現在世界各地で20以上のシリーズが行われるなど、世界的にさまざまなレースシーンで活用されているツーリングカー規定のTCR。そのTCRを使った日本独自のシリーズが、2019年に開催される可能性が出てきた。シリーズの開催を計画しているのは、全日本スーパーフォーミュラ選手権を運営する日本レースプロモーション(JRP)で、JRPの倉下明社長は、計画を認めた。
2014年に、それまでWTCC世界ツーリングカー選手権を手がけていたマルチェロ・ロッティが「新しいツーリングカーを創設する」と、流行していたGT3のバランス・オブ・パフォーマンス(BoP)を参考に、安価なツーリングカー規定を提唱したのがTCR。当初はWTCCで使用されていたTC1、TC2に次ぐカテゴリーとして『TC3』と呼称されていたが、シリーズ創設とともにTCRに改められた。
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当初はセアト・レオン・カップカー、いち早くTCR規定車両を製作したホンダ・シビック等を中心にスタートしたTCRのレースだが、セアトと同じVAGグループのフォルクスワーゲンやアウディ、さらにはプジョー、ヒュンダイ、キア、プライベーターのアルファロメオ等もマシンを製作し、カスタマーやTCRによるシリーズは世界で爆発的に増えた。日本では、スーパー耐久がST-TCRを創設し、7台ほどのマシンが参加しているが、ツーリングカーらしいスプリントでのレースは日本ではまだ開催されていない。
そんななか、すでに7月19日発売のオートスポーツNo.1486でもTCR日本開催の可能性を報じているが、日本でもTCRのスプリントレースが開催される可能性が出てきた。開催を計画しているのは、スーパーフォーミュラのプロモーターであるJRPだというのがここひと月ほど噂されてきたが、このTCR開催について、JRPの倉下社長に話を聞くことができた。
「ご承知のとおり、TCRは世界的に人気が出ていますし、たまたまご縁があって今シーズンWTCRはスーパーフォーミュラ最終戦の鈴鹿でご一緒するかたち(WTCRと併催)になっています。ただ、『前向きに検討しています』というのが現状の正直なところです」と倉下社長は、TCR開催に向けて調整が進められていることを明らかにした。
倉下社長によれば、もともとメーカーから日本でのTCRシリーズ開催に向けて打診があり、その後2017年5月に、スーパーフォーミュラSF19の開発のためにイタリアを訪れた際、モンツァでのTCRインターナショナルシリーズ(ヨーロピアン・ル・マン・シリーズと併催)を観たのがTCR推進に向けたきっかけになったのだという。
「『これはひさびさにレースの原点を見たな』と感じました。スーパーフォーミュラはある意味で、『いくところまでいっている』先進のレースですが、一方でTCRは非常に清々しい。好きな人たちが自分でクルマを買って、家族が応援するような雰囲気ですね」
「我々JRPはスーパーフォーミュラをメインでやっていますが、トータルで考えてモータースポーツファンが増えて欲しいと思っていますし、そういう意味で、このTCRというカテゴリーにすごく可能性は感じています」
ただ、現状ではまだ課題も多そうだ。スーパーフォーミュラでは現状、全日本F3選手権や二輪併催等のケースがあり、併催の場合はタイムスケジュールに余裕がほとんどない。また、現状でTCR車両はシビック、アウディRS3 LMS、フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR等、日本には10台前後しか入っておらず、エントラントを集めることにも課題が大きい。ただ、この噂に呼応して参戦意思を示すエントラントもいるとか。
「事業としてこれをやるということはまた少し別の次元で考えなければいけない。我々は公益法人ではなく株式会社なので、取締役会もあれば株主さんもいる。事業として取り組んでいくには当然ノーリスクではないんですね。すごくいいコンテンツだとは思っている一方で、なかなか取り組むとなるとハードルもいくつかある状況です。今はなかなか難しいところですね」
その他にも週末で何レース開催するのか等々、課題は山積している状況だが、倉下社長は「本当は今年からやりたいくらいの気持ちはありましたが、やるとしたら来年からやりたいです。来年でないと遅いかな、と思っています」と前向きな姿勢を示している。
激しいバトルが売りのツーリングカーのスプリントレースは、ワンメイクレースをのぞけば日本では1998年に消滅したJTCC全日本ツーリングカー選手権まで遡らなければならない。当時はメーカーが積極的に関与したことによる費用高騰等もあったが、現状のTCRはかなりのローコストだ。果たして日本でのTCR開催は実現するだろうか……? 正式発表を待ちたい。
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