スーパーGT第8戦モビリティランドもてぎ、今季最終戦で2位表彰台を獲得した23号車MOTUL AUTECH Zの松田次生が最終戦のレース、そしてこのレースで最後となったGT500のミシュラン、さらに次生自身にとっても波瀾万丈となった今シーズンについて振り返った。
「今日のレースは最後、雨で大変でしたけど、逆に雨が降ってくれた方が他と比べてペースが結構良かった。前に追いついていたので、すごく調子がよかった感じがありました」
グッバイGT500。雨で最強伝説を作ったミシュラン、タイトル争った最終戦は雨に泣く。24年間の活動に終止符
スーパーGT最終戦の23号車MOTUL AUTECH Zは予選5番手からスタートし、ロニー・クインタレッリが前半を担当。26周を走行し終えたところで、後半担当の松田次生にステアリングを代えた。ピットアウトした際の23号車のポジションは実質3番手。そこから、次生と23号車はランキングトップで2番手を走行している36号車au TOM'S GR Supraにターゲットを絞った。
「36号車のペースを聞いて、追いついて行けていた。(4番手で追い上げてきている)17号車が速かったけど、とにかく36号車に追いつきたいという気持ちでプッシュしていました」と次生。
その時点でのトップは同じニスモチームの3号車Niterra MOTUL Z(ランキング2位)。次生の23号車が2番手を走行している36号車をオーバーテイクできれば、チャンピオンは逆転で3号車になる状況だった。
「36号車を抜けば、3号車がチャンピオンになれるというのはわかっていました。ですので、なんとか追いつきたかったのですけど、まあ、大変でした(苦笑)」
36号車とのタイム差を縮めつつあった最中、残り10周となった50周目過ぎから雨が降り出して、状況が変わっていった。一時、3番手まで順位を上げた次生だったが、53周目に順位を争っていた17号車Astemo NSX-GTに1~2コーナーでの攻防で順位を奪われてしまう。だが、そこから雨が強くなってきた57周目、次生は抜かれた17号車のオーバーテイクに成功する。
「17号車を抜いたと思って後を見たら、一瞬でいなくなったので、『あれっ!?』と思いました」と、次生。
17号車Astemo NSX-GTはさらなる上位フィニッシュに懸けて、雨が強くなってきたところでピットに入り、ウエットタイヤへ交換して追い上げを狙った。次生も一瞬、ウエットタイヤが頭をよぎったようだが、チームの言葉を信じた。
「チームからは、『5分で雨は止む』と聞いていたので、それを信じて耐えました。タイヤのグリップはズルズルになりながらでしたけど(苦笑)」
雨の中で2番手の36号車を追い、逆転チャンピオンに望みを懸けた次生。しかし、無情にもその雨が強まった59周目にトップの3号車Niterra MOTUL Zがスピン。3号車が上位争いから離脱して、36号車au TOM'S GR Supraが首位となり、実質、この時点でニッサン陣営の逆転タイトルを消えた。
それでも、2番手となった次生は優勝を目指してトップの36号車を追いかけた。
「最後は詰めたのですけど、抜くまでには行けなかったですね。でも、やれることはとりあえずやりました。ランキングも本当はチャンピオンがいいですけど、久々に上位の3位で終わることができた」。最終戦を2位でフィニッシュして、ひとまずホッとした表情を見せる次生。ランキング3位で今季を終えることになったが、今季の次生のシーズンを考えれば、上出来の結果とも言える。
「今季は開幕戦でポールからスタートして優勝して、(自己通算の)24勝目を飾れていいスタートが切れたなと思っていたら、第3戦の鈴鹿で人生で初めての大きな事故をしてしまった。そこから這い上がるのに一生懸命頑張って、2回目の鈴鹿で2位になれたと思ったら、失格になってしまった。その後のSUGOで2位になれて、オートポリスでは(3回ピット)作戦がうまくいかなくて……でも最後のレースでこうやって2位になれてランキングも3位になれたというのは、まあ、良かったのかなと(苦笑)。すごく浮き沈みはあったけど、1か月半の入院生活があって、正直、僕もレース人生がもうダメかと思ったギリギリのところからこうやってカムバックできた。本当にみんなに感謝したいですね」
このレースを最後にGT500を去るミシュランにも、次生は悲喜交々の思いを述べた。
「ミシュランタイヤは本当に自分たちの力になってくれたと思いますし、チャンピオンも獲らせてもらいました。最終戦も、僕の中では勝てばミシュランで13勝目だったのですけど……。このレース前まで(通算24勝のうち)ブリヂストンで12勝、ミシュランでも12勝でタイだったんです。ですので、個人的にも13勝したかったというのはありますし、最後に優勝して恩返しがしたかったという気持ちがありました」と次生。
「去年から投入してくれたウエットタイヤ、あのウエットタイヤは僕のレース人生の中でも、あんなタイヤができるんだというくらい、ミシュランの底力を見せてくれた。今年、そのタイヤがありながらチャンピオンが獲れなかったというのは申し訳なかったという気持ちが正直、あります」と、複雑な心境をレース後に語った次生。自身の怪我についても、ドライビングには支障はないが、日常の運動などにはまだまだ制限がかかっているという。
「怪我は完治しているのですけど、まだ足の付け根の傷口はヒリヒリして痛いですし、右の足首はまだ違和感があって、歩くのは問題ないですが、まだダッシュができない状態です。軽いランニングは短い距離ですが、少しずつできるようになってきていますので、良くはなっています。満身創痍のシーズンでしたが、ここまで戻ってこれたのは医療チームのみなさんのおかげなので、本当に感謝しています」
大怪我とリハビリ、そしてタイトル獲得を共にしたミシュランとの別れ、波乱万丈の1年を乗り切った松田次生の2023年のスーパーGTが幕を閉じた。2024年の体制発表はまだ先になるようだが、来シーズンの次生は、新しいタイヤメーカーとのタッグでどんなパフォーマンスを見せるのだろうか。
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