RE雨宮・雨宮勇美という男の生き様
時代が急速に変化していって走り屋が減り続ける中、それでも変わらずに走り続けてる男。誰よりも純粋でチューンドロータリーを愛するその生き様は、まさにチューニング界の「リビングレジェンド」である。そんな男の半生を振り返りつつ「ロータリーの神様」として頂点に君臨する雨宮勇美という人物に迫っていこうと思う。
「雨宮勇美という男の生き様」14歳で単身上京、暴走族のリーダーから走り屋へ
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サラリーマン平均月収の10倍を稼いでいた20代
「俺ね、家がまずしかったからさ。中学を卒業後…アレ? 卒業したっけな? まぁいいや。上京して東京・羽田方面でロッカーや暖房関係の塗装業についたんだよ」。
14歳で通っていた中学校をバックレて、山梨から単身で東京へと上京した雨宮少年は、羽田で仕事をしながら、生活圏を江東区、東京の下町と定めて生活をはじめた。しかし、せっかく就いた職だったがあまりに過酷な労働条件だったため、友達3人を道連れにビル3階の窓から夜逃げを敢行。
その後は運送屋をやったり、プラプラしたり、板金屋に就職したり、悪の道に走ったり…。気がついたら自他共に認める不良になっていたそうだ。「あの頃は若かったからさ。ツッパリに憧れてたんだよ」。
といっても本職はあくまで塗装であり、ツッパリはほどなくやめて、クルマの塗装&鈑金に身を入れる。元々、嫌いじゃないから腕はメキメキと上達していったという。「給料は良かったよ。当時で20万円だったかんね」。半端ではない、何せ当時のサラリーマンの平均月収は2万円ソコソコだったのである。
狂走族時代
その後、若干21歳にして独立、念願だった板金屋を立ち上げる。この辺りから仕事のかたわらストリートを走りはじめ、24歳の時に“影”という狂走チームを結成。都内の至るところを走りまくり、気がつけば雨サンは狂走族の中心的人物に。
1974年。30歳の頃、江戸川区西葛西に『雨宮自動車』を設立し、チューンドロータリー製作を本格的にはじめる。雨宮チューンの幕開けである。
「あの頃は環8走って、そん時の気分次第で第3京浜か東名のどっちかに乗るって感じだった。夜から朝方までとにかく走ってたよ。クルマもよくブッ壊したねー。それからしばらくして東名レースにハマったんだ。金は湯水のごとく使ったけど楽しかった!」。
自分で仕上げたチューンドロータリーを駆り、東名レースで圧倒的な強さを誇っていた雨サンの名声は、この頃から広まりだす。その相乗効果で鈑金屋も賑わうようになる。
この世界で、雨宮ロータリーの名が一挙に高まったのは1978年のこと。雨サンが本腰を入れて組んだ13Bペリ仕様のファミリア508Aが、某自動車雑誌に取り上げられてからだ。このマシン、谷田部での0→400m加速を13秒チョイでコナしてしまったのである。当時としては異例な速さだ。若い走り屋のお客サンがひきも切らず、雨サンも大忙しの毎日となる。
1980年、江東区北砂に移転。その翌年に創刊まもないOPTION誌が取材に訪れ、RE雨宮の名はいよいよ全国区へと登りつめる。そして今に至る。
生涯現役をつらぬく男
話は前後するが、雨サンの車歴ってやつココで軽く紹介しよう。「最初に乗ったクルマは日産のパトロール。迷彩色に塗ってね。あれは多摩川で横転してオシャカになった。んで、キャロル360に660cc積んだヤツに乗ったんだ。3台目はオースチン・ヒーレーの3Lだったな。オシャレでしょ? エスロクやヨタハチも楽しかったねぇ。70万円かけてフルチューンしたチェリー・クーペなんてのもあったっけ」。
雨サンの車歴は凄まじい。他にもトランザムやコルベットなど様々なクルマを乗り継ぎ、サバンナRX3との出会いをキッカケにロータリーチューニングにハマったという。
「若い頃は生活の全てをクルマにかけてたね。理由は簡単、スピード勝負で誰にも負けたくなかったから。みんなそうだったよ」。古いアルバムをめくりながら今年(2020年)で74歳を迎えた雨サンが語る。
続けて「今でも気持ちは変わってないよ。若いヤツに走りで負けたくないから。それにさ、やっぱチューニングって楽しいじゃん。後悔なんてしたことないよ、これが俺の生き方なんだもん」。
生涯現役。誰もが簡単に口にする言葉である。しかし、その言葉が本当の意味で似合う人間は数少ない。雨サンはそんな数少ない中の一人だ。生涯現役の狂走族なのだから。
●取材協力:RE雨宮 千葉県富里市七栄439-10 TEL:0476-90-0007
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