Porsche 911Carrera T
ポルシェ911カレラT
ライトウェイトの原点に還った911カレラTで鈴鹿を攻める! 軽量性能を極めたポルシェの実力とは【Playback GENROQ 2019】
軽量こそ正義だ
昨年末、日本でも発売が開始されたカレラT。搭載される3.0リッターターボはカレラと同出力ながら
随所に軽量化が施され、ストイックな雰囲気を増したモデルだ。スポーツカーの原点、ライトウェイトにこだわった911カレラTを鈴鹿サーキットに持ち込み、その魅力を考えた。
「これは特別なカレラだと、みんなに言いたくなるような楽しさ」
スポーツカーにおいて、軽量とは操縦性の良さにつながるだけでなく、ドライバーの気分を高揚させることで、気持ちよく走る要素にもなる。単純に軽量が優れた動力性能につながるという話ではなく、ストイックな雰囲気が重要なのだ。今回カレラTで鈴鹿を走ってみて、改めて911の素性の良さを感じるとともに、前記のような高揚感があった。「これは特別なカレラ」だとみんなに言いたくなるような楽しさが十分に感じられた。
カレラTはカレラをベースとした走り好きのするグレードである。3.0リッター水平対向6気筒ターボのエンジンスペックはカレラと同値だ。違いはリヤシートを外したり、薄板ガラスや簡素化されたドアトリムが採用されるなどの徹底した軽量化、そしてLSD装着やPASMスポーツシャシーの採用による低い車高など、つまりは走りに特化したモデルである。本来は簡素な装備でMT仕様を選んで乗るべきモデルだが、日本では残念ながらPDKしか選べない。
「これこそ911の真の姿なのではないか」
911には他にもGTSやGT3など、走りを楽しむためのクルマが用意されている。しかし走りを楽しめるクルマイコール速さというイメージがあるために、どうしてもパワーが重視される傾向がある。もちろんスポーツカーにとってパワーや速さは一番わかりやすく、なおかつ重要な部分である。しかし、走りの楽しみとパワーを高めることは必ずしも一致しない。フォーミュラレース出身の私は、その部分をよく理解している。
そういう観点からも、カレラTはある面これが本来の素のカレラでは? と思えるくらいに走りの楽しみを追求したモデルであり、これこそ911の真の姿なのではないかと思った。事前に資料を見た時には、あくまでアンダーパワーでコーナリングを楽しむクルマだと想像していたが、実際に走らせてみると、長いストレートや上りなど、パワーを要求される鈴鹿サーキットでも十分に走りを楽しめた。しかも直前にGT3 RSを試乗した影響もあったと思うが、リラックスして思い切りドライビングを堪能できたのだ。シャシーのポテンシャルがパワーに勝ると、軽さは運転を楽しむ要素になると痛感した。
「自分が上達したと勘違いするほど軽快にクルマを動かせる」
コーナリングでは特にしなやかさと軽快な部分が好印象だった。軽いクルマは慣性が少なく、翻って思い通りのラインをトレースしやすく、自分が上達したと勘違いするほど軽快にクルマを動かせる。しかもカレラTは操作に対しての反応がシビアすぎず、懐が深い。ある程度ラフな操作を許容してくれるような安心感がある。そのおかげで思い切りコーナーを攻めて、ドライビングというスポーツを楽しめた。
結論としてカレラTは、今やポルシェ911の独擅場となったリヤエンジン車のドライビングを学ぶのに好適のモデルだと言える。リヤエンジン車ならではのトラクションを最大限に活かす走りや、ブレーキングの安定感を体感するには最高なのである。しかも単に楽しいだけではなく、この日、鈴鹿サーキットを2分24秒台で走れるほど十分な速さも持っている。
「911カレラTに乗ればすべてがストイックになれるかもしれない」
そもそも最高出力が370psもあればまったく不満はないのだ。996時代のGT3に匹敵する出力だし、上級者でも十分に楽しめる。出力を追い求めるのではなく、走りに対する強いこだわりを持つドライバーに、間違いなくお勧めできる一台である。カレラTならサーキットでもワインディングでも最高の気分になれるだろう。ただし、軽量化の重要性を知るにつけ、自分の体重も含めた総重量がもたらす影響も感じてしまったのだが。このクルマに乗ればすべてがストイックになれるかもしれない。
REPORT/田中哲也(Tetsuya TANAKA)
PHOTO/森山俊一(Toshikazu MORIYAMA)
【SPECIFICATIONS】
ポルシェ911カレラT
ボディサイズ:全長4527 全幅1808 全高1285mm
ホイールベース:2450mm
車両重量(車検証):1460kg
エンジン:水平対向6気筒DOHCターボ
圧縮比:10:1
総排気量:2981cc
最高出力:272kW(370ps)/6500rpm
最大トルク:450Nm(45.9kgm)/1700-5000rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅):前245/35ZR20(9J) 後305/30ZR20(12J)
最高速度:291km/h
0-100km/h加速:4.2秒
燃料消費率:8.5L/100km(EU複合モード)
CO2排出量:193g/km(EU複合モード)
車両本体価格:1432万円
※GENROQ 2019年 5月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。
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