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ホットハッチ三つ巴対決 フォーカスRSに挑むシロッコR 後編 回顧録

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ホットハッチ三つ巴対決 フォーカスRSに挑むシロッコR 後編 回顧録

もくじ

ー 貧相に見えてしまう2台のインテリア
ー やや洗練に欠けるZ
ー すべての面で高い完成度
ー フォーカスの派手な見かけに見合う走り
ー 見た目だけでなく走りでもシロッコRの勝利
ー その他の500万円級ホットハッチ

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貧相に見えてしまう2台のインテリア

シロッコRと比較すると、フォーカスRSのインテリアは値段が半分のクルマのそれにしか見えない。さらにフォーカスRSでは高すぎるドライビングポジションが問題だ。ライバルたちの着座位置の低さを体験してしまうと、魅力がかなり減退してしまう。

今回試乗したシロッコRには電動アジャストシートを含めた本革トリムのオプションが含まれていたせいもあるが、そうでなかったとしても、おそらくRSのキャビンがかなり貧相に見えることに違いはないだろう。

同じくフェアレディZも、そこでかなりポイントを落としている。確かにZのドライビングポジションは、2台の前輪駆動に比べたらもともと本質的にスポーティだ。座面は低く、腕も十分に伸びた姿勢になるのだが、それでもインテリア自体にはシロッコRのような高級感はない。

実際、シロッコRと見比べると意外なほど安っぽく感じられる部分がZにはあり、特にインストルメントパネルと一体になったステアリングコラムの位置を調節するときに発するきしみ音は、どうにもいただけたものではない。

それも含め、第一印象ではZが最下位だ。インテリアに通ずる仕上げが雑な印象が、走り出したときにもまた感じられてしまったからだ。反対にシロッコRはここでも着実に自らの評価を上げ、フォーカスRSもまた同様であった。

やや洗練に欠けるZ

比較的のんびりと60~70km/hくらいで走っていても、Zはライバルたちに比べてうるさく落ち着きがない。確かにエンジンは始動時にも、そして走り出しても響き渡るV6特有の魅力的なサウンドは、それだけで湧き上がる活力を感じさせるし、音質自体も頼もしい。

その一方でエンジンそのもののフィールは粗野であり、決して心酔できるほどの気持ちよさは持ち合わせていないのである。スムーズにして驚くほど能力の高いフォーカスRSや、洗練度ではさらに上を行くシロッコRに比べると、Zのエンジンとトランスミッションは無骨であると言わざるを得ない。

それでも強烈な動力性能で前輪駆動勢を完膚無きまでに叩きのめしてくれたなら、Zにそんな部分も許容できたかもしれない。だが、残念ながらそうではなかった。Zのエンジンが回転数を十分に上げる前に、ターボを装備した2台はたっぷりとしたトルクとフレキシビリティで逃げ切ってしまうのだ。

それも瞬殺に近い。そのたくましいサウンドからは想像しがたいが、Zでこの2台と走る場合には、よほど神経を集中させていなければ一瞬のうちに、下手をすればコーナーに進入する前に置いて行かれかねない。

すべての面で高い完成度

Zに物足りなさを覚えてしまうのは、ひとつにはシロッコRの出来があまりにもいいからだ。シロッコRはトリッキーな道路を、あまりにも何事もなく平然と走り抜けていく。ドラマ性のなさではフォーカスRSさえ超えていると言っていい。そのシャシーの傑出ぶりは、「高出力の前輪駆動車としては」などというエクスキューズ付きではない。同じコースを同じペースで走る際に求められる労力が、Zとはあまりに違いすぎる。

エンジンにしても、全回転域にわたって信じられないほど動力性能が強力であり、しかもその実力を引き出すのは実に簡単だ。スロットル操作への反応も素晴らしく速く、しかもDSGのシフト動作はそれ以上に機敏である。

したがって、シロッコRをドライブするのに難しいところはなにもない。バックミラーに映るZのドライバーが必死で奮闘しているさまをのんびり眺める余裕すらあるくらいだ。ステアリングやシート、それにブレーキからはしっかりとしたフィールが感じられ、エンスージァストが走りに熱中できるクルマに仕上がっている。

このようにすべての面で見事に完成しているシロッコRが比較対象なのだから、Zがまるで荒削りに見えてしまっても仕方なかろう。相手がフォーカスRSともなればさすがに立場は逆転してしまうが、それでも局面によってはシロッコRのほうが安定してスムーズであり、落ち着き払っているように感じられたのも事実だ。

フォーカスの派手な見かけに見合う走り

フォーカスRSには、その派手な見かけを裏切らないだけの中身が備わっている。スカートとスポイラー、それに巨大なリアウイングは見かけ倒しではなく、自分に課せられた仕事に徹したクルマだ。

それはいうまでもなく速く走ること、特に今回のウェールズのような過酷な道を一気に駆け抜けて、ほかのクルマをあとに置き去りにしてしまうことにかけてである。ターボ過給による高出力と信じられないほど見事に完成されたハンドリングによって、それが実現されている。

RSというからには走りのパフォーマンスこそが存在意義であって、それでいながら長距離移動の用途でも驚くほど快適であるという事実は、このクルマにとっては単なるおまけに過ぎない。

ワインディングを本気で走ったときのRSを知ってしまったら、Zでは主観的にも客観的にもまったく勝負にならない。これだけ走って楽しく実際にも速いクルマが相手となると、いくら立派なキャビンと魅力的なルックスを用意したところで、最初から比較にすらならないのである。

見た目だけでなく走りでもシロッコRの勝利

そういうフォーカスRSの王座に、シロッコRは別の方向から仕掛けてきた。

シロッコRの内外装がフォーカスRSのそれよりはるかにエキゾティックなのは、素人目にも明白だろう。もっとも、率直にいうなら、どのVW車を持ってきたところで、同じ価格帯のフォード車と比べたらこういう結果になるのは容易に予想できることではある。しかしVWはそれに頼ることなく、むしろ走りで挑んだのだ。

もちろん、シロッコRはフォーカスRSのような爆発的なパワーを発揮するわけではないし、そんなことは最初から意図してもいない。しかし、少なくともフォーカスRSを相手に、この荒れた山岳路を互角に走っていた瞬間はいくらでもあった。フォーカスRSを力の限りハードに走らせていても、シロッコRはその背後を影のようにつきまとい続けたのである。

そして以上は、あくまでも速さという観点からの、いわば客観的な話だ。主観的な話、つまりどちらがドライブしてより魅力的かとなれば間違いなく、それも大差でシロッコRである。これから導かれる結論はただひとつだ。このような記事を書くのはまだまだ先の話と考えていたわたし自身が、この結論にいちばん驚いている。

シロッコRは総合でフォーカスRSを破り、クラス王座を奪取した。

その他の500万円級ホットハッチ

アルファ・ブレラ 3.2JTS Q4(580万~615万円)

ルックスは見事、サウンドも素晴らしい。しかしながらそれがブレラQ4の魅力のほぼすべてだ。ここで比較対象にするにはあまりにも遅く、総合的に弱い。

BMW135iクーペ(549万~560万円)

とても速いがあまりに高い。しかも一部には(といってもわれわれのあいだでは多数派だが)135iの奇妙な外見がどうにも気に入らないという意見もある。

ロータス・エリーゼR(584万円)

依然としてちゃんとした天気の日にちゃんとした道を走るのなら最強だ。600万円未満の予算で本物のスポーツカーを体験したいのなら、最有力候補だろう。

ルノースポール・メガーヌ250(邦貨換算約460万円)

本企画の最初の対決でご覧のように、フォーカスRSを倒す寸前だった実力車だ。先代ほどスリリングではないが、この価格帯では傑出して優れている。

プジョー308 RCZ

この頃発売されたホットハッチのなかではもっとも劇的な「お手頃価格」車だろう。ルックス同様に走るなら、プジョーはドライバーズカーの勢力図を塗り替えられるかも。

VWゴルフR

シロッコRのベースであるが、こちらは四輪駆動。これが世界最強でなかったら、なにかが間違っていると思わざるを得ない。

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