2人乗りの燃料電池車が見せる未来
ヒューゴ・スパワーズ氏は、自動車を再発明するだけでなく、自動車所有のあり方も変えようと考えた。テスラのCEOも、スパワーズ氏の会社リバーシンプル(Riversimple)が自らに課した仕事のスケールの大きさには注目すべきだろう。
【画像】クルマの再発明を目指す起業家【リバーシンプルのモデルを写真で見る】 全8枚
2001年に会社を設立して以来、元レーシングチームオーナーであるスパワーズ氏の人生において、最も重要な位置を占めてきたのが、この2人乗りのカーボンファイバー製燃料電池車「ラーサ(Rasa)」である。現在、ウェールズ中部のランドリンドッド・ウェルズを拠点とするこのプロジェクトには、2000万ポンド(約30億円)もの投資資金が投入されたが、生産開始予定日は何度も延期された。
ラーサの燃料電池パワートレインには、加速を高める「スーパーキャパシタ」バッテリー(電力を素早く放出する)とインホイールモーターが採用されている。これだけでも十分に過激だが、スパワーズ氏はこれを「既製」の技術と呼んで、特にこだわりを見せない。
リバーシンプル社の躍進は「システム」にあると言われている。カミンズ製の10kW(13ps)の小型燃料電池スタックを搭載し、スーパーキャパシタの最大70kW(95ps)を使って加速を高め、静止状態から約10秒で97km/hに到達できるようにした。
カーボンファイバーでできたシャシーの重量はわずか72kgで、車両総重量は580kgになると予想されるため、パワーには余裕がある。それでも、少なくとも現時点では、最高速度は97km/hに制限されている。
わずか1.5kgの水素を搭載した場合の航続距離は480kmと言われているが、ラーサはバッテリーによる長距離走行の不安を解消するためのクルマではない。水素スタンドが設置されている特定の地域に住み、毎週水素を補給できる顧客に向けた「ローカル」なクルマなのだ。
燃料小売店に水素ポンプの設置を促し、英国にほとんど存在しない水素供給インフラを改善することも、スパワーズ氏のとんでもない任務の1つである。
燃料電池車は決して「高くない」
ラーサを購入する際、顧客は月々354ポンド(約5万4500円)と1マイル38ペンス(1.6km/約58円)で契約を結ぶ。料金には保険、メンテナンス、燃料、タイヤなど、すべての費用が含まれている。
「PCP(個人契約購入)の金額と比較するのではなく、すべての請求額を合計してから、高いとは思わないでください」とスパワーズ氏。また、ゼロ・エミッション車は、バッテリーであれ燃料電池であれ、高価である。「内燃機関車の原価は、本当に信じられないほど低いのです」
スパワーズ氏によると、現時点での生産開始時期は、ウェールズにある2つの候補地のうちの1つに建設予定の新工場で2024年を見込んでおり、前回2019年に話を聞いたときの予測(今年)から後ろ倒しになっている。気概に欠ける起業家なら今頃タオルを投げているかもしれないが、スパワーズ氏は違う。
「当社の足かせになっているのは、常に資金です。時代のずっと先を見据えて仕事をしているので、閉ざされたドアに阻まれてきました。しかし、今は、ゼロ・カーボン輸送への関心が高まっています。そのドアは今、開かれつつあるのです」
「昨年はリバーシンプルの資金調達において素晴らしい年になりました」
同社は昨年、エンジェルズ・インベスト・ウェールズとウェールズ開発銀行などシンジケートを含む投資家と150万ポンド(約2億3000万円)の資金調達を成立させたのだ。
また、ウェールズ政府は2015年に200万ポンド(約3億円)を助成するなど、以前からこのプロジェクトを支援している。政府がお金を出して手に入れるのは、220人の雇用と、年間5000台を製造する自動車工場だ。
今夏には20台の試験走行も予定
ラーサと同じ理念で開発された新型車が、同様のマイクロファクトリーで「必要なときに必要なだけ」作られると、スパワーズ氏は期待している。同社は4ドア車とバンの製造も計画中だ。しかし、まずはラーサを完成させなければならない。
最初のプロトタイプ(アルファ)はベータに切り替わり、この夏、20台による試験走行が行われる。冷却効果を高めるためにノーズを再設計し、フロントとリアのサブフレームをアルミニウムからカーボンファイバーに変更するなどしたが、見た目はあまり変わっていない。
「試験走行に耐えうるだけの信頼性とメンテナンス性を確保することに集中しました。アルファはそうではありませんでした」
彼はまた、材料費(すべての部品価格を合計した単価)を下げることにも取り組んでいる。現在、1台あたり17万ポンド(約2600万円)かかっているが、部品をまとめて買うようにすれば、「5万ポンド(約770万円)をはるかに下回る」ようになるという。
バッテリーは高価で無駄なもの
ラーサは、ゼロ・エミッション車はどうあるべきかという知的な研究でもある。部品は軽くて長持ちするものが選ばれている。ラーサを「所有」し続けるのはリバーシンプル社であり、最終的にはリサイクルやリユースができるようなクルマ、つまり「使い捨て」と逆の方向を目指しているのだ。
スパワーズ氏が不満に思っていることの1つに、年式に関係する英国のナンバープレート制度があり、「自動車市場に陳腐化させる仕組み」と批判している。例えば、20年前のアウディA2 3Lは実験的なディーゼル・エコカーであり、「3L」という数字は、リッター当たり100kmという燃費の良さを表している(あまり売れなかったが)。
また、スパワーズ氏によるとバッテリーは高価で無駄なものだという。
「航続距離の長いクルマのバッテリーを作るためのエネルギー強度は、完全にナンセンスです」
多くの自動車メーカーは、ホンダやメルセデスが公言しているように、燃料電池から手を引くどころか最終的にはEVの代替となることを視野に入れて、密かに投資を続けているのだと彼は考えている。
「これ(EV)はその場しのぎで、5年後には別のものを販売しますよ、などと言っていたら、すべての人にバッテリーカーを売ることはできません」
問題は、スパワーズ氏の理念を理解する顧客が十分にいるかどうかだ。ラーサは、最新の安全性と快適性に欠けるところが多そうだ。例えば、アダプティブ・クルーズ・コントロールを搭載するようなことはしないという。「それよりもはるかに大きな問題があるのです」と彼は言う。彼の言葉は、人々の耳に届くのだろうか。
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みんなのコメント
この記事を書いた記者は、岩谷産業の技術者から水素についてもっと勉強した方が良い。
液体を管理するって、固体を管理するより数段手間と経費が掛かる。自動車のことも良く勉強した方が良い。