2025年9月4日、ホンダ新型プレリュードが正式発表された(発売は5日から)。e:HEVを核に「操る喜び」を磨き込んだ2ドアスペシャリティスポーツだ。月間販売台数300台、価格6,179,800円という“量より質”の勝負に出つつ、Honda S+ Shiftなど新制御でハイブリッドの走りを再定義。都内で実施された記者発表会で、ホンダはこの新型プレリュードを「2027年から始まるホンダのハイブリッド戦略強化に向けた”前奏曲”と位置づける」と説明された。前奏曲……な、なるほど。
文:ベストカーWeb編集部、画像:森山良雄、ホンダ
【新型プレリュード正式発表】なぜ今の時代に2ドアクーペ? ホンダが2027年から本気出すHV戦略の旗艦&前奏曲だった
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「ホンダのハイブリッド車は走りがいい」というイメージの牽引役
ホンダがハイブリッド車の販売と開発とイメージ牽引に、やっと本気を出す。新型プレリュードは、そのイメージリーダー役になる。
そう考えると、「なぜ今の時代にプレリュード復活?」、「このご時世にまっさらな新型2ドアクーペはきつくない?」、「プレリュードって若者のクルマのアイコンだったでしょ、それが新型で最新装備がついているとはいえ600万円超というのはしんどいのでは?」といった疑問に答えがでる。
ホンダはそういう事情をすべて踏まえたうえで、「それでもやる」、「めちゃくちゃ走りのいいクルマを出して、ホンダ製ハイブリッド車のイメージを引っ張る」と決めたわけだ。
以下、都内で実施された新型プレリュード記者発表会の様子とともに、新型プレリュードの概要をお伝えしたい。
都内ホテルで新型プレリュードの記者発表会が実施された。発売は2025年9月5日~予約開始。車両本体価格は6,179,800円~
新型プレリュードは、ハイブリッド=燃費車という固定観念を壊し、ホンダのハイブリッド車は走行性能がすばらしい、というイメージを牽引する役割を担う。キモはe:HEVの深化と、視覚・聴覚・触覚まで統合した「操る喜び」の再構成だ。グランドコンセプトは“UNLIMITED GLIDE”。名のとおり、電動化時代のスペシャリティスポーツ像を提示する「前奏曲」である。
発売は2025年9月5日。全国メーカー希望小売価格は6,179,800円。量を追わず、希少性と体験価値で勝負する価格・供給設定だ。質疑応答では「年間3,500台、生産は寄居工場。まず日本、市場反応を見つつ年内に米国も予定」とも明かされた。往年の憧れ層=50代・ポスト子育て層をメインに据えつつ、若年層にも実車体験を広げる布陣と読める。
パワートレーンの最大のトピックは「Honda S+ Shift」。2モーターハイブリッドでありながら仮想8段を用い、加減速に同期してエンジン回転とサウンド、メーター表示まで一体制御。電動のダイレクト感と有段ATにあった「昂ぶり」を両立した。
さらになめらかに減速する「コースティング制御」を初採用し、都市部の信号間でも“滑空する”走り味を演出。ハイブリッド車の弱点だった“官能”を、制御で作り込んだ点が新しい。
現代的な美しいフォルムとボディサイズ
プロポーションは、全高に占めるタイヤ外径比をスポーツカー主流の約50%に設定した“ワイド&ロー”。直進安定と旋回性のバランスを左右するトレッド/ホイールベース比も最適化される。シャシーはシビックタイプRをベースに専用セッティング。デュアルアクシス・ストラット、アダプティブダンパー、等剛性ドライブシャフト、大径19インチタイヤなど、ハイブリッド専用車であっても走りのコアはスポーツそのものだ。なにしろシビックタイプRとはいわば兄弟車のような扱い。
空力も低速~高速で一貫した旋回フィールに振っており、ボディの“剛と柔”の取り回しを両立させた作り。ラゲッジはハッチバック式で実用も確保している。
会見は、井上勝史取締役執行専務、川坂英生日本統括部統括部長、山上智行開発責任者が登壇。プレリュードの狙いと特徴がプレス向けに説明された。写真は川坂統括部長
600万円超の車両本体価格は「主要ターゲットは50代以上」と考えがちだが(実際にはそうだが)、かつて「若者向け」の代表車種であったプレリュードだけに「なんとか若い人にも乗ってほしい」という工夫もある。
発売後、全国の一部ホンダディーラーでこの新型プレリュードをレンタカー配備(新型を販社レンタカーに入れるのはホンダ初の取り組み)する。
オンラインの「Honda ON」には2トーンの限定色を設定し、デジタル完結の購入導線も用意した。記者からの「ターゲットは”かつてプレリュードに憧れた50代”にシフトしたんですか?」という質問に、「若い世代にもぜひ乗ってほしい。レンタカーや親子の共同購入など、憧れの継承を広げたい」と強調した。
装備面ではGoogle搭載の9インチディスプレイ、BOSEプレミアムサウンド、Honda SENSING標準装備で“最新の当たり前”も落とさない。ハード・ソフト両面で、所有・体験・共有の導線を束ねている。
2027年へ——“前奏曲”の本当の意味
ここからはホンダ全体の企業戦略の話。新型プレリュードは、ホンダのハイブリッド群の“象徴”として、走りのイメージを先導する役回りを担う。「ホンダのハイブリッド」のイメージと価値を「省燃費」から「官能」へ押し広げるには、ブランドの先頭で“感性の旗を振る”モデルが要る。価格や供給を絞り、体験導線を増やす設計は、そのための戦略配置に見える。
一部繰り返しになるが、ホンダは「2040年にグローバルでEV/FCV販売100%」の旗をまだ降ろしていない。それでも今年(2025年)5月に三部敏宏社長が発表した(事実上の中期経営計画である)「ビジネスアップデート」では、2030年のハイブリッド車の販売台数目標を220万台/年に引き上げると発表。
記者発表会配布資料(全面投影イラスト)。2027年からホンダは「次世代ハイブリッド攻勢」を仕掛けることが明記されている。楽しみ
「ハイブリッド車」とはつまりガソリンエンジン搭載車であり、ホンダはガソリンエンジンの開発にも本気を出すと宣言したわけだ。これにともない、ホンダは2027年から次世代ハイブリッド車を続々と投入する(という計画を明らかにしている)。
新型プレリュードは、まさにその「次世代ハイブリッド車両群」のプレリュード(前奏曲)という位置づけなわけだ。
イメージリーダーとしての役割をまっとうし、幅広いホンダ製ハイブリッド車(e:HEV)ラインアップを展開して、ホンダは国内販売70万台安定販売を目指す。
なお「プレリュード」は初代から5代目まで1978~2001年に販売されており、累計販売台数は約48万台。このたび6代目となるこの新型プレリュードが発売され、24年ぶりの復活となる。
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