インフラの不整備が無理な右折を発生させる
長野県の松本市長が「松本走りをやめて」と言い始めた。この流れを受け「伊予の早曲がり」や「茨城ダッシュ」「名古屋走り」など各地に潜在してきた危険な運転マナーを批判する方向になっている。なぜこういった危険な走り方になるかといえば、話は簡単。道路事情が悪いからだ。松本市長は自分の役割を改めて考えて頂きたいと思う。 解り易い例を2つ。アメリカでクルマに乗った人なら、皆さん「左折ルールが違いますね」(右側通行なので日本の右折)と感じることだろう。基本的に直進車来るときは絶対左折しない。少し強引に左折しようものならパッシングやホーンで抗議されるし、怒鳴られることだって珍しくない。警察居れば即座に捕まる。禁じ手です。 したがって対向車多い割に左折信号の無い交差点だと1回の青信号で2台くらいしか左折できない。その代わり交通量の多い交差点は左折レーンと、交通量に見合った時間分の矢印が出るため渋滞しない。はたまた、一般の道路は中央車線を左折用に確保してあるため、直進車優先でも交通の円滑な流れを乱すことはない。 対極的なのがベトナム。道路に対し交通量多いので、左折の際(ベトナムも右側通行)対向車途切れるまで悠長に待っていたら大渋滞になってしまう。そこで相当強引に左折していく。日本人からすれば対向車に突撃するようなイメージ。対向車も殺そうとせず、譲ります。松本走りで驚いていたらベトナムじゃ運転などできない。 というのがローカルルールだ。道路の基本的な役割は「流れ」。右折レーンの無い道でアメリカの如く「直進車最優先」という走り方をしていたら、大渋滞になってしまう。松本市に行けば解るけれど、右折レーン無くて交通量の多い交差点がたくさんある。強引に見える右折の多い松本走りは、このインフラで渋滞を防ぐための方策です。 したがって松本市長が「松本走りをやめろ」と言うのは、市民に対し「市内の大渋滞を容認しろ」と強制してるのと同じ。為政者としちゃ愚かです。本当に松本走りをやめさせようとするなら、道路の改良から始めなくちゃならない。というか、それこそ市長の仕事じゃなかろうか。真っ先に行うのは右折レーンの拡充だ。 考えていただきたい。道交法に代表される我が国の交通ルールは、大半が昭和30年代までに作られ、その後、ほとんど見直されていない。発展途上国と同じ状況だと考えていいだろう。欧米のような自動車交通の先進国にしたいのなら、抜本的な道交法の改定や道路構造の見直しから着手しなければならないと思う。 歩道と車道をしっかり分離することに始まり、免許すら持たない無防備な自転車と、クルマを同じ場所で走らることだって無謀である。信号のタイミングもデタラメだから渋滞を招く。横断歩道の場所や、歩行者を守るガード類の設置だって誰もチェックしていない。道路の円滑な流れと安全を総合管理する部門を創設したらいかがか。
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