この記事をまとめると
■1988年に登場したマツダ・ペルソナ
もはや死語だけど「ハードトップ」ってカッコよかった! オヤジ感涙の80&90'sイケてるHT車4台
■「サテライトコクピット」などの内装デザインに力を入れていた
■5ナンバーで優美なスタイリングを実現していたが一代限りで姿を消した
ハイソカーブームの真っ只中に誕生した流麗な4ドアハードトップ
マツダのペルソナは、1988年に誕生した4ドアハードトップだ。前後のドアを支える支柱(ピラー)のない外観が特徴である。さらに、それ以上にこだわったのが、内装だった。
フロントのダッシュボードから後席へ向かうトリムが、前後ドアから後席肩口まで連続し、ラウンドデザインの言葉どおりに形作られ、室内前後を問わず車内が一体感ある部屋のようにつくられている。後席は、あたかも家具のソファーのような形をし、クルマの座席という印象はない。そこに、ひじ掛けの役目をもつクッションが置かれ、それはもち運び可能である。
ダッシュボードの形状も独特だ。メーター両脇のスイッチ操作部分は、ハンドル近くまで左右がせり出し、着座した運転者の手が届きやすくなっている。この発想は、かつて1981年に登場したいすゞ・ピアッツァで採り入れられ、サテライトコクピットと呼ばれた。
前席では、助手席側に通常設定されるグローブボックスがない。理由は、助手席に座った女性が足を組んで座れる空間を確保するためであったとされる。
室内色は、グレーかベージュから選べる明るい色で、これも当時としてはめずらしいといえるだろう。運転に没頭しやすく精悍に感じられる黒系統ではないところに、居心地のよさを追求したペルソナの意図が示されている。
ピラーレスの4ドアハードトップという見栄えを損なわないため、前席シートベルトの取り付けにもこだわりがある。後ろのドアの前よりにベルト巻取りの隙間が設けられ、前席背もたれの肩の部分にベルトガイドを設け、乗員を的確に拘束する仕組みだ。
外観では、顔つきが同じく4ドアハードトップとして先に登場したトヨタ・カリーナEDに似た印象はあるが、後ろ姿は横一直線に連続したリヤコンビネーションランプの様子が独創的だ。
マツダは、2010年から「魂動デザイン」と称する造形へのこだわりを発信し、欧州にも反響をもたらしている。だが、造形へのこだわりはそれ以前からで、たとえばコスモスポーツも独特な外観のスポーツカーだった。
そして、室内のデザインにこだわった一台がペルソナであり、その独創性をクルマとして実現するため、たとえば前席シートベルトの取り付けに知恵を絞った。あるいはダッシュボードのサテライト・コクピット方式も、今日マツダがこだわる正しい運転姿勢への基本に通じる、運転のしやすさを追求した結果といえる。
クルマは、走る・曲がる・止まるの走行機能が基本とされる。それはもちろんだが、では、自分の一台として選ぶとき、重視するのは外観の格好よさや、室内の居心地のよさ、操作や利用のしやすさなどではないだろうか。
走りの追求はクルマとして当然の基礎であり、そこに、心を揺り動かす造形があることを通じてブランドは作り上げられ、消費者を喜ばせる根源となる。そこを大切にしてきたのがマツダであり、具現化した一台がペルソナであったといえるだろう。
この優美なデザインは、5ナンバー車で実現している。衝突安全に対する今日の課題はあるとしても、3ナンバーの大柄なクルマでなくても、5ナンバー車で魅力あるクルマ作りが可能であることをペルソナは示していた。ただ、ペルソナは一代限りで姿を消す運命にあった。
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