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ブームに乗せられて買った「旧車」が生む悲劇! 中途半端な覚悟では歩めない茨の旧車道

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ブームに乗せられて買った「旧車」が生む悲劇! 中途半端な覚悟では歩めない茨の旧車道

クルマへの愛情があってこそ成り立つカーライフ

 一時期と比べると販売価格は落ち着いてきたが、いまなお開発者の顔が見える昭和のクルマたちが人気だ。2022年も依然として旧車ブームが続いているといっていい。

かかるかかからないかはその日次第! たかが「エンジン始動」が旧車には「一大イベント」だった

 そのような状況のなかで、熱心な自動車趣味人のみならず、さほどクルマに興味がない人たちも“ちょっと乗ってみたい”、“もっと値上がりするかも”といった動機で旧車をゲットした。人気車種に関しては、購入するムーブメントが現在進行形だといえる。

 世間で流行になった途端に飛びつく日本人ならではの習性で、キツイ言い方だが猫も杓子も「旧車、キュウシャ」と盛り上がった。しかし、である。冒頭で述べたように販売価格が落ち着いてきた影響で、ブームに乗ってみたかった、投機目的で買ってみたかった、という理由で旧車を買ってしまった人が現在モヤモヤしているのだ。

憧れのケンメリを4000万円で手に入れた59歳男性の場合

 さすがにトヨタ2000GTを1億円で買った人は周囲にいないが、知り合いの知り合いである鈴木さん(仮名/59歳)は、ケンメリ時代のスカイライン2000GT-R(KPGC110型・1973年登場)を4000万円前後で買ってしまった。彼はケンメリGT-Rの実際の性能や価値に気づいて売ろうと思っているが、もはや売れない……という迷宮に入ってしまっているのだ。

 残念ながら面識がある人ではないので続報はないが、おそらく売却できずに困っているに違いない。旧車に4000万円も払えるので、もしかしたら金銭面の悩みはまったくないのかもしれない。しかし、つねにトラブルや事故に遭う恐れがあり、おいそれと一般道を走るわけにもいかない稀少なケンメリGT-Rがガレージにあっても眺めることぐらいしかできないので、早くどうにかしたいと思っているはずだ。

ずっと欲しかったモーリスはあまりにも部品が高く……

 続いて、大学時代からの親友である植木くん(50歳)の話だ。彼はずっと欲しかったADO16シリーズのモーリス1100を約1年前に購入した。本当はヴァンデン・プラ・プリンセスやMGの1300が欲しかったが、軍資金の問題でモーリスをチョイスしたのだ。

 大学時代からの念願だったモーリス1100を買ってはみたものの、ADO16シリーズの特徴的な機構であるハイドロラスティック・サスペンションの基幹をなすディスプレッサーユニット(クラシックミニのラバーコーンに液体を封入したようなもの)がヘタっていた。

 ハイドロが生きていると路面の凹凸を吸収し、車体があまり姿勢を変えることなくコーナーをキレイに曲がってくれたりするのだが、それを味わえなかったのだ。

 ディスプレッサーユニットはパーツ代が高い(4個必要だが、1個6万円ぐらいする)こともあり、半年前にモーリス生活を諦めた植木くんは、現在、初代ルノー・トゥインゴに乗っている。

 最初期のOHVエンジン仕様なので、もうすぐ30年落ちだが、2ペダルMTの“イージー”ではなく5速MTの“パック”にしたので、しばらくの間は平和に過ごせるだろう。

イメージとリアルな世界での現実は異なる旧車ライフ

 クルマに詳しくない人のなかには、旧車を最新の国産車を扱うように気軽な感覚で足として使用し、保管やメンテナンスも疎かにして、わずか半年から数年で廃車にしてしまう心無い人もいる。

 筆者は1974年式のアルファロメオGT1600ジュニアを24年前から愛用しているが、ずっとヒーヒー言いながらクルマエンゲル係数が高い生活を送っている。子どものころからの夢や他者から得たイメージとリアルな世界での現実は異なり、旧車はハンパな覚悟や不純な動機では走らないのだ。

 旧車に対する正しい知識とクルマへの愛情があってこそ昭和のクルマをパートナーとした楽しいカーライフが成立するので、これから国内外の旧車をゲットしようと思っている方は少しだけ心して購入に臨んでほしい。

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