コルベットの進化に歴史的な変革
2019年7月に発表された第8世代『シボレー・コルベット』(C8)は、まさにコルベットの進化に歴史的な変革を生み出したモデルだった。その最大の特徴は、それまで7世代にわたって受け継がれてきた、フロントエンジンの基本設計をミドシップに変更したこと。
【画像】今年1月にアップデート!最新C8世代『シボレー・コルベットZ06コンバーチブル』 全45枚
これはもちろん世界のスーパーカーに対抗する運動性能を得るためであり、コルベットがそれまで主戦場としてきたGTレースでその戦闘力をさらに高めるための策でもあった。
C8のミドシップに搭載されるエンジンは、まず502psの最高出力と637Nmの最大トルクを誇る、6.2LのV型8気筒OHV(LT2型)から始まった。2021年10月には、さらに高性能な5.5LのV型8気筒DOHCエンジン(LT6型)を646ps、623Nmのスペックで搭載した、ハイパフォーマンスモデルを追加設定。
そう、クーペとコンバーチブルの両ボディが選択できるこのモデルに与えられた称号こそ、コルベット伝統の『Z06』だった。ファンならずとも、このZ06という車名(記号)がいかに価値あるかは十分にご存知だろう。
最初に登場したのはC2の時代
最初にZ06がRPO(レギュラー・プロダクション・オプション)として、コルベットで選択が可能になったのは1963年、C2の時代である。カスタマーはこのパッケージを選択するだけで様々なレース用アイテムを装備した、いわゆるレース仕様のコルベットをオーダーすることが可能になったのだ。
だがこのZ06は、ここから長い沈黙の時代を迎える。それが復活したのは2001年、コルベットはすでにC5にまで進化を遂げていた。
その後C6、C7でもZ06はコルベットのハイパフォーマンスモデルとして人気を博すが、C7ではそれまでの自然吸気に代わり、6.2LのV型8気筒OHV+スーパーチャージャーエンジン(LT4型)を採用。最高出力と最大トルクは659ps、881Nmにも達している。
話をC8のZ06に搭載されるLT6型エンジンに戻すことにしよう。このパワーユニットは、2019年からシボレーがサーキットに投じている『コルベットC8.R』に搭載されたものをベースとするものだ。
鍛造チタン製のコンロッドや鍛造アルミニウム製ピストンを使用し、低重心化と高強度を実現。クランクシャフトは高回転域でのスムーズさに優れるフラットプレーン(180度クランク)とされ、さらにエンジンブロックは上下に分割されたアルミニウム製ブロックで構成されている。
潤滑方式はもちろんドライサンプ。シボレーによればエンジンスピードがレッドゾーンに達した時でも、オイルタンクには96%のエンジンオイルが蓄えられる構造が実現しているという。ミッションは8速DCT。駆動輪はもちろん後輪となる。
これまでになかった斬新さと凄味
フロントからミドシップへとV型8気筒エンジンの搭載位置が移動したことで、C8、すなわち最新世代のコルベットのスタイルには、これまでにはなかった斬新さと凄味が生み出されるようになった。
C7で伝統のラウンドリアハッチがエアロダイナミクスを最適化するために廃止された際も時代の変化を感じさせられたが、やはりC8のボディから感じるのは最新のスポーツカー、いやスーパースポーツカーとしての機能美だ。
リアに345/25ZR21というサイズのタイヤを装着するZ06は、リアフェンダーがスタンダードな『2LT』や『3LT』と比較してワイドなデザインとなり、全幅は85mm拡大されている。当然のことながらリアフェンダーの一部を構成するサイドエアベントも大型化され、冷却効率はさらに高められることになった。
今回試乗したZ06は、キャビンのスイッチ操作によってオートマチックで、コルベット史上初となるリトラクタブルルーフのオープン&クローズが可能なコンバーチブル。
そのプロセスはスムーズで、かつそれに必要な時間も短い。さらに約48km/h以下であれば走行中でもふたつのスタイルを使い分けることができるのだから、コンバーチブルを選ぶことに一切の抵抗はないだろう。
ちなみにこのZ06では、コンバーチブルを選ぶとブレンド製のカーボンセラミックブレーキが標準装備となる。タイヤはミシュラン製のパイロットスポーツ4S ZPと、こちらも万全の備えだ。
2026年モデルでインテリアデザインを一新
ブラックのボディカラーでは標準となる、アドレナリンレッドをアクセントカラーに用いたインテリアは、これもまた実に刺激的なフィニッシュだ。
2026年モデルではインテリアのデザインも一新され、センターコンソールや14インチサイズに拡大されたメーターディスプレイ、12.7インチのセンターディスプレイ、さらに6.6インチのサブディスプレイで必要な情報を得ること、そして様々な操作を行うことが可能になった。
インフォテインメントシステムがグーグル化されたことや、専用アプリによって車両の管理などを行うことができるようになったのも、カスタマーには嬉しい改良ポイントといえるだろう。
ミドシップに搭載されるLT6型エンジンは、簡単な表現を用いるのならば高回転型だ。それは646psの最高出力が8550rpmで発揮されるという事実からも証明されるところで、一方6300rpmで得られる623Nmの最大トルクは2LTや3LTのLT2型エンジンに対してはわずかに小さい。いわゆる回転でパワーを稼ぐタイプのエンジンなのだ。
実際に感じるパワーフィールは、確かに6000rpmを超えたあたりから鋭さを増し、さらにその印象はトップエンド付近まで確実に続く。このZ06では『ツアー』、『スポーツ』、『トラック』、『ウェザー』、そして『マイ』と『Z』というふたつのインディビジュアルモードが用意されているが、オンロードではスポーツでも十分にスパルタンな走りを楽しむことができるだろう。
その走りは楽しく、実に刺激的
マグネティックライドコントロール機構を備える前後のZ06パフォーマンスサスペンションも、路面のコンディションに見事に追従し、コーナリング時のロールもその速度は絶妙にチューニングされている。さらに電子制御LSDが、コーナーからの立ち上がりで驚くほどのトラクション性能を感じさせてくれるのだから、その走りは楽しく、実に刺激的だ。
前でも触れたカーボンセラミックブレーキのタッチも素晴らしい。1740kgというウエイトを狙ったとおりで減速するフィーリングは、このZ06の大きな魅力といえる。
シボレーはこのZ06をさらに超えるモデルとして、5.5LのV型8気筒DOHCツインターボエンジン(LT7型)を1079psで搭載した『ZR1』や、それに『E-RAY』のハイブリッドシステムを組み合わせた『ZR1X』を1250psで発表している。
現在の段階ではシボレーはこの両車を輸出する計画を持ち合わせていないようだが、叶うのならばそれを日本の地でドライブするチャンスを与えてほしいと思う。第8世代のコルベット(C8)は、これからも様々な話題で我々を刺激してくれる存在となりそうだ。
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