「モントリオール・グリーン」を纏うトナーレQ4
このグリーンのトナーレQ4の実車は、目の前にすると素直に「いい色だなぁ」と、独りごちてしまうところがある。
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メタリックのフレークも適度に粗目で名称は「モントリオール・グリーン」と聞いて、70年代のあのちょっとクセ強め、でもエレガントなガンディーニ・デザインのクーペを思い浮かべ「やっぱりな、エヘヘ」と、おっさん的にはホイホイと引き込まれてしまう。
独り言というより、色のニュアンスとネーミングだけですでに、そう言わされている訳だ。そこがやはり、アルファ・ロメオという自動車メーカーの、唯一無二のカルチャー資産というか莫大な歴史遺産なのだろう。
実際、先行するトナーレMHEVが日本市場に投入されて以来、アルファ・ロメオからの乗り換え購入顧客はじつに38%を占めるとか。ジュリエッタがもっとも多く、ステルヴィオやジュリアからのダウンサイザーも少なからず。
やっぱりアルファ乗りはアルファを選ぶ……と結論づけるのはしかし、早合点だ。忠誠度の高い顧客も多いが、他の輸入車ブランドからの乗り換えは44%と、連続アルファ乗り換えのコア層をも上回る。
それ以外の国産車からの乗り換えも、18%と一定数に上る。しかも女性顧客に至ってはトナーレ導入以前から2.4倍にまで増えているとか。当然、国産車やドイツ車に比べたら分母が小さいという指摘もありそうだが、量より質で愛されてしまうのがアルファ・ロメオなのだ。
欧州Cセグ相当のコンパクトSUVという、サイズ感も車型もファミリー層を含めハマったとはいえ、電動化時代を睨みつつ自己変革と情熱的パフォーマンスという、アルファ・ロメオの方向性は広く受け入れられているようだ。そのキーとなるのが「次世代スポーティネス」と、それを実現するソリューション、つまりトナーレQ4ではPHEVとしての出来ばえと動的質感がどんなものか? という辺りだ。
外観でMHEV版と、今回のQ4を判別するマーカー要素は、ほとんど無い。強いていえば、リア左フェンダー上に設けられたチャージポートと、MEHV版より意外にも15mm高くなったという1615mmの車高と、あとはバッジの違いぐらい……でもなかった、PHEV版の左リアのクォーターウィンドウ隅には(車内のメーターパネルにも)「エレクトロ・ビショーネ(ビショ―ネは蛇のこと)」が充電中に表れるのだ。
アルファ・ロメオ・トナーレ PHEVとMHEVとの違いは?
この「プラグイン蛇」は、かの「人を飲み込む蛇の紋章」をあらため電源プラグに図象化した、MHEV版にはないディティールで、今後リチャージャブルなアルファ・ロメオならBEVにも用いられるだろう。
単に「緑色で長いもの」を巧みに使い回した、発想とデザイン力は本当にダテじゃない、てな軽い話でも済ませられるかもしれない。でも、蛇や竜を槍で刺している騎士の姿は聖ジョルジョだが(蛇や竜の形をした)悪魔を踏みしだいて天使の翼を背負っていたら聖ミカエル、みたいな違いというか、そうしたイコノグラフィー(図象学)的伝統を踏まえた風土的産物という気もしなくはない。
同じグループ内でいえば、ジープのガラス隅に見える「隠れジープ」の応用編かもしれないが、元ロゴをイジってまでアルファ・ロメオが電動化にかける意気込みがうかがい知れる。
話は戻って、全長4530mmと全幅1835mmは当然、MHEVと変わりない。PHEVの車高だけが上がったのは、FFベースのリアモーター4WDである以上、多少オフロードも意識したのか?と一瞬考えたが、ドライブモードにそんなものが加わった形跡もない。
でも15.5kwhのバッテリーがホイールベース内に収められた分、MHEVより3%ほど低重心化し、何より前後重量配分は53:47に最適化された。公式資料には、ロールアングルと旋回速度はそれぞれ8%向上とある。
とはいえ車両重量はMEHV比で+25kg、つまり1880kgにまで増量。重くないか?と数値だけ見ると感じるが、その点は後述する。ひとまずEVモードでの航続距離は約72kmで、直4の1.3Lターボとの航続距離と合わせ技で600kmと、一回満タン&満充電でのアシは長そうだ。
27.5kg-m/180psのエンジンは無論、前車軸を6速ATを介して駆動し、フロント側にも5.4kg-m/45psの電気モーターが組み合わされている。5.6kg-m/20psというMHEVのフロントモーターより明らかに伸び重視のようだ。
参考までに、PHEVのATギア比は5速がMHEVと横並びの0.851で、ファイナルレシオはより低められている。そこに単体で25.5kg-m/128psを発揮するリアモーターが組み合わされ、システム最高出力は280psとなっている。
新世代のアルファ・ロメオ
要はPHEVパワートレインになったとはいえ、すべてを足し算式に解き放つトルク&パワーではない。電気とICEが互いに任せるべきは潔く任せるものの、仕事の繋ぎ目がごくシームレスで、それでいてシンプルなスキームのAWDとして、俊敏かつ軽快なアルファ・ロメオ独特のロードホールディングを実現しているのだ。
個人的に、アルファ・ロメオらしい動的質感とは何ぞや? に対する答えは「生き物っぽいほどの躍動感」だと思っている。ヒストリック・イベントなどで旧いアルファ・ロメオがサーキットを走るのを見て感心させられるのは、元より静的なデザインもいいけど、車の状態がキマっていることが前提とはいえ、動的な状態での姿勢、4輪を接地させる姿形そのものがやたらと美しいことだ。
この日、別の取材班が走らせるトナーレQ4を路上で見て、そして自分で乗って、キレイに走らせられる感覚の片鱗は、きっちり確認できた。街中でおもにEV走行だったが、軽やかに地面を掻くような加速感と適度にキビキビしたドライバビリティで、実際の車重よりはるかに軽快に感じられた。正直、体感では1700kg台前半だったのが、後で諸元表で1880kgという数値を確認して、1割以上も騙されていたことに驚いた。
ステアリングフィールはクイック過ぎず、これ見よがしに鋭さを演出するタイプではない。ダイヤル操作でDNAのドライブモード選択で、D(ダイナミック)にもしてみたが、中立付近が締まるものの、落ち着きが失われることもない。街中から首都高速ぐらいの速度域ではハーシュネスもよく抑えられ、落ち着いた乗り心地さえ味わえる。
踏み込めばICEの伸びをアテにできて、トルクカーブと野太いエキゾーストノートと加速感がキチンとシンクロしている。ただ、A(アドバンスド・エフィシエンシー)という電気のみのモードでも135km/hまで加速できる通り、電気モーターの加速だけでも役不足に陥ることは、ほぼ考えられない。
街中や高速巡航など、たいていの低負荷状況では、寡黙にして滑らかな後輪駆動車としてトナーレQ4はふるまう。回生は手元のパドルで強められ、日常的にブレーキの補助として使える程度の減速Gだ。
総じて、電動モデル特有の癖や唐突さはないが1台のアルファ・ロメオとして魅力的、そこがトナーレQ4の美点だ。ワインディングやサーキットで美しく楽しいのはアルファ・ロメオなら当たり前だったが、そうじゃない日常域でも、PHEVがちゃんとアルファ・ロメオになっていることに素直に驚けるというか、ボディサイズごと日本の生活感にハマってくれそうなところまで、予想していたよりもはるかに新世代のアルファ・ロメオだった。
試乗車のスペック
アルファ・ロメオ・トナーレQ4ヴェローチェ
価格:740万円(税込 オプションなし)
全長×全幅×全高:4530×1835×1615mm
最高速度:-
0-100km/h加速:6.2秒
燃料消費率:14.1km/L
CO2排出量:165g/km
車両重量:1880kg
パワートレイン:直列4気筒1331cc SOHCターボ(PHEV)
使用燃料:無鉛プレミアムガソリン
最高出力:180ps/5750rpm
最大トルク:27.5kg-m/1850rpm
ギアボックス:6速オートマティック
タイヤサイズ:235/40R20(フロント)235/40R20(リア)
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