一部改良を受けたマツダ「ロードスター」に、『GQ JAPAN』ライフスタイルエディターのイナガキが乗った! まずは金属製ルーフを持つ「RF VS」をリポートする
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マツダ ロードスターRF VSの特徴
1.適度な重厚感
2.2.0リッターエンジンならではの美点
3.余裕あるスポーツドライビング
4.総評
1.適度な重厚感
(前のページから続く)気を取り直し、ブレーキペダルを踏み込んでエンジンスターターボタンを押す。
フロントミッドシップに縦置きされたSKYACTIV-G 2.0リッター直列4気筒エンジンが、低く落ち着いた咆哮とともに目覚めた。ソフトトップモデルが軽快な吹け上がりを身上とする1.5リッターエンジンを搭載しているのに対し、電動ルーフ機構などによって重量増となるRFには、よりトルクフルで余裕のある2.0リッターエンジンが与えられている。
最高出力134kW(182ps)/7000rpm、最大トルク206Nm(21.9kgfm)/4700rpmのエンジンスペックは、現代のハイパワースポーツカーと比較すれば決して驚くような数値ではない。しかし、車両重量は1150kg。現代の安全基準を満たしたクルマとしては軽量なボディを加速させるには、十分すぎるほどの数値を誇っている。
セレクトレバーをDレンジに入れ、大熱海国際ゴルフクラブの敷地をゆっくりと滑り出す。駐車場から一般道へと合流する際のわずかな段差を乗り越えた瞬間、驚く。その乗り心地が、かつてのロードスターから想像されるものとは違う、しなやかで上質なものへと進化していたからだ。道路の継ぎ目や細かな凹凸を通過しても、不快な突き上げや振動がキャビンに直接伝わってくることはない。サスペンションがストロークの奥深くでしっかりとショックを吸収し、車体はフラットな姿勢を保ち続ける。
16インチタイヤを履くソフトトップモデル特有の、路面を細かく蹴り上げるようなヒョコヒョコとした軽快な動きとは異なる。RFは17インチのアルミホイールと205/45R17の低扁平タイヤを履いているにもかかわらず、適度な重厚感を伴って路面を舐めるように進んでいくのだ。
市街地を抜ける中でさらに感心させられたのは、手元に伝わるステアリングフィールの進化である。今回の一部改良において、マツダは新しく装着されたタイヤの特性に合わせて、電動パワーステアリング(EPAS)の制御プログラムを再チューニングしたという。従来モデルでわずかに感じられた、ステアリングを切り始める瞬間の引っ掛かりや、コーナーを立ち上がってステアリングをセンターに戻していく際の不自然なフリクション(摩擦感)が、払拭されている。雑味のない、すっきりと澄み切った操舵感でありながら、フロントタイヤが路面をどのように捉えているのかというインフォメーションは、手のひらを通してクリアに伝わってくる。このステアリングフィールは、街中を法定速度で流しているだけでもドライバーに深い満足感を与えてくれるのだ。
そして、特筆すべきは静粛性の高さだ。厳格化の一途を辿る車外騒音規制への対応として、今回の改良ではサイレンサーの大型化などの対策が施されているが、マツダのエンジニアは単に音を抑え込むという消極的な手法をとらなかった。RFにおいては、サイレンサーを車体に吊り下げるハンガーラバーの構造そのものを見直すことで、走行中の振動によるサイレンサー自身の揺れを抑制したのだ。この緻密な改良の恩恵は大きく、クローズド状態のキャビン内には、排気系のこもり音や微振動があまり侵入してこない。ロードノイズも効果的に遮断されており、その静寂な空間は、もはやライトウェイトスポーツカーというよりも、ワンランク上の高級クーペに身を委ねているかのような錯覚を抱かせる。
2.2.0リッターエンジンならではの美点
伊豆スカイラインへと続く、勾配のきついワインディングロードへと車両を進める。ペースを上げるべく、シフトレバーの横に備えられたドライブセレクションのスイッチを弾き、「スポーツ」モードへと切り替える。その瞬間、この優雅で上品な大人のクーペは、隠し持っていたスポーツカーとしての鋭い牙を剥き出す。
アクセルペダルの踏み込みに対するエンジンのレスポンスが鋭くなり、右足のわずかな動きに対して車体が即座に反応して前へと飛び出そうとする。6速オートマチックトランスミッションは、より低いギアを選択し、エンジン回転数をパワーバンドの高い領域にキープし続けるのだ。
騒音規制によって絶対的な排気音量が抑えられている現代にあっても、マツダは「走る歓び」を構成する重要な要素であるエンジンサウンドの演出を諦めていない。スポーツモードでアクセルを深く踏み込むと、静粛性が高められたキャビンの中に、野太く、そして荒々しいメカニカルノートが響き渡る。それは周囲の環境を威圧するような下品な爆音ではなく、精密な機械の歯車が噛み合い、燃焼室でガソリンが爆発していることをドライバーに伝える、クリアでリニアなサウンドチューニングの賜物だ。回転計の針がタコメーターの右側へと跳ね上がるにつれて、その音圧と高揚感はどこまでも高まっていく。
1.5リッターエンジンが軽快に回り切る楽しさだとすれば、この2.0リッターエンジンのそれは、有り余るトルクで重力に逆らって斜面を駆け上がる力強さである。182psのパワーは、公道のワインディングを走る上で「扱いきれる限界」の絶妙なラインを突いており、踏み切る楽しさと加速感の両方を味わうことができるのだ。
3.余裕あるスポーツドライビング
コーナーが連続するテクニカルなセクションに差し掛かる。ブレーキングでフロントに荷重を移し、進化したEPASを通じてノーズをイン側へと向ける。ここで、ロードスターの系譜においては重量級に属するボディの挙動を掌握するのが、マツダ独自の車両姿勢制御技術「KINEMATIC POSTURE CONTROL(KPC)」だ。高い横Gがかかるコーナリングにおいて、このシステムは内側の後輪に対してわずかにブレーキをつまむように作動する。すると、サスペンションのジオメトリー特性によって車体のリア部分がグッと下へと沈み込み、リフト(浮き上がり)が強烈に抑制されるのだ。このKPCの働きにより、RFのコーナリングは安定感を誇る。
ソフトトップモデルがヒラヒラとロールを許容しながら舞うようにコーナーをクリアしていくのに対し、RFは路面に四輪のタイヤを強く押し付け、トラクションをかけながらオンザレールで駆け抜けていく。剛性の高いルーフ構造と相まって、ボディ全体がひとつの塊となったような安心感がある。これこそが、RFが目指した「大人のための余裕あるスポーツドライビング」の具現化であろう。
オープンエアモータリングを楽しむための細やかな配慮にも触れておきたい。頭上のルーフを開け放ち、サイドウィンドウを下ろして走っていても、フロントガラスの絶妙な角度とリアのエアロボードの恩恵により、キャビンへの不快な風の巻き込みはコントロールされている。そして、風切り音が高まるオープン走行時において威力を発揮するのが、シートのヘッドレスト部分にスピーカーを内蔵したボーズサウンドシステム(AUDIOPILOT2)だ。車速や走行ノイズに合わせて音量や音質を自動補正するこのシステムは、周囲の騒音に負けることなく、ボーカルの輪郭がくっきりとしたクリアな音楽をドライバーの耳元へとダイレクトに届けてくれる。伊豆の湿った森の匂いを感じながら、お気に入りのジャズやクラシックに包まれて適度なペースでワインディングを流す時間は、至福の一言に尽きる。
4.総評
大熱海国際ゴルフクラブへの帰路、再びドライブセレクションをノーマルモードに戻し、静けさを取り戻したキャビンでこのクルマの立ち位置について思考を巡らせた。
ロードスターRF VSは、初代NA型から脈々と受け継がれてきた「軽量・コンパクトでプリミティブな操縦性を楽しむ」といった本来のロードスターの文法からは、ある意味で少し外れた存在かもしれない。しかし、それは決してネガティブな意味ではない。マシンの存在を感じさせないほどの一体感(人馬一体)を追求したのがソフトトップモデルだとすれば、このRFは、流麗なクーペスタイルの美しさを纏い、余裕ある2.0リッターエンジンの動力性能を引き出し、ナッパレザーに包まれた空間で長距離を快適に、そして優雅に移動するためのクルマであるのだろう。
厳格化する環境規制や騒音規制の中で、スポーツカーの存在意義そのものが問われている現代において、マツダは音を抑え込むだけではなく、振動を減らし、ステアリングの質感を高め、結果として洗練されたグランドツーリングカーへと昇華させてみせた。スポーツカー特有の心昂る刺激と、ラグジュアリーカーの安らぎと静寂を両立させたクルマは世界を見渡しても希少である。ロードスターを用いてマツダが表現した、ひとつの到達点かもしれない。酸いも甘いも噛み分けた、本物の価値を知るドライバーにこそ相応しい、スポーツクーペなのだ。
そして筆者は次に待つ、その対極にして根源たる「ソフトトップモデル」のキーを受け取った。
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1ヶ月経たずに、1500KM走ってしまいました。
いい車ですよ!