ホンダの「スーパーカブ」にまたがる度に、僕(木下隆之)はその合理性に感心させられる。いまでこそ趣味性も認められているスーパーカブだが、かつては商用的な目的で開発されたわけで、だからこそ使い勝手を最優先に開発された痕跡がアリアリなのだ。
クラッチ操作を必要としない独自のチェンジ機構は、そば屋の丁稚が片手で岡持ちを担ぐには都合が良い。
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燃料タンクはシート前方ではなくシート下に配置され、ハンドル手前の足元には空間があるから、ママチャリのように片足を前に回してまたぐことができる。そもそも後ろの荷台に荷物を山積み前提だから、片足を後ろに回してまたぐこともできないわけで、だからこの位置とフレーム形状になったのであろうと想像する。
片手運転でシフトチェンジができるという点で、スーパーカブは商業的な世界を果てしなく広げた。大発明だと言って良い。
そこで思うのは、トヨタのプロボックスとサクシードである。その名を聞いてピンとくる人は少ないかもしれないが、コンパクトサイズのバンであり、商用車だから4ナンバーだ。主にセールスマンがお得意様回りをするための営業車として、スーパーカブ同様に日本の経済を支えている。
プロボックスとサクシードには、スケッチブックサイズの大きな地図が挟み込みやすい細工がされている。カーナビの時代にそれが必要なのか疑問だったのだが、どうやらマストアイテムらしい。曰く「お得意様の場所も覚えとらんのか!?」と上長に叱られるから。
カップホルダーは四角く縦に長いサイズが収まるようにレイアウトされている。仕事は朝イチで事務所を発ってから夕方の帰社まで、一日中外回りをしているケースが多い。そんな彼らにはスーパーかコンビニで買える1リッターサイズの紙パックが安価で都合が良い。だが、スクリューキャップではないから、一度開封したら横に倒せない。そのために、四角く縦長のカップホルダーなのだ。
助手席の広いテーブルは、車内で愛妻弁当を食べるときのため。サンバイザーのホルダーが多いのは、営業所が契約するガソリンスタンドの法人カードと、得意先の駐車場カードのためだ。
ちなみに、車両価格は200万円をわずかに下回る。と言うのも、営業車購入の決済権を握っている人の多くは、「贅沢はさせられない。200万円以下にしなさい」となるからだそうだ(聞いたハナシ)。
かくかくしかじか、本来の目的が商用的な使い方となると、趣味性の高い乗り物とは開発スタイルが異なる。
スーパーカブとプロボックス、サクシードには、高度成長期の日本経済が透けて見える気がする。
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みんなのコメント
カブが生まれた時代は現代のような車社会ではなく、人々が移動手段そのものに飢えていた時代でした。そのためユーザーを選ばず運転しやすくてどんな用途にも耐えうる単純な足として開発されたと聞いています。
商用ではなく実用車として開発されたというのがより正しい解釈かと思います。細かい事ですが大きな違いかと。