市販車初となるはずだったアウディA8のレベル3導入が延期
自動運転がいま、大きな曲がり角に立っている。それは、レベル3の壁だ。自動運転の自動化を示すレベルには、レベル1からレベル5まで5段階ある。レベル1とレベル2については、トヨタ「セーフティセンス」や日産「プロパイロット」など、一般的にADAS(高度運転者支援システム)の技術領域として量産化されている。
その一歩先であるレベル3については、アウディがドイツ国内の高速道路で速度を抑えるなどの条件付きで2018年秋から最上級モデルA8への実装を目指してきた。だが、アウディはレベル3の市場導入の延期を発表した。延期の理由は、社会インフラなどレベル3に対応するための周辺環境が整っていないからだ。
レベル1からレベル2のステップと、レベル2からレベル3へのステップは大きく違う。一般的に「レベル3の壁」と呼ばれるほど、レベル3を量産化するのはやはり難しいのだ。
レベル3では自動運転と運転者の操作受け渡しが鍵
自動運転のレベルで、もっとも重要なことは、運転の責任の所在だ。レベル1とレベル2では、運転の責任は運転者にある。一方、レベル3以上では自動運転の責任は自動車側のシステムに移る。
レベル4とレベル5は、運転者がいない完全自動運転を想定しているため、運転の責任が自動車側にあるのは当然だ。ところが、レベル3では、自動車が運転の責任を負っていても、自動走行が不可能だと自動車側が判断した場合、運転者が運転しなければならない。こうした、運転者と自動車が自動運転の操作を受け渡しすることを、オーバーライドという。
オーバーライドを行うためには車内での運転者の状態をつねにモニタリングする必要があるなど、新たなる技術の開発を進めることや、新たなる機器をいかにコストを下げるかといった課題が出てくる。アウディのみならず、日系自動車メーカーでもレベル3の研究は進んでいる。実際、筆者は技術の詳細の非公開を約束した上で、さまざまなメーカーのレベル3実験車両を試乗している。
アメリカ・トランプ政権は自動運転に消極的
このほか、レベル4とレベル5については、ベンチャー企業を中心に世界各地で実証試験が続いている。また、トヨタは2018年1月に米ラスベガスで開催された世界最大級のIT・家電見本市「CES2018」で、完全自動運転のサービスカー「e-パレット コンセプト」を発表。さらに、2018年10月には、トヨタはソフトバンクとの完全自動運転を含めた協業を発表して、自動運転における主導権を握ろうという動きを見せている。
だが、ちょっと気になることがある。それは、アメリカだ。
トランプ政権になってから、国として自動運転に積極的にかかわろうとする動きが鈍っている印象があるのだ。グーグル(親会社はアルファベット)やアップル、さらにデトロイト3(GM、フォード、FCA)が完全自動運転の量産化に向けて最終調整の段階に入っているのだが、どうもトランプ政権は「乗り気じゃない」といった雰囲気なのだ。
自動運転について、道路交通法や道路車両運送法においては、国連の欧州経済委員会で日本も含めた世界各国の意見が取りまとめられている。一方で、アメリカの国としての出方が不明瞭である。果たして自動運転、これからどのように世の中に広まっていくのか? 現時点では、先行き不透明と言わざるを得ない。
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