■価格が高くて便利すぎるクルマ
国産車の安全性能は、年々飛躍的に向上しています。かつては高級車にしか搭載されていなかった機能も、いまや軽自動車にさえ標準装備される時代です。
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そのため、同じ車種でも新型の発売までに、マイナーチェンジや一部改良によって安全装備の仕様を変更するクルマが増えています。
2000年代以降に登場したモデルの、フルモデルチェンジ周期は5年から6年といわれていますが、2年から3年で仕様が変わることも多く、たった数年の差で安全装備の性能が「時代遅れ」となる可能性も十分にあるでしょう。
では、近年のクルマは数年でどのような変化を遂げたのでしょうか。2019年に登録車でもっとも売れたトヨタ「プリウス」を例に、見ていきましょう。
プリウスの現行モデルは2015年に登場した4代目で、先代は2009年登場の歴代でもっとも売れた3代目です。
なお、現行モデルは2018年12月のマイナーチェンジ以前が「前期型」、以降が「後期型」とされています。
まず、トヨタの予防先進安全機能「トヨタ セーフティー センス」が搭載されているのは、前期型では「E」グレード以外、後期型はすべてのグレードです。
自動ブレーキの「プリクラッシュセーフティシステム」や、車線オーバーを知らせる「レーンディバーチャーアラート」、ミリ波レーダーで車間距離を検知・維持する「レーダークルーズコントロール」などの機能が搭載されており、3代目よりも安全性能で大幅なレベルアップを果たしています。
なかでも、プリクラッシュセーフティ機能は、ミリ波レーダーと単眼カメラの両方を使って前方車両や歩行者を検出できるほか、自転車の検知も可能です。
一方、2009年モデルの安全性能は、トヨタ セーフティー センスに含まれる機能のうち、プリクラッシュセーフティ機能はミリ波レーダー方式により車両のみの検知が可能で、歩行者の検知機能はありません。
「G」以上のグレードにオプションもしくは標準装備の設定となっており、中古車市場で売れ筋の「S」や「Sツーリングセレクション」には非搭載です。
さらに、高速道路で便利な「クルーズコントロール」も、先代モデルはブレーキ制御機能が付くのみですが、現行モデルは「全車速追従機能」を備えています。
全車速追従機能付とは、前を走るクルマを検知して適切な車間距離を保てる速度に自動で調整し、先行車がいなくなれば設定速度で走行を続ける機能です。
そのほか現行にあって先代にない機能として、レーンディバーチャーアシストや、ハイビームを自動で切り替える「オートマチックハイビーム」などがあります。
このように、個々の機能に性能差があるだけでなく、そもそもの安全装備の数や、搭載グレードの範囲など、わずか6年あまりで大きな変化を遂げました。
近年、目まぐるしく進化する安全装備について、ユーザーはどう感じているのでしょうか。首都圏のトヨタ販売店スタッフは、以下のように話します。
「最近の安全装備は、より繊細で高性能化されていますが、それらを『余計』だと感じるお客様が増えている印象を受けます。
例えば、ひと昔前にバックモニターが登場した時、それが付いているクルマじゃなきゃ買わないという人は非常に多く、実際にそれがお客様のクルマ選びの決め手となる場面もたくさんありました。
しかし、バックモニターは標準装備が当たり前となった現在、それ以上の機能を望まないという人も多く、 便利だけどあっても使わない、使わないから外して安くして、という要望も受けています。
これらは年齢層が高い人に限ったことではなく、若い世代のお客様にも多く、便利で安全な装備がスタンダードになるのは良いことですが、価格が高くて便利すぎるクルマは、購買行動には逆効果となることもあります」
※ ※ ※
2019年に、もっとも売れたクルマは軽自動車です。
では、5年連続で販売台数トップを誇るホンダ「N-BOX」の安全装備では、現行モデルとなる2017年に登場した2代目と、2011年に登場した初代で、どのような差があるのでしょうか。
この新旧モデルの安全装備の違いは大きく、現行モデルには歩行者検知式自動ブレーキを含む先進予防安全装備「ホンダ センシング」が標準装備されています。
そのため、誤発進・後方誤発進抑制、車線維持支援、前走車追従式クルーズコントロールなど、多くの安全機能が搭載されており、エントリーグレードでも軽自動車トップレベルの安全性能を誇ります。
一方で、初代の安全装備は簡易型の「低速域追突被害軽減ブレーキ」にとどまるほか、全車標準装備ではありません。
ひと昔前までは「安いし安っぽい」というイメージが拭えなかった軽自動車ですが、その先進性は猛スピードで高まっているようです。
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