モータリスト合同会社が、ファンティックのニューモデル「Caballero Scrambler 700(キャバレロ・スクランブラー700)」の国内デリバリーを開始した。同車両にはヤマハのMT-07やテネレ700などにも採用される水冷2気筒のCP2エンジンが搭載されている。モータリストではこのマシンの発売に合わせ、フリージャーナリストであるクラウス=ネネヴィッツ氏によるインプレッション記事を公開した。
Caballero Scrambler 700、準備出来ました!待望の2気筒700ccエンジンを抱えるスクランブラー700に広報車を用意! 在庫も潤沢にそろえ、いよいよ本格的にデリバリー開始!
ファンティック初の2気筒エンジン - 2022年のEICMA(イタリア・ミラノ国際モーターサイクルショー)でデビューし、2023年秋に量産が開始されたCaballero Scrambler 700(キャバレロ・スクランブラー700)。
ファンティック初の2気筒エンジンを搭載したスタイリッシュなスクランブラーは、当初極く限定された台数だけが待ち望んでいた各マーケットに送られましたが、瞬く間に完売。次の入荷が望まれていました。日本でも予約いただいた車両を満たすには十分ではなく、続く配車が待たれていたのですが、このほどようやく車両の準備が整えられ、到着が見込まれるようになったというわけです。
ファンティックが入念にテストし、仕上げたヤマハ製CP2エンジンは、オリジナル以上に扱いやすいトルクを低回転から余すところなく発揮。トップエンドまで伸びやかに回るエンジンもファンティックのチューニングによるもので、最新の環境規制に対応しながらも、ピークパワーもオリジナルを超える仕上がりとなっています。
ドイツ人ジャーナリストによるインプレッション現地試乗を行ったフリージャーナリスト、クラウス=ネネヴィッツによるインプレッションを以下にお伝えします。キャバレロ・スクランブラー700のご試乗の前に、ご参考となれば幸いです。
ひとたびセルモーターを回すと、その先に用意される楽しさ満載のスクランブラー・スタイルのマシンならではのエキサイトメントに、夢中になる気持ちが止められずにいた。そう、私はかつてスクランブラーと呼ばれるモデルをガレージに置いて楽しんでいたからだ。スロットルの引き代がマシンをダイレクトにぐいぐい引っ張っていく高揚感。例えばアドベンチャーバイクに見られるようなロングトラベル・サスペンションを沈めながら操作するといったこともなく、ひたすら楽しいレスポンス。サイドスタンドを上げ、スロットルを開けたとたんにしびれるような加速が私の脳髄を直撃した。シングルエンジンのレスポンスにも劣らない俊敏さと、それを超えるパワー!
ワオ!これこそが「スクランブラー」を名乗るモデルに期待する走りだ!キャバレロ700はそのコンパクトなボディに74hpのパワーを与えられ、車重も175kgほどまでに抑え込まれている。ヤマハ製のエンジンと、ファンティックが誇る車体構造が軽量なモデルを作り上げ、キャバレロ700をいくつもの連続するコーナーを駆け抜けるワインディングの最高の相棒とし、同時に必要とあれば、軽々とウィリーを愉しめるエクストリーム・バイクへと変身させることも可能な仕上がりとしているのが感じられる。
コンパクトなフレームに搭載されたエンジンは、同じエンジンを共有するアドベンチャーバイクのヤマハ・Tenere 700よりもはるかに低い位置に重心を持たせているため、その豊かなトルクが低回転からあふれ、純粋に前に進むためだけに使い切ることができる。同時に、エンジンはライダーを心地よくさせ、振動でライダーの神経を逆なですることなく、ライダーの直感を刺激してくれるのだ。キャバレロ・スクランブラー700の場合、エンジンはコンパクトなパッケージとうまく調和しており、中排気量セグメントのエンジンの中で最も楽しいフィールを味わせてくれるといっていいだろう。
快適に仕上げられたシートは、マシンを思いのままに走らせるという点でも極めて優秀な作りといっていいだろう。イタリアのトレヴィーゾ近郊にあるモンテロのカーブの多い山岳コースでは、まるでキャバレロ700のために作られたかのように、シャシーがライダーをリードして、次々と現れるカーブを思うがままに曲がっていく。ピレリ・スコーピオン・ラリーSTRタイヤを装着したキャバレロ700は、完璧な方向安定性と正確さでライダーの思うがままに走りを演出してくれている。ワイドなハンドルバーは、好みもあるかもしれないが、もうちょっと絞り込めていれば外乱の影響を受けにくくなるだろうし、よりコンパクトに旋回でき、多くのライダーにこの快感を味わってもらえるだろう。
マルゾッキ製で150mmのストロークを持つサスペンション・ユニット(フロントは倒立式45mm フォーク、リアは一体鋳造アルミ製スイングアームにプログレッシブ・レバー・リンクを備えたモノショック)は、極めて応答性に優れ扱いやすく、良い仕上がりだ。激しいブレーキングでもフロントフォークはボトムすることなく、マシンを前後とも段差や高速に対して心地よくプログレッシブに反応させ、たとえ悪路を走行するときであっても、快適な乗り心地を提供している。
グラベルロードでは、セッティングはやや硬めに感じるかもしれない。とはいえ、容易にボトムさせないという意味では正しいセッティングだ。ABSとトラクションコントロールをオフにして走らせた時のキャバレロ700は、ダート走行では予想をはるかに超えたパフォーマンスを見せ、オフロードでも走らせることが少なからずあるような本格的スクランブラーの要件を十分に満たしているが、ハンドルバーがもう少し高ければさらに有利だろう。同時に、騒音レベルも環境に適合しており、2つの可憐なリアサイレンサーから喉の奥まで響くようなサウンドが提供されている。触媒コンバーターに先行するエンジン下のボリュームあるプレサイレンサーは、ユーロ5基準への適合を可能にし、吸気音とエンジン音はごくわずかなレベルにまで抑え込んである。
なお、ストリート、オフロード、カスタムの3種類が用意されるライディング・モードは、エンジンのパワー・デリバリーには影響せず、トラクション・コントロールとABSのみの設定を変更させる仕様だ。
ファンティック キャバレロ700は、スクランブラーを名乗るシングル・シリンダーのエンジンを搭載したモデルたちが求め、得られない全てを兼ね備えたマシンといっていいだろう。コンパクトで、扱いやすく、車重は控えめに抑えられ、エンジンはパワフルで、しかし潤沢なトルクが提供され、精微な車体がツイスティなワインディングでも楽しさにあふれるライディングを提供するのだから。
現在のところ、ファンティックは美しいスタイリングを持ちながら、純粋にライディングを愉しめるマシンを求めているすべてのライダーへの最も近い回答をこのキャバレロ700で用意した、と言えるだろう。エンジンを提供するヤマハの、このCP2エンジンへの需要が極めて高いため、残念ながら全世界でわずか1500台に満たない生産しかできないキャバレロ700だが、その台数では例えばかつてBMWが製造したハスクバーナ・ヌーダのようにあっという間に幻のモデル、となりかねないが、この仕上がりの良さは多くの量産される「スクランブラー」を名乗る二気筒マシンをはるかに凌駕する楽しさにあふれている。
幸いなことに、ファンティックはこの二気筒エンジンを今後も真摯に扱い、ラインアップを拡充させる計画だという。この実力であるならば、間違いなく多くの市場で喝采を持って迎えられることだろう。
FANTIC CABALLERO SCRAMBLER 700 主要諸元■希望小売価格/175万円(税10%込み)
■シート高/830mm
■軸距/1460mm
■車両重量/175kg(ガソリン抜き)
■燃料タンク容量/13L
■エンジン/水冷4サイクル2気筒
■排気量/689cc
■弁形式/DOHC
■トランスミッション/6速
■メインフレーム/クロモリ/ダイアモンド構造
■安全装備/コーナリングABS
■最高速/トラクションコントロール
■ブレンボ製ディスク/330/245mmブレンボ
■サスペンション
・マルゾッキVRM/45mm
・マルゾッキVRM(R)
■タイヤサイズ
・110/80R19(F)
・150/70R17(R)
お問い合わせモータリスト合同会社
TEL/03-3731-2388
リリース = モータリスト合同会社(2024年1月31日発行)
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みんなのコメント
せめてドゥカティやトライアンフのスクランブラーと同価格帯にしないと日本国内じゃ勝負にならないんじゃ
この強気の価格設定が元サインハウスの社長らしいわ・・・・