964年12月にジョン・レノンは、ビートルズのアルバム『ア・ハード・デイズ・ナイト』の成功を祝して、自身のファントムVの製作を依頼した。

内外装を全てブラックとしたレノンのファントムはまた、英国で初めてブラック・スモーク仕様のガラス・ウインドウが採用された車両でもある。1965年にローリング・ストーン誌でレノンはこのように語っている。「日中に家に帰るときでも車内はまだ真っ黒だ。窓を全て閉めれば、まだクラブの中にいる感じさ。」

このファントムは1967年に『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のリリースを前に現在知られる鮮やかな黄色に塗り替えられ、渦巻く花や星座のモチーフで彩られ、同年に起こったムーブメント『サマー・オブ・ラブ』の象徴的存在となった。

レノンは後年、激怒したイギリス人女性から「ロールス・ロイスにこんなことをするなんて!」と傘で攻撃されたと語っているが、この出来事はレノンのファントムの伝説をさらに高めることとなった。

『キング・オブ・ロックンロール』ことエルヴィス・プレスリーもまた、ロールス・ロイスのオーナーであった。

彼が1963年に購入したファントムVには、ビスポーク仕様のマイクや、後部座席アームレストに組み込まれた執筆スペースなどが備えられていた。

購入当初は『ミッドナイト・ブルー』の鏡面仕上げとされていたが、彼の母親が飼っていたニワトリたちが鏡面に映る自分たちの姿を攻撃したことで塗装が傷んでしまい、後にキズが目立たないシルバー・ブルーへと塗り替えられている。

1968年にはエルヴィスはこの愛車をチャリティのために寄贈し、これを受けてレナード・コーエンとウォズ(ノット・ウォズ)による楽曲『エルヴィスのロールス・ロイス』が生み出された。

銀幕の主役となったファントム

ハリウッドの映画業界もまた、ファントムを熱狂的に受け入れた。映画の先駆者の1人であるワーナー・ブラザースの共同創設者ジャック・ワーナーは、自分へのご褒美としてファントムを手に入れた。

さらにフレッド・アステア、グレタ・ガルボ、メアリー・ピックフォードといった伝説的な銀幕スターたちも、ファントムのオーナーとして名を連ねている。

1964年にファントムは『ゴールドフィンガー』(邦題:007/ゴールドフィンガー)に登場し、スクリーン上でもその存在感を示した。

劇中で敵がファントムIIIを使って金塊を密輸するシーンが描かれ、長年続く『ジェームズ・ボンド』シリーズにおける通算12回のロールス・ロイス登場の先駆けとなった。

ロールス・ロイスは2004年、この映画の60周年を記念して、ワンオフのビスポーク・ファントムVIII『ファントム・ゴールドフィンガー』を発表している。

同じく1964年には、映画『黄色いロールス・ロイス』が公開され、レックス・ハリソン、イングリッド・バーグマン、シャーリー・マクレーン、オマー・シャリフ、ジョージ・C・スコット、アラン・ドロン、ジャンヌ・モローといった豪華キャストとともに、1931年のファントムIIがスクリーンに登場した。

主題歌の『明日を忘れて』はゴールデングローブ賞を受賞し、後にペリー・コモやフランク・シナトラによってカバーされたが、シナトラ自身もまた、後にロールス・ロイスのオーナーの1人となっている。

新時代の成功者の象徴となったファントム

2000年代初頭に登場したファントムVIIは、自らの手で成功を掴む起業家の台頭や、グローバルなセレブレティ文化、そしてソーシャルメディアの幕開けと時を同じくして誕生した。

彼らはこれまでのラグジュアリーの概念にとらわれず、単なる成功ではなく、自らの個性を表現したいと望んでおり、ファントムはまさにその理想的なキャンバスを提供することとなった。

やがて、こうした新しい分野で成功を収めた多くの人々がファントムに投資し、自らのオーナー体験をSNSや動画プラットフォームを通じて世界と共有するようになった。

ファントムの存在感が高まるにつれ、授賞式やガライベントといった場にも欠かせない存在となっていった。オーナーたちはエフォートレスで優雅に、そして堂々とファントムからレッドカーペットへ降り立つようになった。

2012年のロンドンオリンピック閉会式では、3台のファントム・ドロップヘッド・クーペがサプライズ登場を果たし、この記念すべき場面を華やかに彩った。このような瞬間は、数百万もの視聴者にリアルタイム配信され、ファントム自身がソーシャルメディア上のスターとなったのだ。

表現に満ちた物語の新章となる、今日のファントム

現在、第8世代となったファントムは、依然として存在感と目的意識の究極の表現であり続けている。

サーチ・ギャラリーやサーペンタイン・ギャラリーなどの文化的施設で展示され、エルメスやイリス・ヴァン・ヘルペンといったブランドとのコラボレーションのキャンバスとしても機能している。

ファントムは今日もなお世界を映し出し、そして形づくり続けている。新たに登場する、より精緻を極めたビスポーク・コミッションは、この比類なき物語にさらなる一章を加えていく。それは、力強さ、文化、影響力、そして個性の表現に満ちた物語なのだ。

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