新型車比較・ライバル車対決 [2023.07.29 UP]
新型セレナ e-POWER登場!《ノア/ヴォクシー&ステップワゴン》ライバル3車を徹底比較
新型セレナの大本命とも言うべきe-POWERモデルがついに登場したことで、ミドルミニバンの勢力図はどのように変わるのだろうか。ガチンコライバルの3車種をさまざまな角度から比べてみよう。
新型セレナ e-POWER/ガチ実走テストで見えた大きな進化!
●文:川島茂夫
【ファミリーの大本命】ミドルミニバン3強比較
2ℓ級1BOX型ミニバンは乗用車でも最も安定した市場と考えていい。その理由のひとつが、道具としての利便性が最大の評価要点となることだ。ならば、その優劣が選択の決め手か、といえばそうでもない。市場からの要求の大きな部分を取りこぼすようなことはしていない。しかも「実用性」という明確な要求である。もちろん、優劣や得意面は存在するが、基本線がしっかり押さえてあれば、そこは細分化されたユーザーニーズへの対応にしかならない。要はどのモデルも非常に高いレベルの完成度にあり、その差や違いは個性といっていい範囲なのだ。
セレナはデュアルハッチや居住積載のアレンジに優れたシート機能に、自動運転化技術をリードするプロパイロット2.0の導入が実利での訴求点になる。
ノア/ヴォクシーは低床設計と乗降時の安全性にも着目した安全&運転支援機能。安価なOPで装備できる格納式サイドステップもユーザー視点のメリットである。
ステップワゴンはすっきり格納のサードシートで2列シート使用での積載性を高め、レジャーユースでの使い勝手が見所。標準ガソリン車にダウンサイジングターボを導入して走行性能の嵩上げを狙ったのも特徴である。
走行性能では動力性能面の余裕が重要。セレナはe‐POWERのバージョンアップが新型の注目点だが、快適性や余力感でライバルを上回るものの「ハイブリッドかガソリンか」という選択はやはりコスト面が焦点になる。些か乱暴な論法だがe‐POWER、トヨタ・スプリット式、e:HEVのドライブフィールや性能特性の相性が選び分けでは重要だ。
それぞれに得手不得手はあるものの基本ニーズに対しては決定的な差にならない。コスパ絡みで得手不得手の評価は優劣より個性と理解したほうがいい。2ℓ級1BOX型が他市場に比べるとリピート率が高いのも個性と相性と考えれば分かりやすい。実用性重視のユーザーは慣れ親しんだ機能や使い勝手に魅力を強く感じるのだ。
新型セレナのリピート率は相当高そうだ。従来型以前のユーザーなら問答無用で乗り換えたくなるだろう。ノア/ヴォクシーやステップワゴンのユーザーを取り込めるかというと微妙だが、保守派の他車ユーザーも見過ごせない存在なのは間違いないだろう。
NISSAN セレナ
●価格帯:276万8700~479万8200円
日産のデザインキーワード、Vモーションがより洗練された印象に。個性的でありながら、品の良さも感じさせる。
パワートレーンの進化とフットワークの良さが特徴
スマートセンターマルチシートの形状を変更してe-POWER車にも採用。デュアルバックドアやサードシートスライド機構など基本的なキャビン実用性や居住性は従来車と大きく変わらない。生活の場からレジャーまでユーザーの実践視点で見た実用性は新型になってもセレナの特徴である。走行ハード面では発電用に特化した新型の1.4ℓエンジンや電子制御ブレーキの導入などシステム全般を一新した第二世代e-POWERを搭載。プラットフォームは従来車の改良型だがドライバーにも同乗者にも負担の少ないフットワークを実現している。
メーターとナビモニターが一体化したような先進的なグラスコックピットが特徴的だ。
多彩なアレンジ機能を備えている後席シート。ロングドライブでも乗り疲れしない腰のある座り心地だ。
前後シートスライド機構も備えている3列目シート。格納は左右跳ね上げ式となる。
パワートレーンの見どころ
第2世代に進化したe-POWERが特徴
駆動力をすべて電動で賄うシリーズ式を採用するが、エンジン(発電機)やPCUなどをハイブリッドに特化した設計としているのが第2世代e-POWERの特徴。なお、ガソリン車はFWD/AWDが設定されるが、e-POWER車はFWDのみの設定となっている。
先進安全&運転支援の見どころ
全車に標準装備される数々の機能が見どころ
高速道路ハンズオフ走行を可能としたプロパイロット2.0が注目されるがルキシオン限定。その他はプロパイロットとなる。SOSコールなどが用意されるものの、衝突回避機能も運転支援も最新の標準型の印象。ただ、全車標準装備となってコスパは大幅改善されている。
装備面の見どころ
キャビンの実用性を高める工夫が満載
1BOX型最大の特徴、キャビン実用性を高める装備が注目。具体的にはデュアルバックドアとサードシートスライド機構、ロングスライドのマルチセンターシート。日常やレジャーの使い勝手向上の補助になり、ベーシック仕様から標準装着されるのも高ポイント。
【おすすめグレード】e-POWER XV
さすがにルキシオンは高価。ファミリー&レジャーでのコスパを考えるなら、多少の贅沢を求めてもXVかハイウェイスターVが狙いだろう。なお両グレードとも防水シート仕様も選べる。パワートレーンは余力やドライバビリティを重視するならe-POWERだ。
TOYOTA ノア/ヴォクシー
●価格帯:(ノア)276万~389万円、(ヴォクシー)309万~396万円
ノア/ヴォクシーともに押し出し感が強いフロントマスクが特徴的。スズキからはOEMでランディとして発売中。
手堅いパッケージング+充実した先進機能の数々
現行型ではGA-Cプラットフォームを導入しているが、先代が採用した低床型プラットフォームとの合体仕様でもあり、実質的には専用プラットフォームと考えていいだろう。1BOX型では比較的全高が低いが室内高にゆとりがあるのは低床設計の賜だ。もっともキャビン機能に関しては手堅い設計であり、同カテゴリーのユーザーニーズの最大値を取るような設計。現行型の見所は一新されたパワートレーンと先進運転支援機能。とくにスマートフォンによる車外からのリモコン駐車や高速道路渋滞時ハンズオフなど先進運転支援機能はトップレベルにある。
機能的にまとめられたインパネ回り。ソフトパッドも効果的に配されており質感も上々だ。
前後に大きくスライドできる2列目は余裕たっぷり。低床設計のため乗降もしやすい。
3列目シートの格納が片手で行えるほど簡単! 車内への出っ張りが少ないのもポイント。
パワートレーンの見どころ
ハイブリッド車、ガソリン車ともに大きく進化している
ハイブリッド車には1.8ℓエンジンを核としたスプリット式を採用するが、電動系は新開発されている。AWD車は後輪駆動用に30kWモーターを用いたE-Fourを採用。ガソリン車のエンジンも世代交代し、高熱効率型のダイナミックフォースエンジンとなった。
先進安全&運転支援の見どころ
先進的な機能の数々を先取りで装備している
対歩行者/自転車の対応力を強化したセーフティセンスの基本機能に加えてチームメイトに用意される車外からのリモコン駐車機能、高速道路渋滞時の運転支援機能等がとても充実している。しかも、セーフティセンスを全車標準とし、チームメイトもX以外に設定。
装備面の見どころ
これは嬉しくなる! 同乗者への優しい配慮
1BOX型の基本的な使い方や機能を磨き込んでいるのが特徴。シート機能面ではセカンドシートの超ロングスライドやサードシートの収納作業性など。また、子ども等の乗降性向上で役立つドア連動式サイドステップを圧倒的低価格で全車にOP設定するのも注目。
【おすすめグレード】ハイブリッド G
最新の運転支援機能を求めるならG以上が狙い目。ただし、GでフルOPに近くなるならZを選んだ方が買い得感は高い。予算に余裕があるならクラス最良燃費のハイブリッド車を勧めるが、装備重視ならガソリン車を選んでグレードをアップするのも賢い方法だ。
HONDA ステップワゴン
●価格帯:305万3600~391万2700円
ナチュラルなイメージのエアー(写真)のほかに、押し出し感を強めたスパーダもラインナップ。どちらも直線的を活かしたデザインだ。
直線を上手に活かした清潔感あるエクステリア
先代の売り物だった「わくわくゲート」は廃止されてしまったが、反転床下落とし込み式のサードシート格納によりレジャー用途での使い勝手に優れている。現行型では外観のイメージも二代目を思わせるデザインを採用。シンプルで使い勝手のいい洗練された道具感が印象的だ。パワートレーンはシリーズ式をベースに巡航用直動機構を備えたシリーズ/パラレルのe:HEVと1.5ℓターボのガソリン仕様を用意。1.5ℓターボのパワースペックはNA2ℓ相応だが、最大トルクの発生回転域が幅広いため実動力性能ではNA2ℓを上回っている。
モダンリビングのような雰囲気のインテリア。トレイやポケット類などの配置も機能的だ。
ソファのように寛げるたっぷりとした座り心地のシート。車内の明るさも魅力的だ。
3列目シートの格納方式が特徴的。完全に床下にしまえるため、車内空間への影響もない。
パワートレーンの見どころ
凝ったメカニズムのHEV。ターボエンジンも選べる
ハイブリッド車にはe:HEVと名付けられた高速巡航のみ作動するエンジン直動機構を備えたシリーズ/パラレル切替式を採用。ガソリン車は1.5ℓのダウンサイジングターボを搭載。ハイブリッド車/ガソリン車ともにAWDには機械式の電子制御型を採用する。
先進安全&運転支援の見どころ
クラス標準レベルだが自然な制御が魅力
対歩行者接触回避制御時の操舵支援機能など最新のホンダセンシングの標準機能を採用。全車標準装着だが側後方接近車両警報のBSMはスパーダ系のみに装着。採用されている機能は現在の標準レベルだが、制御の仕方が自然で感覚的に馴染みやすいはずだ。
装備面の見どころ
ゆったりと寛げる車内。キャプテンシートが魅力
格納作業に若干の馴れは必要だが、サードシート格納時の積載性や見栄えのよさは同車のセールスポイントのひとつ。また、セカンドキャプテン仕様を全車に標準設定とし、ベンチ仕様をOPとするなど少人数で積載用品が多いレジャー用途を重視した設計だ。
【おすすめグレード】e:HEV スパーダ
シンプルに実質機能優先でまとめたエアーがナチュラル派には魅力だが、BSMやパワーテールゲートなどがスパーダ系専用になるのが悩み所。安全や利便性のグレードアップを望めばスパーダ。パワートレーンは長距離用途の頻度が高いほどe:HEVがおすすめだ。
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外観はエアー、内装はスパーダを求めてる人は一定数いると思うのだが…ホンダはこういうところで顧客を逃がしてると思う。
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