厳格化する規制下でスポーツカーを作るために電動化は必須事項
1973年のオイルショックは自動車産業にも多大な影響をもたらした。それまでは燃費に関しては大らかだったが、各国が規制を始めたのだ。
「ハイブリッドは燃費だけ」なんていつの時代の話? 運転の醍醐味を増すイマドキの電動化技術
1975年にはアメリカで、「EPCA(Energy Policy and Conservation Act=エネルギー政策・省エネ法)」が制定され、そのなかに自動車の「CAFE(Corporate Average Fuel Economy Standard=企業の平均燃費効率標準)」があった。これが現在の「CAFE規制」に繋がっている。
日本でも1979年に省エネ法が制定されて燃費規制が始まるが、CAFE規制とは異なるトップランナー方式を採用。「いまあるもっとも優れた製品を、将来の基準にする」という考え方で、石油の消費量を下げるとともに技術競争を促進する狙いもあった。ちなみに1970年代のCAFE規制は燃費に優れる日本車に有利に働き、アメリカ市場で躍進する足がかりとなった。
現在では各地域ともメーカー全体で平均燃費やCO2排出量を管理する方向へ進んでいる。欧州はとくに厳しく、CO2排出量が平均を超過すると巨額な罰金が課される。大排気量車や高性能なエンジン車を販売するためにはBEV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド)を大量に販売する、もしくはCAFEを下まわったほかのメーカーからクレジットを購入して埋める、などという現象が起きている。一時、クレジット販売がテスラの収益を大きく支えたほどだ。
燃費規制と騒音規制の両方が電動車をバックアップ
もうひとつ、自動車の規制で厳しさを増しているのが騒音規制だ。これも1970年代から始まっており、日本では排気ガス規制とセットで進化していった。アフターパーツのマフラーに「車検対応」と表示されているのは規制クリアの証だが、これは停車状態で測定する「近接排気騒音」だ。だが、いざ走り出すと爆音になるなど抜け穴を見出した例が散見されたことから、近年では「加速走行騒音(外部騒音)」が規制の主流と なっている。
停車時は静かなのに走ると爆音というだけではなく、特定の回転数だけは静か、規制のための試験領域だけは静かなどといった抜け穴をとことん防ぐべく、ASEP(Additional Sound Emission Provisions=追加騒音規制)なるものまで導入。試験条件以外で極端に音量が増すことも規制対象となっている。スポーツモードにするとフラップが開いて爆音になるものも規制の対象になる。最近のモデルはスポーツモードでたしかにサウンドは変化するが、以前ほどの迫力はないと感じるのはそのためだ。
そのほか、排気ガス規制が厳しいのは当然のこと、たとえば間もなく欧州で施行されるユーロ7ではブレーキダストやタイヤ摩耗粒子も規制の対象になる。ブレーキはローターの鉄粉、パッドの粒子、タイヤはゴムの粒子が計測されるわけで、つまり、摩耗粉を抑えるための高耐久化や制御技術が求められる。
自動車メーカーや部品メーカーには高いハードルがつねに要求される。それが規制というものだ。古くは各国・各地域で独自に決められていたが、1990年代から2000年代にかけて国際調和が図られるようになり、現在では実走行での性能が重視されるなど強化されている。
とくにCAFE規制と騒音規制はエンジン車には不利に働き、電動車に有利。だからこそスポーツモデルを有するメーカーも、電動比率の大きなBEVやPHEVに開発の軸足を移さざるを得ない状況が生まれた。普及が急速には進まないことは、ある程度予想されていたとはいえ、規制をクリアできなければ巨額な罰金を支払う、もしくは販売継続そのものが難しい状況に陥ってしまう。だからこそ各メーカーは電動化へ舵を切ったのである。
電動車ならではの走りの技術たち
電動スポーツカーのトレンドはサウンドエフェクトと変速感エンジンを高回転まで引っ張って生まれる爆発的なパワーや官能的なサウンド、心地よい振動やオイルの焼ける匂いなど、昔のスポーツカーはドライバーの五感に訴えかけてアドレナリンを放出させてきた。だが、残念ながら規制の壁がそういったノスタルジーを許してはくれない。燃費規制や騒音規制は、走る歓びやクルマのキャラクターをも規制してしまうのだ。
とはいえ、自動車メーカーはこれからも生き残りをかけて技術開発していかなければならない。そこで近年はBEVやPHEVでも走る歓びを持たせる試みがなされているのだ。
もっともシンプルでわかりやすいのがサウンドによる演出だ。パワートレインがほぼ無音のBEVでも、加減速に応じて車内のスピーカーからサウンドを発するもので、エンジンに似せたタイプがポピュラーだが、あえて電子音的にして未来感を出すタイプもある。登場当初はいかにもギミック的で、興ざめしたものだが、近年では驚くほど作り込んだモデルもある。
その最たるモデルが2023年に発売されたヒョンデ・アイオニック 5 Nだ。ベースのアイオニック 5とはモーターもシャーシも別モノで、本格的なサーキット走行も視野に入れた高性能モデルとなっており、「N Active Sound+」を搭載。スポーティな2リッターターボエンジンを模したサウンドで、アクセルオフなどではバブリング音まで演出される。そのほか、モーター音を加工して未来感を演出したサウンド、ジェット戦闘機のような迫力のあるサウンドなども用意。
さらに、DCT(デュアルクラッチトランスミッション)のようにシフトショックまで再現。パドルで任意にシフトチェンジもできる。ゴルフGTIに代表される、スポーティなターボエンジン+DCTをドライビングしているかのようだ。
間もなく発売されるホンダSuper-ONEも、BOOSTモードによって仮想有段シフト制御とアクティブサウンドコントロールが始動してドライバーを刺激する。アメリカンV8のように低くビートの効いたサウンドで「小さいくせに生意気」な雰囲気がSuper-ONEのキャラクターに合っている。さらに、仮想のエンジン回転やギヤ段ごとに、リアルな駆動力を再現。低いギヤのほうがレスポンスはよく、トルクも厚くなるようにーターを制御しているのだ。マニュアルモードで回転上限まで引っ張れば、自動でシフトアップせずに仮想レブリミッターが作動するというこだわりも見せる。
1000馬力級のハイパワーと緻密な制御は電動車ならでは
フェラーリやランボルギーニといったスーパースポーツではPHEVがラインアップの一部を占めるようになってきた。環境対応よりもパフォーマンスアップをアピールすることでユーザーを惹きつける戦略で、最高出力1000馬力、最大トルク1000Nmの大台超えも実現。純エンジン車では達成が難しい領域に高めている。
さらに、リヤはエンジン+モーター、フロントは左右それぞれに独立モーターの合計3モーターというのもトレンド。トルクのかけ方によって旋回力を高めるトルクベクタリングの極致とも言える構成となっている。ビジネスとしてはうまくいかなかったホンダNSXが先駆けた技術が、欧州メーカーで華を咲かせつつあるのは皮肉なものだ。
3モーターほどではないにしても、電動車はトルクベクタリングなど高度なシャーシ制御技術が可能になる。日産のe-4ORCEやトヨタのE-Fourなど、FFベースのハイブリッドカーのリヤにモーターを搭載した4WDならば、前後トルク配分を制御することで理想的な挙動を追求することが可能になる。
ギミックサウンドとシャーシ制御は電動車に走る歓びをもたらす武器となる技術。まだ純エンジン車ならではの魅力には及ばないことは認めざるを得ない。だが、電動化時代の新しい”走る歓び”が生まれつつあるのも事実だ。
※本記事は雑誌CARトップの記事を再構成して掲載しております
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みんなのコメント
純内燃機関、マニュアルを知ってるとオモチャ。
EVはEV的技術に磨きを掛けるべき
どの道完全に化石燃料が枯渇し無い限り
内燃機関は無くなら無いよ