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自称「世界最強のバス」へ試乗 プラエトリアンとテラストーム イタリアの洪水でも活躍

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自称「世界最強のバス」へ試乗 プラエトリアンとテラストーム イタリアの洪水でも活躍

世界最強と主張されるバス 最大トルク115.9kg-m

殆どの読者は、大型バスでの旅行を楽しまれた経験をお持ちなはず。目的地まで、景色を眺めながら快適に移動できる場合もあるし、隣の席へ座った人の香水や体臭に我慢を強いられる時もある。

【画像】自称「世界最強のバス」へ試乗 プラエトリアンとテラストーム 無敵感が凄いクルマたち 全112枚

アジアの奥地を目指したり、砂漠を貫く観光バスに乗ったことがある、という方もいらっしゃるはず。自分で運転した方が気楽かもしれないが、流石に普通は火山の噴火口へ近づくことは難しい。

しかし、ウクライナのとあるメーカーは、世界最強だと主張するバスを開発した。ロシアとの戦いが続く同国だが、望まないような終末の世界にも対応できるかもしれない、プラエトリアンとテラストームという2台だ。

トーサス社は、ウクライナに住むヴァフタング・ジュカシビリ氏が2014年に創業したメーカー。同社初となる量産モデル、プラエトリアンの開発は2017年にスタートした。

マン社製の6.9L 6気筒ディーゼルターボエンジンに、12速ATが組み合わされ、最高出力は294ps。最大トルクは115.9kg-mを誇る。四輪駆動で、渡河水深は最大680mm。傾斜65%という、一見すると絶壁のような斜面も登ることができる。

サスペンションは前後ともエアスプリング。大きな岩や深い水たまりがあっても、可能な限り滑らかな乗り心地を実現するとのこと。バスだから、定員は35名と多い。

きっかけはウクライナ侵攻 乗り心地は良好

ジュカシビリがこんなバスを開発しようと考えたきっかけは、2014年に始まったロシアによるウクライナ侵攻。クリミア半島が武力で併合されたことは、記憶に新しい。

混乱から逃れるため、市民は避難を余儀なくされた。しかし、見通しの良い道路は戦闘場所に。アスファルトは破壊され、通常のバスでは走行が難しい状態へ追い込まれた。

「オフロードへ対応するバスがあれば、避難するチャンスを与えられるというアイデアが発端です。そこで、援助プログラムに関する情報を集めました。鉱山などの環境や、ウクライナ軍のことも」。ジュカシビリが説明する。

陸軍での利用を想定した、装甲バスではないことを彼は付け加える。だが、要望があれば提供は可能だという。

今回試乗したプラエトリアンは目立つよう、明るいイエローに塗装されていた。幅が広く背が高く、ボディカラーと相まって、相当な存在感がある。ブロックパターンのタイヤは極めて巨大だ。

乗り心地は、主張通り良好。車内は広々としており、次の目的地まで道が整備されていなくても、比較的快適に旅行を続けられそうに思える。

ベースはVWクラフター イタリアには救急車も

運転席へ座らせてもらう。オフローダー・ファンなら喜ぶであろう、無骨なスイッチが並んでいる。発進させてみると、想像以上に簡単で驚いた。

12速ATはパドルで変速できる。シートは、フロア側と独立するようにダンパーで支えられ、鋭い隆起部分を越えても飛び上がるようなことはない。肉厚なタイヤが、細かな不整はないものにする。

過酷な条件でも、順調に先を急げる。適切なギアへ落とせば、急勾配もグングン登る。大きな水たまりなど、取るに足らない。

ただし、プラエトリアンは大型バスだから、対応した運転免許が必要になる。ボディは巨大で、すべての条件へ対応するモデルとはいえなかった。そこで2番目に、テラストームが開発された。

フォルクスワーゲンの商用車、クラフターをベースにした、オフロードバス/トラックだ。2.0L 4気筒ディーゼルターボエンジンの最高出力は176ps、最大トルク41.6kg-mと、力強さではプラエトリアンに及ばないが、走破性では負けていない。

2024年の夏、イタリア北部のボローニャ周辺で洪水が発生。冠水した市街地を果敢に走る救急車があった。それがテラストームだ。定員は20名まで対応。鉱山で働くスタッフを送迎するのにも適している。現地調査へ向かう、移動実験室にもなるだろう。

最も過酷な環境でも人が安全に移動できること

トーサス社の強みといえるのが、柔軟な適応力。テラストームのリア側を、要望に応じて改造することもできる。「わたしたちは若い会社で、規模も小さいですから。そのため、自由度が高く速く動けます」。ジュカシビリが落ち着いた表情で口にする。

「最初の車両開発では、コンセプトスタディを進めながら、市場に出向いて要望を聞いて回りました。マーケティングとエンジニアリングは、直結しているんですよ」

テラストームも運転はしやすい。トルクが太く、急斜面でも苦しそうな素振りはない。アマチュアのドライバーでも、厳しい移動任務を果たせるかもしれない。

世界で最も過酷な環境でも、人間が安全に移動でき、作業を可能にすること。これが、トーサス社の目指すところだという。災害救助へ参加したり、戦闘から逃れるだけではない。特別な休暇のために、前人未到の場所を目指すこともできるだろう。

ちなみにライバルモデルとしては、 シャープ N1200という巨大タイヤのオフローダーがある。-40度から45度まで対応し、水に浮くこともできる。あるいは、メルセデス・ベンツのウニモグは、広く知られた選択肢といえる。

取材からの帰り道。グレートブリテン島の傷んだアスファルトが、普段以上に好条件に思えた。

執筆:アレックス・ゴイ(Alex Goy)
撮影:ルダコフ・ローマン(Rudakov Roman)

プラエトリアンとテラストーム 2台のスペック

トーサス・プラエトリアン(欧州仕様)

欧州価格:22万3510ユーロ(約3688万円)
最高速度:99km/h
車両重量:10.4t
パワートレイン:直列6気筒6871cc ターボチャージャー
使用燃料:軽油
最高出力:294ps
最大トルク:115.9kg-m以上
ギアボックス:12速オートマティック(四輪駆動)

トーサス・テラストーム(欧州仕様)

欧州価格:7万6580ユーロ(約1264万円)
最高速度:161km/h
車両重量:3.5-3.8t
パワートレイン:直列4気筒1968cc ターボチャージャー
使用燃料:軽油
最高出力:176ps
最大トルク:41.6kg-m
ギアボックス:6速オートマティック(四輪駆動)

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