1400メートル近い全長
山梨県甲州市にある「大日影トンネル遊歩道」は、かつて中央本線の鉄道トンネルだったものをそのまま遊歩道にした観光スポットです。
【写真特集】これが「日本最長クラスの廃線トンネル」驚愕の内部&全貌です
この場所は中央本線の勝沼ぶどう郷駅より徒歩で行ける距離にあり、現在使われている線路とトンネルに並行して走っています。トンネルの全長は1367.80メートルもあり、これは廃線トンネルで一般公開されたものの中ではおそらくは最長だと思われます。
内部には鉄道トンネル時代のレールや鉄道標識がそのまま残り、このトンネルに関する展示パネルも用意され、鉄道ファンだけでなく一般の方々も楽しむことができます。また、中の気温と湿度が低く快適なため、夏場には近隣の観光地巡りの合間に避暑地として涼みに来る人も多いそうです。
「大日影トンネル」が開通したのはなんと明治時代の1903年のことで、最初は蒸気機関車が中を走っており、その時の機関車から出た煙の煤(すす)がいまもトンネル内に残っています。
現在の中央本線の線路とトンネル(新大日影トンネル)は1968年の上下線の複線化によって新しく整備されたものです。歴史的に見ると、「大日影トンネル」が中央本線の先祖ともいえる存在です。
複線化後も「大日影トンネル」は下り専用として使われ続けましたが、1997年に新大日影第2トンネルが整備されたことで用途廃止に。その後、10年間放置されていましたが、観光資源として再利用されることが決まり、2007年に国土交通省まちづくり交付金によって遊歩道として整備されます。
遊歩道として整備されたあとの「大日影トンネル」は、2016年にトンネル内部の経年劣化の対応を目的とした改修工事を行うために閉鎖されましたが、2024年3月より再び公開。現在は午前9時~午後4時の間でトンネルが開放(年末年始を除く)されており、その内部を自由に通行することができます。
「大日影トンネル」特徴は?
トンネルはその長さゆえに徒歩で移動するには30分程度はかかります。見学では往復が基本となるため、最短でも60分程度の時間を考えておくべきでしょう。
内部は等間隔で照明設備があり、レールの両端も歩きやすい遊歩道となっており、観光名所としてよく整備されています。しかし、天井から湧き水が染み出て濡れている場所があり、レール部分も運行時からそのままの状態のため、訪れるときは歩きやすい履き物を選び、足元に注意しながら歩く方がいいでしょう。
そして、「大日影トンネル」の一番の特徴はトンネルがレンガ造りであることです。トンネル内部壁や天井はレンガが積み重ねられて作られており、入り口もレトロモダンな凝ったデザインで作られています。
このトンネルでは英国式の工事方法が採用されており、当時の工事でもイギリス人技師が指導の下に進められました。英国式のレンガ建築は1段ごとにレンガを縦と横に交互に積まれているのが特徴で、トンネル内部の壁でもそれを確認することができます。
また、工事には膨大な数のレンガが必要でしたが、交通網が整備されていない当時は遠くからレンガを輸送することができず、レンガ自体も近郊の牛奥村(旧塩山市)に工場を作り、地元の土を使って製造したそうです。トンネルで使われているレンガはいまの物と比べるとやや大きく、当時の製造技術は未熟だったため、表面も焼き具合や大きさに個体差があります。
近くには「ユニークな使われ方」をしている廃線トンネルも
「大日影トンネル」の上り側入り口の先には、隣接する形で「深沢トンネル」という別の鉄道トンネルがあります。こちらも「大日影トンネル」の廃止とともに線路としての役割を終えましたが、現在はワインを保管する「勝沼トンネルワインカーヴ」として再利用されています。
甲州市には日本ワインの発祥の地であり、現在も市内には43のワイナリーが存在しています。トンネル内部は年間を通じて温度6~14℃、湿度45~65%と環境が安定しているため、ワイン保管庫としては理想的な場所となっています。
こちらのトンネル内の左右には、全長約1.1キロメートルにわたってワインラックが置かれ、個人や地元ワイナリーのワインが多数保管されています。内部への立ち入りはワインを保管している個人や会社関係者に限定されますが、入り口付近までは一般人も入って見学が可能です。
トンネルから一番近い勝沼ぶどう郷駅(旧勝沼駅)は、駅舎にワインやブドウの名産品が購入できるワインショップが併設され、近郊にはEF64形電気機関車が展示された公園や、勝沼駅が開設した当時のホームが残る歴史文化公園もあり、こちらも「大日影トンネル遊歩道」見学と共に楽しめるスポットとなっています。
鉄道路線が廃線後も当時の姿をとどめたままで残るというのは珍しいことであり、「大日影トンネル」はそのトンネル自体にも歴史的な建築物としても価値があります。全長約1.4キロメートルもある鉄道トンネルはそこを歩くだけでも楽しいですが、そこで使われている建築技術や、背景にある歴史、周辺にある観光スポットなども非常に興味深いものばかりです。もし現地を訪れる機会があったら、トンネル散策だけでなく、これらもあわせて楽しむといいでしょう。(布留川 司(ルポライター・カメラマン))
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みんなのコメント
甲斐大和側入口から入って数十mから約450mにかけては小仏トンネルみたいにレールの真ん中に水路があるコンクリート路盤になっていて、そのままなのでレールを跨ぐと水路にハマります。
後トンネル内の退避口が大小あるのを良く見てほしい。また地すべり地帯で断層帯を通るので、レンガと石積みとが混じり合ってる部分がある等も見る時は注目してほしい。
現役で使われているだよね。
中央線は。