この記事をまとめると
■路線バスの廃線や減便がここ数年で増えてきている
75年ぶりに新規の路面電車が栃木に開業! 「これで便利になった」とは言えない他交通との「乗り継ぎ問題」
■世界的に見てもバスの運賃が日本は安いので、採算が取れなくなっている
■区間制運賃の導入などの料金体制の見直しを本格的に進める必要性がある
路線バスの廃線や減便が相次ぐ背景とは
2023事業年度締めでの下半期が始まる10月1日より、各地の路線バスで減便や路線廃止が相次いでいる。すでに多くで報道されているように、そもそも十分ではなかったのだが、ここへきて運転士の不足状況がさらに悪化したことが大きな原因となっている。ほかにも乗降客数が極端に少なく採算が合わずに減便や路線廃止が行われることもある。
深刻な運転士不足の背景はいくつかあるが、大きなものでは給料の安さがあるのは間違いない。そして採算の合わない路線が続出してしまうのは、一部で運賃が安めともいえる水準で設定されていることもあるのではないかと考えている。
筆者は路線バスを使った旅行番組を好んで見ているが、地方路線は中扉(あるいは後ろ扉乗車)から乗車時に、交通系ICカードをタッチするか整理券を引き抜き、降車時に乗車した区間ごとに設定した運賃を支払う方式がほとんどなっている(区間制)。
地域によってもちろん運賃設定が異なるのだが、ふと運賃表を見ると、40分ほど乗車して700円近い運賃を支払っていた。一方で、東京都交通局のバス(都バス)など、都市部を走るバスの多くは、前扉から乗車時に200円前後の運賃を支払うと、その路線区間はいわば乗り放題となる(均一料金制)。
筆者の経験では、都市部のバスで起点から終点停留所まで40分以上かかるような路線もあるが、それでも運賃が200円前後で済むのである。もちろん、地方部と都市部では交通環境が異なるので、同じ40分でも移動距離に差があるため、同じ40分の移動で運賃に大差が出るのはやむを得ないことなのかもしれないが、その開きがあまりに大きいのも間違いない。
そのようなことを考えていると、最近の減便や路線廃止のニュースとともに、運賃値上げのニュースも相次いでいる。事情通は「乗車時に支払う均一料金というものは改める必要があるのではないか」との話も出ているとしている。前扉乗車で均一運賃の路線を中扉乗車で区間制に切り替える動きがなかったわけではないが、都市部でも区間制の積極導入を進める時期にきているようだと筆者は考える。
ドイツの都市部では地下鉄や路面電車、路線バスではゾーン制運賃が導入されているようだが、多くの国の大都市では均一運賃が主流となっている。しかし、ロンドンでは約320円、ニューヨーク市やロサンゼルス市では約435円となっており、日本より運賃設定は高い。今年9月にラスベガスを訪れた際、ダウンタウンとストリップ地区を結ぶバスに乗った際には運賃として4ドル(約600円)を支払った。
このままでは路線バスの時刻表が消える!?
一方で、都バス、大阪シティバスの均一料金は210円となっている。均一運賃ではないものの、福岡市や北九州市などで運行している西鉄バスでは、2024年1月より区間運賃制での初乗り運賃は現状の170円から210円に引き上げることを発表している。
とりあえず先進国といえる日本だが、同じ先進国のバス運賃と比較すると明らかに運賃は安く設定されているといっていいだろう。
物価高に日々悩まされる毎日を送っているが、諸外国、とくに欧米の激しいインフレや人件費高騰などによる物価高を見れば、世界からは全国津々浦々ディスカウントストア状態ともいえる日本と単純に運賃を比較することはできないが、それでも日本の都市部における路線バスの均一運賃は安く抑えられている印象を受ける。
このような話をすると、「お年寄りなどの弱者を見放すのか」といった議論も出かねないが、たとえば都バスでは、すでにシルバーパスというものが用意されている。議論としてはあくまで普通運賃の値上げというものにフォーカスしてもらいたいと筆者は考えている。
※画像はイメージ
地方部だけでなく、大都市周辺でもいまのような状況になる前から路線維持などの理由でたびたび運賃値上げが行われており、さらには地元自治体からの補助金が投入されていたりもしている。
運賃はいままでどおり、運行本数そのままで路線廃止もない、つまり何も変えずにこのまま、運行事業者の努力だけで凌ぐことは、現状を見ればかなり厳しい状況となってきた。現状の利便性を可能な限り維持したいと考え、そしてそのためにもバスを運行する乗務員の待遇改善を願うのならば、現状の均一区間であっても、区間制運賃の導入というものも本格的に検討していかないと、世界的にも珍しい、時刻表のある停留所というものがなくなり、いつくるかわからないなかバスを待つこと(世界的にはこれが主流でアメリカでは当たり前。バスロケーションシステムで接近情報を提供しているところもある)にもなるだろう。
つまり、定時運行を維持する余裕がなくなり、おおまかな運転間隔を設けて1日何本運行するかという流れになっていくことにもなりかねないのが、いまの日本の路線バス運行の現状といっていいだろう。
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みんなのコメント
運転士の給与は1円も上がらず激務と
乗客からのハラスメントはさらに酷くなるのは間違いない
高いカネ払ってんだから、降りてきてベビーカー乗せるのやれ!とかな
ウソだと思うならお前運転手やれよ